2 ・★+全員集合
これは僕が色々とあって妹メイドさんに鎖で連行されて……いや誘拐されて馬車に詰め込まれ、
誘拐されながらも、妹メイドさんがふと口に出していたアンビディオという場所へと向かう少し前のお話。
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アンビディオにある大金持ちのVIPしか通うことのできない特別なホストクラブにて4人のお客がやって来た。
超高級ホストクラブにやって来た4人の男女は、とある女性との待ち合わせのためにこのお店を利用しようというのである。
「ねぇ……なにこのイケメンな密室の空気。ぼくは嫌いなんだけど。これってぼくへの環境的な加害問題じゃないかな?」(水)
「アハハッ、キモーイ……。
お前みたいな生きる価値のないザコなんて早く植物の養分になればいいのにね。あっ、植物がかわいそうだったわー」(木)
「ムムム、大人しくなされ2人とも。ここはお店の中なのですぞ。今回はお遊びで来たわけではないのです」(土)
「ああ、帰りたい……」(金)
個性豊かな4人の男女がクラブへと入ってくると、店員たちは普段とは異なり息を殺すように黙って見ている。
4人の向かう先は中央付近にある円いテーブル。
そこで待っていたのは赤と黒の豪華な服装を身にまとっていた1人の女性。
「オオ、遅かったではないか。妾を待たせるとは偉くなった者じゃな。お前たち。
急に会議をすると言い張ったと思えば、妾に場所を決めさせ、さらに遅刻とは。
貴様ら、妾を見下しておるのではないかの?」
(火)
「「あ?」」(水)(木)
「いやいや。女帝よ。誤解はしないでくれるかな。俺たちだってこの国で女帝を相手取るつもりもない。俺たちは会議をしに来たんだ。お前らの争い事はまた今度……な?」(金)
「フンッ!! 金行が言うならしょうがない」(火)
再会早々。喧嘩の雰囲気ではあったが、1人の説得によりそれは免れた。
そして全員が席に座る。
「さてと……。それでは会議を行いましょうかね。今期第6回闇星会議。
まぁ、今回の議題は麿が前に伝えておいた【進行報告】についてでございまする」(土)
【闇星】はこの大陸で暗躍している組織の名である。
黒と赤の線の五芒星のマークを背中に持っていると言われている組織。
数多くの国や人を殺してきた犯罪組織である。
この組織に所属する者はどんな理由があっても殺害対象とされ、発見次第に殺してもお咎めなしになる。
つまり、この大陸にあるすべての国々の敵ということだ。
闇星の会議が始まった。
普段は欲望のまま自由行動を行う彼らではあったが。
今回の彼らは目的を持って行動している。
それは十二死の提出だ。
「現在、降臨している十二死は12体。あなたたちに頼んでおいた仕事の進行状況をお聞かせ願いたい」(土)
「ああ、それなら問題はないな。俺が持っているのは【戌】だ。
ただし、【亥】は奪われ、【丑】は行方不明となっている」(金)
「なぁに、問題はございませぬ。【亥】はいずれ奪い取ればよい事。それではこの場で【戌】を渡して貰いましょうか」(土)
(金)は言われた通り、机の上に魔道具を置く。それを司会者的な(土)が受け取って、確認を行い始めた。
「ムムムムム!?
これはまさしく【戌】の気配。間違いなく受けとりましたぞ」(土)
ニコニコとご機嫌な様子で(土)はそれを懐に入れる。
そして次に(土)は(木)に視線を向けるのであった。
「えっ? 次言わなきゃいけないの?
えっとね……。【辰】を捜そうとしたけど。気配の気の字も感じないって感じだわ。
朗報があるとすれば【卯】を見つけたわ。今、遊んでるとこ。
まぁ、そのうち弱るだろうし時間次第ね」(木)
「【卯】か……。そいつも可愛そうに。最低なお前に狙われてるんだもんな。
あの【卯】のいた場所。もうお前の趣味のせいで何もかもダメだもんな。終わってるよあの土地」(水)
「あら? 嫌味かしら?
あたしの趣味に口を挟むなよクズ。
それを言うとあんたの【未】も相当イカれてると思うわよ?」(木)
「あれはぼくのせいじゃないぞ。
人間自身が始めからイカれてるんだ。あの人間狂ってやがる。十二死を呑み込む人間なんて……。ぼくは始めて見てたさ。キモチワルイ」(水)
(水)と(木)が仲が悪いのは日常茶飯事。
今発言をしている(木)と(水)の言い合いを眺めながら、(金)は思い出す。
2人の言っていた【卯】と【未】に関する噂で耳にした。
それは上記2つの十二死がいる場所は現在“人の住めるような国ではなくなってしまった酷い場所”と呼ばれているということ。
過去には普通に人が住めるような国ではあった。しかし今は違うらしい。
その場所が国と呼べるかも分からない。それほどに変貌を遂げているらしい。
土地としては限界、国としては終わっているようだ。
さて、喧嘩を見ていては話が進まないということで(土)は新しい話題を(水)に振った。
「なるほど。分かりました。
【未】【卯】については2人の解決を待ちましょう。
それでもう1つの【午】はどうですか?」(土)
「ああ、【午】はまだだよ。
噂通り帝都に奪われてるらしいね。
でも、あの七人がいるんじゃぁ難しいかな。だって、あの最晃騎士がいる場所だよ?
無理無理無理無理行きたくない!!」(水)
「ワガママ言うな……ガキかお前?」(木)
「ああん?
ならば、お前が行けばいい。
もーーいつもそうだ。
お前らはいつもぼくに厄介事を押ししつける。これは加害的な問題だぞこれ!!」(水)
「───おい、話が進まない。次に行こう。
俺は早く帰りたいんだよ……お前らといるとヘドが出そうだからな」(金)
「ええ、そうですねそうですとも。話を進めねば。
これ以上長居をすると女帝どのが不機嫌になりますしね」(土)
(土)からの(火)いじり。
これにはさすがにこれまで一言も口を挟まなかった(火)がついに口を出す。
「妾の名を話に出すな……」(火)
それだけ言うと、彼女は再び黙りこみ始めた。
そのことを不信に思った(金)が(火)に訪ねる。
「…………そういえば。あんたはどうなんだ女帝殿?
最初から不満そうな表情で議題を不快に思っているように見えるのだが」(金)
「ああ、よく分かったな。まず始めに言わせてもらうがの。
妾は【申】を渡そうとは思っておらぬ」(火)
十二死の提出を拒んだ。(火)が闇星の仕事として頼まれていたことを拒んだ。
その事に本人と(金)以外は驚きの表情を見せながら思わず椅子から立ち上がる。
「「「嘘でしょ!?!?!?」」」(土)(木)(水)
「もう【申】は200年間我が国の物じゃ。価値のある遺産を貴様らにやるわけがなかろう。
貴様の計画に必要だと言われてもやるわけがない。
妾は【闇星】の火行の使者という肩書きはあるが、協力はせぬ。
【申】を手に入れたいのなら妾から奪い取るがいいさ」(火)
宣戦布告とも取れる言い分。それを耳にした(土)は思わず興奮し初めて、それを行動で表現する。
「…………あはアハハハハハハハ。面白いですね。ええ、面白い。
【闇星】である者そうでなくては!!
火行の使者……素晴らしいですよ!!
実にEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
ああ……あッ……ああ……あぅふ~」(土)
なんとか感情を落ち着かせる(土)。その被害者は店内の店員3名である。
「あら、変態野郎ね。グシャリが3人。
もうちょっと見たかったんだけどな~」(木)
「正確には3人半だ。流れ弾とか最悪だぞ。
まったく致命傷だなこれは……」(金)
左半身が血まみれになっている金は怒りを抑えながらもテーブルに置かれたお茶をすする。
「すみませぬ。すみませぬ。麿も少々熱くなりまして。(火)よ。
いいですよ。その挑戦面白き。
金、水、やってみてはいかがです?
アハハハハハハハ!!」(土)
そう言って笑いながら、(土)は席を後にする。
4人の視線が(土)に向けられる。
(土)は店内の入り口付近まで移動すると、4人の方へと振り返る。
「今日は気分がいいのでこれにて終い。寄り道でもしてきます。では、各々次の会議にも参加してくださいね?」(土)
その連絡を言い終えた瞬間に(土)の姿はこの国からはすでに消えていた。




