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5①・おはよう+A級裁判

 “左目が疼く”

白い砂利が散りばめられた庭園。ここはお城の庭園。

見上げれば立派な城がすぐ側に建設されている。たくさんの見物人がいるのは普段は入れないような場所だからだ。柵の向こう側でまるで見世物でも見るかのように人々が僕を見てくる。僕を見ている。

この場にいた僕は正座で砂利の上に敷かれた布に座らされていた。お白洲みたいな場所である。

僕のいる位置の後ろに見物人達がいるとしても、周辺には刀を持った兵士達が5人ほど僕を見張っているのだ。この時間が終わるまでは絶対に逃げ出せそうにない。


「エリゴル・ヴァスター……。君への判決を言い渡すよよ」


公事場の中心に座った権力のありそうな男が口を開く。もしかして、これは裁判中なのだろうか。

あれ? 何で僕は裁判で罪人側になっているんだ。

どうして、こうなったんだっけ?

ダメだ。自分がこうなった経緯も罪状も思い出せない。


「僕も悩んだんだよよ。悩んで悩んで君のために悩んで決めてあげたんだ。これでも頑張ったんだよよ。一国の主として、家臣や家老の意見も尊重しなきゃだし、でも君のために僕は肌を脱いだのさ」


どうやら、彼がこの国の国主という人なのだろうか。この国で1番偉い彼が僕のために悩んで決めてくれたというのなら、きっと減罪を行ってくれたのだろう。

国主である彼は急に真面目なトーンで僕への判決を言い渡してくれた。


「────死罪。判決は死罪だ」


そう言い渡された瞬間に、僕の頭の中は???だらけになった。驚愕だ。自分が死罪?

何かの間違いじゃないのか?

正直、その判決に「異議あり」と申し立てたかった。

だが、そう言われたのならそれほどまでの犯罪を犯したのだろう。見に覚えがないし、記憶も曖昧だけれど、僕はそんな犯罪を犯したのだろう。


「…………???」


「連れていけ!!」


家老らしき年老いた男性が兵士へと命令を下す。

そして、僕の側には2人の兵士が縛られたままの僕の両腕を掴み、無理やり立ち上がらせた。

こんなことになるなんて、僕が何をやったと言うんだ!!

そんな訴えも言うことができないまま、僕は2人の兵士に連れられて、その公事場前を後にした………。



────────────



 「………………………ッガッグエッッ!?!?」


目覚めた瞬間に、僕がこんな潰れた蛙の悲鳴みたいな汚い声を出したのはうなされていたからではない。

確かに、先程の夢は異質というか、リアリティーがあって不安になったけれど……。

それだけで、こんな汚い悲鳴をあげて目覚めるわけがない。

「…………うわっ!?」とかいう悲鳴ならまだ分かる。うなされていたということはだいたい理解できる。でも、さすがに「ッガッグエッ」はないだろ。これは外部的攻撃だな!?

僕はそのことを悲鳴をあげて1秒で気づいた。強制的に夢から覚めて現実の朝へ。これまでの人生で経験したことのない目覚めです。おやすみなさい。

さて、どうやら、腹におもいっきり衝撃が来て、強制的に起こされたようだ。


「おい、起きろ。朝だぞ。アーサーダー!!

阿佐田さーん。朝って何か知ってるか?

生物が起きる時間だぞ!!」


さらに何者かが僕の布団を前後に揺らす。それはもう荒波に呑まれた船のように、その揺れは僕に襲いかかってきた。殴ってきた。

夜行性の動物を知らないのだろうか。

というか阿佐田って誰さ。


「ううううッ…………誰だそいつは。そしてお前は?」


「あたしはあたしだ!!」


なんだこいつ……。

最初に仲良くなって自己紹介は後々でする派か?

それとも阿田資さんなのか?

寝ぼけた状態ではまったく頭がまわらず、どういうことか理解できていない。


「よし、起きたな。起きたようだな。起こせたようだ。さすがあたし」


僕が床の側に置いてあったスリッパを履くと、そいつは納得したように頭を上げ下げして、心の中で自画自賛しているようだ。


身長はキユリーと同じくらいの140cmくらい。キラキラと光る水のような瞳、小さな顔からも幼さを感じ取れる。髪型はワンサイドアップで赤毛。そんなメイド服を来た童女が僕の目の前にいた。


「…………!!!」


オイオイオイ、どうしてこうも僕は童女に出会う頻度が多いんだ。

キユリーもシトリーもこいつも童女だなんて!!

僕が子供たちに神話の読み聞かせをしているから、こう関わりが多いのか?

その答えは闇の中である。




 あれ?

僕はどうしてこんな部屋で寝ているんだろう。

こんな高級ホテルの一室のような部屋で寝ている理由がわからない。

四畳半の部屋にベッドとタンスと椅子しかないが、ゴシック風な部屋だ。

そんな場所で寝ている理由が思い出せない。

これまで知り合った人の家に一晩泊めてもらう生活だったから、昨日もそんな風に泊まらせていただいたのだろうか。


「誰の家だ?」


僕は誰の家に押し掛けてしまったのだろう。

こんなメイドさん?がいるくらいなら、よほどのお金持ちなのかもしれない。

早く着替えて家主にお礼を言いにいかねばならない。

そう思いながら、自分の服を見てみると、普段着ではない。

患者服のように白く一色の上下を着ていることに気づいた。


「なぁ、メイドさん。僕の服はどこなのかな?」


「ああ、それならもう他のメイドちゃんである“妹”が持っていっちゃったぞ。あたしが起こす担当に志願したのだからな!!」


誉めて誉めて……とでも考えているような顔で僕を見つめてくる姉メイドさん。

ほんと、家主にもちゃんとお礼を言わなければならないな。あと僕の衣服を持っていってくれた妹ちゃんにも……。

ほんと、感謝してもしきれないほどのおもてなしだぜ。


「そうか。何から何まですみません。ありがとうございますメイドさん」


「おう、それじゃあ行こうか」


そう言って僕の後ろ側に向かって歩いていく姉メイドさん。

その姉メイドさんは中身がパンパンに詰め込まれたバックを手に持って移動する。

何をするのだろうと思いながら、メイドさんを見ようとすると、「振り返るな」と強く言われてしまったので、そのまま前を見続ける。


「なぁ、僕は家主に会いに行きたいんだけど。案内してもらえないかな?」


僕は壁を見ながら、姉メイドさんにお願いする。

振り返るなと言われているので、壁を見ながらのお願いなのだが、無礼ではないはずだ。

一方、姉メイドさんは僕の背中に隠れてなにかをしているようであった。

何かの作業の邪魔になるかもしれないと言った後に反省したが、姉メイドさんは特に気にすることもなく質問に答えてくれた。


「ああ、今から会わせてあげるんだぞ。あたしが連れてこいと言われたのさ」


なるほど、姉メイドさんが僕を起こしに来てくれたのは、家主に命令されたからなのか。納得。


「…………なぁ、手伝おうか?」


壁を向きつつ、姉メイドさんに話しかけるように言った。

先程から、姉メイドさんが質問にしか答えてくれなくなったのだ。

何かに集中するような、悩むような悩み声が聞こえる。

だから、困っているのならば、手伝いたいと考えたわけだ。


「あっ、いや大丈夫だ。使い方は分かった。それより両腕借りるぞ~」


お手伝いは断られてしまったが言われるがままに、両腕を回し姉メイドさんに差し出す。

両腕を何に使うか知らないけど、別に断る理由もないだろう。




 ガチャッ……ン。

すると、金属音が聞こえた。なにかを強く重ねたような音。

僕の腕に何かあったのだろうか。

しかも、まったく動かせなくなってしまった。


「姉メイドさん……? 何をしたの? 」


「手錠」


姉メイドさんは誤魔化すこともなく素直に教えてくれた。

手錠か~。手錠ってどこかで聞いたことがあるんだけど、なんだったかな?

そんなことを考えていると、今度は壁を見ていた僕の視界が途切れる。

真っ暗だ。なにも見えなくなった。


「姉メイドさん……? 何があったの?」


「目隠し」


姉メイドさんは誤魔化すこともなく素直に教えてくれた。

目隠しか~。なるほど、目隠しは分かる。もしかしたらサプライズでもしかけてくれるのだろうか。その準備として僕に目隠しや手錠をしたというのなら納得がいく。

サプライズ~サプライズ~サプライズ!!

そんなことを考えていると、カンッと床に何かがぶつかる音が聞こえてきた。


「姉メイドさん……? 何を持っているの?」


「バット」


姉メイドさんは誤魔化すこともなく素直に教えてくれた。

バット……?

コウモリのバット。野球のバット。 悪いのバット。

いや、悪いはbadバッドだ。

じゃあ、残りの2つのバットのどちらかなのだろう。

どっちのバットも嫌だが、物の場合やはりあのバットであろう。


ゴンッ!!!!


さて、結果は予想通り、僕の目には見えなかったが、姉メイドさんは僕の頭に向かってフルスイング!!!

僕の首より頭にクリーンヒット!!!!

下手すりゃ殺人沙汰になるが、姉メイドの力ではまだ殺害できるほどの力はなかった。

それでも、ダメージはいくもので……。

もがき苦しみながら、僕は床に崩れ落ちるように倒れてしまったのである。

【今回の成果】


・未来予知を見たよ


・姉メイドちゃんと知り合えたよ

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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