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13 ・再会+地下牢獄

 地下へと続く階段を降りきった先はたくさんの牢獄が列なる地下牢であった。


「空気が悪いなぁ。掃除もされてねぇ」


「正直、メイドとしての権限を利用して掃除したいです……」


その地下牢の天井には小さな明かりの灯っているランプが数個だけ。

薄暗いし、匂いはするし、埃まみれ。

ふと牢屋の一室を見てみると、中にはトイレとベッドと洗面台のみ。中央には砂か灰か分からないのが落ちている。つまり、それほど汚れている。

それ以外にはなんのスペースもない。


「うわぁ。本格的な牢屋じゃないか。早く『マルファス・ラ・ドラグ』の野郎を見つけないと……」


正直、ここに捕らわれている家老『マルファス・ラ・ドラグ』のことが心配になってきた。

何日間の間、閉じ込められていたのだろう。

一刻も早く、脱獄させてあげよう。

そう考えた僕であったが。


「あれ?

僕って家老を助ける義理ってあったか?」


ふと、思い返すと助ける理由がない。

マルバスから命令されない限りは絶対助けなかったくらい家老との仲が良いわけでもない。

そもそも、モルカナでのA級裁判で僕を冤罪にさせようとしたうちの1人だからね。

マルバスを人質にとられているからと言っても、バティンと協力していたからね。

僕はその恨みをまだ忘れていないからね。


「…………帰りたい」


「何を言っているのです。行きますよエリゴル様。私たちの目的を忘れたのですか?」


「妹メイドさん。僕は家老への恨みがあるんです。だから、帰らせていただきますね!!」


そう言って回れ右を行って急いで階段をかけ上がって行こうとする僕。

全速力ダッシュ。部活の時に頑張ってきた階段ダッシュ以上の気合いとスピードをお見せする。


「逃げるなど、させません!!」


しかし、さすが僕とモルカナ城内を必死に鬼ごっこしただけはある。


「ゲッ!?

これは妹メイドさんの鎖!?」


妹メイドさんはすぐに僕の体を彼女の能力である鎖によって縛り上げたのだ。

そのせいで僕の体は妹メイドさんからは逃げられない。


「ほんとやれやれだわ。それでは行きますよ」


そのまま僕を引っ張って妹メイドさんは地下牢の中を進んでいくのだ。




 地下牢の探索から2分。数々の牢屋内を鉄格子から観察し、数々の囚人たちと出会った後。

僕らはようやくモルカナ家家老の『マルファス・ラ・ドラグ』が捕らわれている牢屋へとたどり着いた。


「誰かね……?」


牢屋の奥から家老の声が聞こえる。

その声は久々に聞いた家老の声だ。

あのA級裁判以降はまったく出会うことがなかったので、本当に久しぶりである。

城内にはいたらしいけれど、バッタリとも出会うことがなかった。


「妹メイドでございます。マルファス様。

国主様からの命令で脱獄の協力をさせていただきに参りました」


妹メイドさんの言葉を聞いたマルファスはゆっくりと鉄格子に向かって歩き始める。

その老人。灰色に白き髪を髷のように結い、深いシワと青き瞳を持ち、袴の長い長裃という大名のような白と黒の和服を着ていた。年齢はおそらく60以上はいっているはずなのだが、その老人の背丈は高く背筋も伸びた老人侍のような男であった。

僕とは久々の対面である。


「やぁ、家老殿。久しぶりだな」


「2人?

ああ、貴様はあのA級裁判の……。貴様の話はあれから風の噂には聴いていた。しっかりやっているようだな」


そこまで言うと、マルファスは鉄格子の前に座る。


「…………世話をかけさせた。国主様になんと弁解すれば良いか」


本当に悔しそうな表情で自分の主人に詫びているモルカナ国家老。

その様子を見て、僕はふと疑問に思った。


「そういえば、妹メイドさん。彼ってなんで捕まったの?」


「それは女帝の暗殺容疑ですよ」


女帝の暗殺容疑……僕らの目的と同じだ。

じゃあ、マルファスが失敗したからマルバスがその代わりに今も機会を狙ってくれているということか。


「…………ちなみにだが。女帝の暗殺計画なんてここの囚人は全員経験済みだぞー」


なんと言うことだ。この牢屋にいるすべての囚人が女帝の暗殺失敗者。

こんなにも何度も女帝は命を狙われていてそれでも生きているなんて……。


「マジですか? 妹メイドさん。ここにいる奴ら全員女帝暗殺の失敗者なんですか?」


「えっ?

今の声は私じゃないよ。今のはマルファス様では?」


「いや、ワシでもないな」


急に聞こえてきた声はどうやら2人の声じゃなかったらしい。

囚人たちの中の誰かが教えてくれたのか。

僕は声の主がどこにいるのかをキョロキョロと周囲を見渡しながら、捜してみる。

すると、マルファスの隣の牢屋から先程と同じ声がする。


「こっちだ。若者ども。

捜すのに手間がかかるフリをしたおじさんイジメはやめてもらいたいな」


「…………お前。なんでそこにいるのさ」


マルファスの2つ隣の牢屋で捕まっていたのは、僕としてはかなり嫌いな男である。


「俺がいる理由。それを教えて何になる?

とりあえず、その老人を助けるくらいなら俺のカギも開けてもらおうか若者よ。

アナクフスでの一件の利子を貰っていないぞ俺は」


その男は『シャックス・ウルペース』。

何でも金で解決することができる泥棒で、闇星の金行の使者である1人の男。

つまり、僕らの敵である。

9月1日にも投稿します

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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