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4④・再会+亥 戦①

 「『Mixer arms』」


その時だった。

僕の喉に傷が入る寸前、森の方から誰かの声が聞こえたのだ。

その方向に目を向ける。

すると、すばやい速度で誰かがこちらへと向かってきているのが僕には見えた。

誰かがこちらへとやって来たのだ。僕を助けにやって来たのだ。

キユリーか、シトリーか、そのどちらかが無事に助けを呼んでくれたのだろう。

夕焼けに染まりながら、こちらへと走ってくる人間。その姿はまだ遠い。

ああ、最後の最後で間に合わなかった。

僕はこのまま喉を噛みきられる。

最後の最後に救いが見えたというのにこんな遠距離ではもう間に合わない。

───そう思っていた。

だが、こちらへと走ってくる人間は片手に銃のような物を持って銃口を定めている。

そして、「バンッ!!」とその銃から発射される銃弾。

その銃弾は化物に向かって発射されて、化物が気づいた時にはすでに銃弾によって負傷していた。

しかし、不思議なのはここからだ。

化物に命中した銃弾はめり込むこともなく、傷を残していっただけだった。

それが銃弾による傷ではなく。

刀に切られたような刀傷だったのだ。


「グオオオギィィィイ!?」


化物の皮膚から血が流れ落ちる。

そして、慌てて僕から離れた化物は到着した人間と向かい合っていた。

僕も仰向けに倒れながら目だけで、人間の姿を追う。

すると、人間は再び銃口を化物に向けて銃弾を放った。

銃弾は2発。

その1発が化物の大きな牙に命中。

その片方の牙はきれいな断面で切り落とされてしまった。


「グググ……!?!?」


驚き唸る化物。自分の大切な牙が撃ち切り落とされたのだ。遠距離なのに刀で切られたみたいに……。

化物の目が血走っている。戦闘体勢を取りながら人間を威嚇している。

だが、傷口が痛むのか。一瞬フラッとバランスを崩していたので、すぐには襲ってこなかった。

それを幸と考えたのか、人間は僕を庇うようにして前に立ち、叫ぶ。


「……オレ達の前から立ち去れ!!」


人間がそう叫ぶ。すると、化物は僕たちをしばらく睨み付けて、そのまま森の奥へと立ち去っていった。




 そんな人間の声を僕はどこかで聞いたことがある。

こうして、なんだかよくわからない方法で助けられたのだ。

お礼も言いたかったし、その声の主も確認しておきたかった。

なので、僕は目だけで人間の容姿を見ながら礼を言う。


「あっ……あの、ありがと…………ございました」


息が途切れ途切れで声を出しにくかったが、頑張って礼を伝えた。

よく見ると、その者は黒き布に赤い線の入った羽織を着て、黒く長い長髪、その目は獲物を狩る狩人のように少し尖っていた。和服美人である。

そんな女性が僕の近くに立っていたのだ。


「気にすんな。お前には色々と聞きたいことがあるしな。おい、立てるか?」


僕を心配して覗きこんでくれるその顔にはやっぱり見覚えがあった。

覚えているさ。今日の朝に会ったばかりだったんだ。こんなオレッ娘1人しかいない。


「あの…………」


起き上がる気力も体力もない。

シトリーが無事に禁忌の森を抜け出せたという保証もない。

だけど、それよりも先に聞いておきたいことがあった。

命の恩人である彼女にきちんと聞いておかなければならないことがあった。


「なんだ?

どうした?」


「僕は君をなんて呼べばいいのかな?

命の恩人さん」


その質問に彼女はフッと吹き出しそうになるのを堪えていた。

例え、緊張感を無理やりほぐしてしまったとしても仕方がないじゃないか。名前を知らなければ僕は謎の命の恩人に助けられたことになる。それじゃあケジメがつけられない。


「フッ………………。そうだなそうだな。命の恩人か。

オレの名前ねぇ。そっか、お前見ず知らずの他人に助けられたみたいなもんだしな。

オレの名前は『マルバス・ゴエティーア』。マルバスとでも呼んでくれ」


マルバス・ゴエティーアか。

そういう名前だったのか。

命の恩人の名前をハッキリと記憶した。


「マルバス……ありがとう。僕を助けに来てくれて」


「別に~。あっ、そうだ。お前は何て言うんだよ。助けた奴の名前くらい聞かせてくれよ」


彼女は森の方をぼんやりと見ながら、僕に尋ねてくる。そういえば自己紹介をしていなかったんだっけ?


「僕は『エリゴル・ヴァスター』。エリゴルとでも呼んでく……ッ!?」


あっ、ヤバイ。もう限界が来たのか。

意識が遠退いていく。気絶するように意識が保てなくなる。


「おい、大丈夫か。おい!!」


彼女が心配して体を揺さぶっているが、もう傷が痛みそうで余計に痛い。

結局、心配しかかけれていないじゃないか。

僕って情けないな。カッコ悪いな。

ボロボロになった僕は彼女の返事に答えることができないまま、その意識を閉ざしたのであった。





─────────────


 本当はこれからも知り合う展開が待っていたというわけだ。


さてさて、そろそろ真面目にするとして、どうせなら、もう一度きちんと言っておこう。決意を固めるように、確定した未来を見たように……。


“これが僕と彼女が波乱の運命に呑まれながら歩んでいく物語の始まりであった。”

【今回の成果】


・女侍によって亥から助けてもらったよ


・マルバスさんと再会したよ

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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