3①・過去の記憶+夢の現れ
チャイムに負けて先生の到着に勝った!!
無遅刻無欠席記録を目指している僕には遅刻なんてしてはいけないのである。
「でも、過去の記憶を夢として見ているのだから、別にどんなにフレンドがゆっくり歩いても遅刻にはならないはずですよ。最悪場面が一瞬で切り替わります」
……などと心の中でフレンドちゃんが述べてくる。
それを僕は無視する。いや、無視し続けなければいけない。
「てか、キユリーの野郎にあれほど犯罪行為ギリギリのセクハラ染みたスキンシップを取っているくせに。遅刻のルールは守るんですね」
「フレンドはもっと守るべきルールを選ぶべきかと」
無視。無視。無視。
どれ程正論を言われようと、僕はひたすらフレンドちゃんの声を無視する。
フレンドちゃんはこの教室の僕にしか見えていない存在だ。そんな奴と口喧嘩でもしたら変な奴だというレッテルを貼られてしまう。
例え、夢の中で過去の記憶だとしても、悪夢を見るのは嫌なのだ。
だから、絶対に高校内ではフレンドちゃんの存在を無視し続ける。
「あっ、その問題の答えは違いますよ。計算が間違ってます」
「この学校、真面目かよ。ケッ。ツッパリとかいないんですか?」
「ほら、分かる問題でしょ? 手をあげて」
「うわぁ~そんな問題も分からないんですか?
雑魚ッ、頭悪ッ、ゴミじゃないですか。本当に私にふさわしいフレンドなんですかねぇ?」
「私以外にフレンドにフレンドがいる……!?
ボッチじゃない……!?」
「あの先生、今噛みましたよね?」
…………そして時は昼休みへと動き出す。
「うるせぇーーーよ!!」
昼休みの屋上。本来は入ってはいけない場所なのだが、僕はただ1人こそっとやって来た。それはもちろんフレンドちゃんとの会話を行うためである。
「僕は真面目に授業を受けているってのに。フレンドちゃんが僕の邪魔するなんてーー。僕が皆の前で君を叱れない事を理由にーー」
「いや、別に、夢の中での記憶なんで誰も何も言いませんよ。
あの教室でいつもみたいに授業中に全裸になってダンスしても誰も何も言いません」
「まだそんなことしてないよ!!」
「つまり、いつかはするってこと……?」
「言葉狩りをするな。絶交してしまおうか!!」
「はいはい。それでなんでここに来たんですか?」
それはもちろん、フレンドちゃんと会話を行うためであるというのは先程、説明したつもりだったのだけれど。
フレンドちゃんは納得していなかったらしく、強引に話を戻しにきたのだ。
「だから、君との会話を行うためで」
「わかりました。なら、もう喋りませんので……早く続きを」
さすがに冗談が過ぎて怒っているのだろうか。絶交という言葉を使ったのが機嫌を損ねさせてしまった原因なのかもしれない。
……などと考えていた僕だが、そこでふと思い出す。
そういえば、あの日も屋上にいたんだ。
フレンドちゃんがいてもいなくても僕は屋上にいた。
たしか、1人で考え事をしたくて……。でも、結局一人にはなれなくて……。
「そしてたしかあのドアから」
僕はジワジワと蘇ってくる記憶を辿りながら、校舎と屋上を繋ぐドアの方を見る。
本来なら、この場所に入ってくること事態が生活指導行きの悪事になっているのだが。
僕はそこで出会うのである。
「どこだーーー年下ーー!!!」
荒ぶる神のごとき大声で、1人の女子生徒がやって来た。ドアを蹴飛ばし、一目を気にすることなく、僕の目の前にやって来たのだ。
「ゲッ!?」
「はぁ、探した探した。どこに行ってもいないんだから、苦労したじゃん。
昼休み中探し回っていたんだからね」
吹き飛んだドアを踏みつけて、1人の女子生徒が現れた。
少し息をきらしながら、走ってきた様なので、彼女は数秒深呼吸を行っている。
そして、一通り深呼吸を済ませた後、彼女は顔を見上げて僕を睨み付けてきたのである。
「さて、話を聞かせてもらおうかしら!!」
普段入ってはいけない屋上に、荒ぶる神のごとき声をあげ、建物に突入してきたヤンキーの様に荒々しく、ドアという文化を知らない者のように邪魔とばかりにドアを粉砕した。
その犯人は僕の姉だ。あの日の昼休みと同じ展開だ。
あの日も屋上に僕と姉の2人きりになっていたんだ。
既に昼休みは半分終わっている……。




