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11①・十二死+申

 妹メイドさんと僕が遭遇したのは十二死の申である。

これまでも十二死にはひどい目にあわされてきたので、僕は妹メイドさんを庇うようにして前に立ち、蒼い短刀を握りしめる。

警戒体制である。


「…………十二死!!」


「落ち着け落ち着け。エテコウはもう人間を取って食らう気分ではない。武器を捨てて……?

ふぅん、面白い武器じゃな。なるほど、そういうこと」


十二死の申は本当に敵意を見せてこない。僕らを油断させるつもりなのかは分からないけれど、信用してもいいのか悩ましい。

そうして僕が十二死の申への対応について悩んでいると、僕の後ろにいた妹メイドさんが前におどりでてきた。

おそらく初めて十二死と対面するのだろう。彼女にも聞きたいことはたくさんあるはずだ。


「それよりいいかな?

十二死の申という獣よ。

あなたはここで何をしているんです?

何故女帝の城に怪物が?」


「あぁ、エテコウが何をしているか?

そうだねぇ。エテコウは相談相手にさせられているのさ」


「相談相手……?

それはいったい誰と」


「実はね。エテコウは十二死の中でも好戦的ではないんだ。十二死としての特性はもちろんあるけれど。

ほら、エテコウは申だし、人間を惨殺する気はないんだよ。

エテコウの特性は【求める者への知識を与える】さ。

その知識がどう使われる事になってもエテコウには興味がない。

エテコウはただ知識を教えてあげるだけさ。

まぁ、そこがエテコウに与えられている十二死の特性なのだろうね」


「つまり、あなたは他者に知識を与えて、それが最悪の結果にも繋がるから十二死に選ばれていると?」


「選ばれているというのは違うなぁ。

特性というか? 能力?

それを十二死に願うのは君たち人間さ」


十二死に願うのは人間?

その言葉の意味が僕にはよく分からない。

たぶん、十二死の申は十二死についての大切な事を語る羽目になっているのだろう。

聞いておいて損はないはずである。

なので、ここからは僕も質問タイムに参戦することにした。


「はい。それってどういう事なんだ?」


「十二死は災厄であり災害であり害敵なのだろう?

しかし、十二死としての元は生け贄であり素材であり生きた願望だ。

生きた願望とは人間の願い。

【契約者である人間の心の中にある願望を十二死は獣なりに叶えようとする】のだ。

獣なりに止まることなく叶え続ける。それが十二死の意義なのだよ」


契約者である人間の心の中にある願望を十二死は獣なりに叶えようとする。

十二死の申が言った言葉には僕も納得させられた。

モルカナの時は不明だったけれど、アナクフスもネゴーティウムも十二死を動かしていたのは契約者の願望だった。

僕がこれまでの状況を思い出していると今度は妹メイドさんが十二死の申に語りかける。


「なるほど……じゃあ人間が十二死に願わなければ十二死は国を滅ぼす獣にはならないのですね?」


「まぁ、そうだが。それは無理だ。

人間は誰もが願望を持っている。誰かが思い止まっても誰かが願う。昔から変わらない。

それに…………」


そこで十二死の申は一瞬黙り込んでしまう。

だが、すぐに口を開き始めた。僕らをジッーと見ながら……。


「それに、エテコウらが人間と争わないことが無理だ。人間は旨いからね」


やはり、この申も獣であった。




 申が口にした言葉は冗談とは思えない。

僕らを食い殺す気はないのだろうが、やはり申も人間を食い殺してきた事は何度もあるのだろう。


「「…………」」


「ああ、君らは食わないからね?

ただし、人間と十二死との争いは仕方がないさ。旨いのは旨いからね。

エテコウらはもともとただの12匹の生き物ではあったし、あの頃は人間を食べることを禁じられていたけど。

ご主人様の『プルフラス』が手出しできない世だから好きなだけ食える。

だから、今も十二死は暴れているのさ」


プルフラス?

僕がどこかで見た名前である。いつどこでかは思い出せない。何かの本だったか?


「プルフラスは【魂の魔法使い】さ。魔法使いであり魂の専門家でもある。エテコウらが尊敬する至高の魔法使い。

まぁ、そこはいいか。

その他の十二死についてはまた誰かに聞くといい。

これで質問への解答は終了だね。

それで?

他には何かを聞きたいかい?」


十二死についての情報を一通り教えてくれた申。

これでなんだか色々な疑問も増えたし解決点も増えたが。

そういえばなにかを聞くことを忘れていたような?


「あの!!」


そこで再び質問権を求めたのは妹メイドさんである。

妹メイドさんはさらに一歩前に出て、十二死の顔をジッと見ながら質問を始める。


「十二死の申。私は質問の答えを要求します」


「だから、それは相談相手だって」


「……あんな気分の悪い入り口を作っておいて相談相手?

あの入り口を通って相談相手が来るわけがない。

あなたの相談相手って誰なんですか?

このお城で誰に相談を受けているのですか?」


気分の悪い入り口?

気味の悪い入り口じゃなくて?

これって妹メイドさんが単に間違えたのか?とも思ってしまったけれど。

そういえば、僕と一緒に入ってきた時の妹メイドさんはなんだかキツそうだった。

僕にはなにも感じなかったけど、妹メイドさんは何かを感じ取ったということなのだろう。

妹メイドさんが入り口付近で体調がおかしかったのはそれが原因ということなのだろう。

そういえば十二死の申も十二死の申だ。

「何故女帝の城に怪物が?」という質問には触れていない。

触れずにここまで来た。十二死の話やその特性などを喋りはしたけれど、その話を語ってはくれなかった。


「ふぅーん。雌には資格がなかったか。

いや、雄が資格者ということか。無理やり同伴したということね。

資格がないのによく耐えたと誉めてあげたいな。

でも、困ったなぁ。エテコウは相談相手についてはあまり言いたくないのだけど。しょうがないか……」


十二死の申はどうやら質問の数を忘れていたわけではなかったようだ。相談相手の話を意図的にしなかったと見える。

では、その相手は誰か?


「まぁ、君らなら勘づいているか?

エテコウに何度も相談に来る奴は女帝だよ。

君たちの暗殺対象である。この国の女帝であり闇星の火行の使者『パイモン・アモエヌス』が相談相手さ」


十二死の申は告げた名は、僕らの暗殺対象である女帝の名前であった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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