20 ・エリゴルとキユリー+エリキユ契約
馬車の墓場道に向けて出発。
馬車の墓場道が忌み嫌われている原因である化け物を討伐して安心して通れる道にする。
馬車の墓場道に現れる十二死の酉を討伐してループ現象を解除させ、アドニスを楽にしてあげる。
2つの目的が一致し、僕は今ネゴーティウムの兵士長たちと一緒に馬車で目的地へと向かうのである。
一列にルーラーハウスから出ていく馬車の行列。
国の人々はその様子を何事かと窓から眺めていたり、手を振って見送ってくれている。
「…………なんでいるの?」
そんな中、僕は馬車の中でハルファスと相席者1名と共に座っていた。
僕はイレギュラーな相席者に尋ねる。
「やだな~エリゴル殿。私はあなたが帰ってこないことが心配で心配でたまらなかったんですよ。1人で大丈夫かな~って」
「同盟作りを僕1人に任せたのはお前じゃないかキユリー。
それと“エリゴル殿”はハルファスの十八番だ。いつも通り“エリゴルさん”付けで頼むよ」
身内話。僕とキユリーは両隣に座っていて、ハルファスは話に入りずらそうにその光景を黙ってみていた。
「十八番って……。なるほどエリゴルさん。ハルファスの十八番目の彼氏ってことですね。言いふらしちゃおう」
「待った。僕は彼氏じゃない。僕はマルバス一筋だ!!
それにマルバスとも付き合ってないし」
「私はモルカナ一筋だ!!(ハルファス)」
「……あのハルファスさんは黙っててください」
「へぇー、マルバス一筋ですかエリゴルさん?
私にはあんなことまでしておいてよく語れますねーー」
「待てキユリー。あれは恋愛感情のないスキンシップだ。挨拶だ」
「つまり、私はただの遊び相手なんですね。ヨヨヨッ……」
「待て待てキユリー。確かにお前と僕とは遊び相手ではあるけれど。そっちの意味じゃない。
恋愛感情が出るようなことはしてないじゃないか。
ああ、言葉って難しいなぁ」
「ふーん。さっきだって馬車内にも関わらず、私と特殊な性的嗜好的な触れあい(セクハラ)を行おうと」
「それは確かに。確かにそうだな!!」
「勢いつけて認めないでください。自覚アリですか?
それとハルファス様もキラキラとした表情で楽しまないでください」
「安心してくれ。私は見てるだけだ。オアズケだ。絶対あなた達の営みを邪魔もしない。私としては観てるだけで充分ありがたい(ハルファス)」
「エリゴルさん。あの人怖いです」
「安心しろ。同意見だ。
でも、ハルファスはなにもしない。あいつは鑑賞が好きなだけなんだ。モルカナファンの一番狂国好オアズケ軍服女だ」
「なんですか!?
その何度も会って親友レベルじゃないと付けづらいようなあだ名は。
あと、1つ付け加えておきますが。
性別不明とはいえセクハラは犯罪ですからね」
「ああ、分かってる。だから僕は罪人なんだろうが!!!!」
「違いますし逆ギレしないでください。あなたが罪人の理由は他にありますよ。
まったく、これ以上罪を重ねないでほしいものですね~」
「安心しろ。まだお前にしかセクハラはしてきていない」
「私標的ですか。呆れた……」
「分かった。じゃあもうスキンシップはしないよ。悪かったな今まで」
「いや、別にそこまで怒ってはいませんが。私としてはですがね」
「僕は誓うよ。絶対にしない。女神ルイトボルトに誓うよ」
「エリゴルさんのルイトボルト教宣教師設定なんて誰も覚えてないでしょ」
「分かった。じゃあ八百万の神に誓うよ。もうキユリーにはスキンシップを取らないってね」
「…………本当に誓っちゃうんですか?
エリゴルさんからセクハラが消えたら無駄毛しか残りませんよ」
「その発言は傷つくけど、それだけお前を傷つけてきたんだ。悪かったなキユリー」
「…………いや、その。私個人の意見としたら」
長い長い会話が終わってみると、キユリーが急に黙りこんでしまった。
すると、先程まで僕らのやり取りを見ていたハルファスが口を開く。
「なぁ、私としては2人の営みを邪魔するつもりもなかったのだが。
私が介入しなくても邪魔する展開になってるみたいだな。
だけど私としては営みが無くなるのは悲しい」
先程まで(名前)表示であったハルファスがようやく文字なしで語りかけてきた。それも少し残念そうな表情を浮かべている。
観客側からのクレームだ。
僕らからしたら戦なのだが、観客側のハルファスからしたら娯楽扱いなのだ。
ハルファスは娯楽が無くなるのがつらいのだろう。
「そこで、こうするのはどうだろう。
エリゴル殿はキユリー殿とのスキンシップをHな行為にならないギリギリまで許可し、キユリー殿はエリゴル殿を徹底的にギリギリまで虐め返すという契約を結ぶのだ」
「「大問題になりそうな契約だな!!」」
社会的に潰されそうな命の危険を感じる契約である。
僕とキユリーの考えは同じのようで、その契約には反対の意を見せようとした。
見せようとしたのだ。
しかし、お互いの欲望がそれを邪魔する。キユリーも僕もその契約には心牽かれるものがあった。
僕を虐めたいというキユリーの嗜虐心。
キユリーとスキンシップが取りたいという僕の特殊性癖。
「「…………」」
僕たちは無言でお互いを見つめる。
そしてお互いに手を出した。握手である。
契約を行っても構わないという2人の意思を表した握手である。
───こうして、僕らのエリキユ契約が結ばれる事となったのだ。
ハルファスという契約の立役者の存在によって……。
※エリキユ契約はこの世界だから出来たものです。現実世界では問題とかあるかもなので良い子はやめときましょう。
次は27日15時です。




