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4・ ラブラブ+ホテル

 敵国アンビディオにたどり着いた僕たちは敵国の町中を歩く。

敵国だからといってコソコソと隠れながら歩くのではない。

逆に怪しまれないように堂々と歩く。一国のお偉いさんが観光に来たような雰囲気を醸し出させながら歩くのだ。

不自然に思われない観光客としてである。


「観光客だー」

「どこかのお偉いさんかしら」

「あらまぁ。こんな国に観光客なんて久しぶりだねぇ~」

「観光客のお兄さん。ちょっと寄ってかない?」


国民からたくさんの視線を向けられる。

マルバスが前に、僕らが後ろにという陣で僕らは歩くのだ。


「(ねぇ、マルバスさん)」


「(どうしたのだエリゴル)」


「(この国の国民ってなんか違和感を感じませんか?)」


「(確かに……すべての国民が首にかけて身に付けている。あの色の付いた板はなんなのだろうな)」


僕らは国民の姿などに興味もなく、我が道も同様に堂々と観光客として歩いているのだが。

マルバスと僕だけは目がキョロキョロといろいろな物を見ていた。

あの建物はなんだ?

あの集会場みたいな建物はなんだ?

あの食べ物はなんだ?

そういう風にいろいろな物に目だけは興味津々だった。

しかし、そんな時間を中断させたのは妹メイドさんであった。


「エリゴル様。マルバス様。ヴィネ様が予約なされたホテルはこちらです」


妹メイドさんは立ち止まる。

僕は横を向き、マルバスは後ろを振り向く。

すると、その建物はとてもホテルとは言いがたいような建物であった。

ピンクの蛍光灯、ハートマーク、大きな看板。

なんだか普通のホテルではない感じがプンプンしてくる。

まるでラブホテルみたいなのだ。




 入り口付近にあるロビーででホテルの鍵を1つ貰った僕らは階段で上の階へと行こうとする。

しかし、それを妹メイドさんが止めてきた。


「マルバス様、エリゴル様。部屋にたどり着く前に少し注意点を。

①部屋は3人で四人部屋1つです。特に我ら唯一の男性エリゴル様は気をつけてください。

②廊下を通るときは耳を塞ぎ、全力で移動を。

③暴力は自己防衛に入ります。

④他者の部屋を勝手に覗かないよう。

⑤寝る前は鍵をかけてください。

あと、これは仕事期間です。

以上がこのホテルを使用する際に頼まれた伝言ですので……」


「妹メイドさん!?

そのルールにはどういう意味が!?」

「妹メイドよ。

まさかここは噂に聞く……」


僕もマルバスも少し不安になりながら、妹メイドさんに訪ねる。

すると、妹メイドさんは表情も変えないまま冷たい表情でその答えを教えてくれた。


「このホテルは俗に言うラブホテル。男女が夜な夜なの営みを行う場でございます」


その返答に予想通りという気持ちもあったが、驚きというか驚愕というか不安という気持ちも生じてしまっていた。




 階段をかけあがり、耳を塞ぎながらなんとか部屋にたどり着いた僕らは鍵を閉めて肩の荷を下ろした。


「はぁ……」

「はぁ……」


「それではどうしましょうか?」


「「どうしましょうか?じゃないよ!!

よく冷静だな妹メイドは!!」」


冷静に話を進めようとする妹メイドさんへの僕とマルバスからのクレーム。

廊下を通る際に僕とマルバスは徹底的に気を張り続けてしまっていた。

その疲れか、恥ずかしさか、あの状況で冷静でいられた妹メイドさんが恐ろしいのである。

表情も変えずにロボットのような表情で普通に通過していた。

そんな彼女のお陰で廊下を通過できたというのもあるが。

あれを見て、今冷静に話を進められる気分ではないのである。


「なんかこう~なんかこのホテル以外に場所はなかったのか?

なんだ?

オレらは作戦のためにこの場を拠点にすると!?」


「左様です。マルバス様。

普通のホテルでは拠点として怪しまれてしまう。暗殺計画を唱えている我らが普通のホテルでは危険です。故に此度はこのホテルを」


「まぁ、確かに。確かにこの声量なら普通にオレらの作戦話を聞かれずには済むだろう。

けど、激しすぎではないか?

こんな時間から!!

3件くらい!!」


「ドア完全に開いてたぞ。中の人たち見えてた。妹メイドさんはすごいな。

僕にもマルバスにも冷静は無理だよ……」


「それはここの利用客の自由です。ナニをしようとナニをどうしていようと。

私たちは気にしてはいけない。無視です。

これからは無視すると言いなさい」


「「これからは無視します…………あれ?」」


先程までの興奮状態が一気に冷めていく。

冷静を保てるようになっていく。


「なぁエリゴル。オレらってなんであんなにも……」

「確かに。不思議ですねマルバスさん」


もう今ではなんであんなに焦ったりしていたのかすらうまく思い出せない。

あの声や姿を見ても無視して素通りできるようになっているかもしれない。




 さて、今となっては部屋の内装に何も感じない。

緊張も興奮も焦りも不安も感じなくなっていた。

レベルの高いラブホテルでも何も感じない。それがどうした?という風に感じない。


「…………どうするつもりなんです?

これで拠点はバレにくい場所に手に入れたけど。

作戦とかは決めてるんですか?」


「オレはまず女帝の暗殺のために城の偵察かな。どういう造りなのか、どういう場所なのかを知っておかないと忍び込みにくい。

お前らはどうする?

オレはそういう予定だけどさ」


「私はエリゴル様と聞き込み調査でもしますか。女帝の情報を得ておきたいですし……。それでいいですよね? エリゴル様」


強制的に妹メイドさんと一緒に行動することになったが、別に不満はない。


「わかった。それじゃあ明日はそれでいこう。ところでなんだけど……?」


不満があるとすれば別の事である。


「どうしたエリゴル?」

「どうしましたエリゴル様?」


「四人部屋でベッドは2つなんだからさ。僕床で寝させられなくても、詰めたら入るんじゃない?」


この部屋には四人部屋なので大きなベッドが2つあるのだが。

2人がベッド2つを使用してしまっているので僕は床で寝ることになりそうなのである。

確かに、譲ることが正しいことなのかもしれない。

だが、せめてベッドを譲るなら自分から譲りたかったのである。


「ちょうど生物学的に男女で分けられていますので」

「そういうことだ。おやすみ」


そう言って二人は布団を被って寝てしまった。

どんなに声をかけてみてもベッドを譲る気はないらしく、マルバスも妹メイドさんも既に眠ってしなっているようであった。


「ねぇ、ちょっと?

マルバスさん。妹メイドさん。

ダメ?

いやダメならいいんだけどね。うん……おやすみ、うん」


僕は最後にふとため息をついて、仕方がなく固い床に体を横になると、眠りに入るために目を瞑った。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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