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14 ・初登場+『日雇い侍』

 地下牢獄での家老『マルファス・ラ・ドラグ』と敵『シャックス・ウルペース』との再会。

わけあって2人をこの牢屋から脱出させてあげないといけないかもしれない。

正直、この2人を助けたいという願望は僕にはないけれどこれも仕方がない。


「さてさて、どうやって脱出させますか?」


「私はマルファス様の救出には賛成ですけど。この金行の使者の救出には反対なのですが……」


「それは僕も同意見だけど、逆恨みされて攻め込まれるよりはマシだしさ……」


ちょっと離れた位置でシャックスをチラ見しながら僕と妹メイドさんは陰口でも言うように話し合う。

すると、シャックスは僕らの事を見ながらため息をつき、交換条件ということで手を打とうとして来た。


「…………俺だってお前らの助けになるのは嫌なんだ。俺らは敵同士、お互い様さ。

まぁ、なんだ。お前らが俺を出してくれたら1つ良いことを教えてやる。報酬としてはでかすぎると思うのだがね」


「「良いこと??」」


「ああ、正直、俺がここに居ようが居まいが、別に女帝の逆鱗に触れたわけでもないしな。日にちが経てば俺は出られる。

だが俺は時間が惜しくてね。時は金なりと言うだろ?

それにこの地下牢は居心地も悪いからな」


なにか企んでいるのだろうか。相手は犯罪組織の幹部。

時間が惜しいということは絶対になにかやらかそうとしているに違いない。

そんな奴を救い出してしまってもいいのかどうか、正直考えさせられるものである。


「うーん。どうします?

妹メイドさん」


「敵だからこの場で殺しておきたいが……。仕方がないよね」


僕らの意見は固まった。乗り気ではないけれど、これから行うのは2人の救出。

問題はこの地下牢のオリをどうするかである。




 とりあえず、牢屋の鍵を捜すしかないのかもしれない。

正直、この地下牢獄にあるとは期待していない。

見張りもつけていない地下牢獄だ。鍵を置いておくのは女帝達にとっては危険なこと。


「鍵の保管場所の部屋とかが分かればいいんだけどな~。どこかに隠されていないものかね~」


僕は鍵のない状況を愚痴りながらも怪しい場所がないかを見回ってみる。

一方、妹メイドさんは鍵捜索については見向きもしていないらしく、他の方法で鍵を開けられないかと考え込んでいた。


「どうする?

なにかで壊せないだろうか……」


どうやら妹メイドさん的にはこの地下牢をぶっ壊して救い出すつもりのようだ。

……というか牢屋に捕まってるのは最初から分かっていたので特殊な道具とかを持ってきててほしかったかも。

魔法とか、七つ道具みたいなやつ。

そういう奴があれば、もっと楽だったのだろうな~。

まぁ、それを僕が使うことができていたら一番よかったのだろうけど。

残念なことに僕が使えるのは未来予知くらいだし……。

そもそも最近未来予知が使えなくなっているし……。

ほんとなんでなんだろう?


「あっ、そうだ。妹メイドさん。地図見せて!!」


思考が脱線しかけて忘れていた。地図を見れば鍵保管場所が載ってるかもしれない。


「ああ、地図?

かしこまりました」


妹メイドさんはマルファスの牢屋の前で考えるのを一時中断し、僕の方へと地図を渡すために向かってきてくれている。

その最中、妹メイドさんの移動は一声で遮られてしまった。


「地図なんて無駄無駄。鍵は女帝が持ってるんだしさ~」


牢屋から声がする。

マルファスでもシャックスでもない。他の囚人の声だ。

でも、おかしい。別の囚人の声なのにシャックスの捕らえられている牢屋からその声は聞こえてきたのだ。


「…………シャックスではなさそうですね?

誰ですか?」


妹メイドさんはシャックスの牢屋へと近づく。

先程は意識して見ていなかったが、シャックスの牢屋には計2人の人物が捕らえられていたようだ。

その人物は牢屋の奥で横になって寝ていたから、僕らは気づかなかったのだろう。


「…………チッ、起こす前にここから出ていきたかったんだがな」


シャックスは背後で寝ている人物を不愉快そうに睨み付けている。

今、その人はダルそうに床を這いながら僕らの前に姿を現そうとしている。


「…………うるさくて冬眠もできないじゃないの。そのお陰で起きちゃったわ」


「はぁ…………。いいだろう。場所なら俺が移動してやる」


床を這いながら進むその人はどうやらシャックスが行く手を邪魔していたようなので、シャックスは自ら場所を移動した。

こうして、僕らとその人は対面する。


その人物は紅のように朱色と瑠璃色の流れる川のような絵柄の和服を羽織り、袴は薄い桃色。

髪は白色で長くポニーテール。その瞳は紅色。

とても紅色が似合いそうな女性である。年は成人して数年経ったくらいに見える。僕よりも少しだけ年上だ。


「さて、どういうことか説明して貰いましょうか。あたしはこの地下牢の最古参なのです。

あたしの眠りを妨げた者よ。あたしの冬眠の邪魔をするのなら我が愛刀“竜切丸”と【ゴリン流剣術】の牙が向けられちゃ……」


そこまで言ったところで女性の声が止まる。

どうやら牢屋の前に僕らが2人いることをようやく気づいたようだ。囚人ではない2人。


「あれ? 囚人ではない?」


「「…………うん」」


その途端に、女性は恥ずかしくなってきたのだろうか急に顔が赤面し始め、床を這っていた体を無理やりたたき起こして立ち上がる。


「さて、気を取り直しまして。2名様ですね。

お見苦しい所をお見せしましたが、これでもあたしはサムライなのです。

『日雇い侍』。それがあたし!!

巷に流れる何でも屋のレンタルサムライとはあたしのことなのさ☆

だから、あの……ほんと助けてくださいお願いします!!!!」


そう言って日雇い侍は泣きそうになりながら鉄格子を掴み、僕らの助けを乞いてきたのである。

これが日雇い侍と僕らの最初の出会いであった……。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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