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19 ②・管理者+オアズケ

 夜の10時。

本当ならば、僕はマルバスたちのもとに帰らなければならないのだろうけど、ハルファスが僕をルーラーハウスから出そうとしてくれないので諦めた。

夕食をごちそうになり、決戦前に一度風呂に入り終わった僕は廊下を歩いている。

ルーラーハウスの庭ではすでに兵士たちが準備を整えた様子で、馬車などに乗り込んでいた。

決戦前ではあるが、馬車の中で兵士たちは余裕のある雰囲気でお話をして時間を潰しているのだ。

実際、馬車の墓場道は距離的には馬車を走らせて40分くらいで到着できるので急ぐ心配はない。


「エリゴル殿。そろそろお時間にございます。なので、支度の準備を……」


ふと声をかけられたので、その声の主の方を見ると、そこには執事さんがいた。


「ああ、執事さん。なんか今日は忙しくしてしまってすみませんね」


「いえいえ、私はいつもハルファス様にあれこれとワガママを聞いておりますので。それよりはまだマシです。心配はございません」


僕が持ち込んだ案件のせいで慌ただしくなっている事を謝罪したのだが、執事さんは恥ずかしいというように笑っている。

ハルファスの日頃のワガママに比べたらマシか……。


「そっか。あの……執事さん。ハルファスってなんで管理者なんですか?」


「管理者の理由でございますか?」


執事さんが不思議そうに僕の質問に疑問を浮かべる。


「少し聞いてみたかったのですよ。

我が国モルカナでは管理者こと国主がヴィネであり、マルバスはその準管理者という立ち位置です。

ですが、貴国はまるで管理者を彼女1人に任せているようで……」


「ええ、我が国ネゴーティウムはハルファス様が完全に管理しております。商業・貿易・外国との交流。

それは彼女は商売の大天才だからです。

この国が今も存在しているのは管理者というハルファス様のお力による物です」


それほど、ハルファスってこの国にとって大事な存在であったなんて。驚きを隠せない。

あんなモルカナファンの一番狂国好オアズケ軍服女が……なんて思いそうになるが、そういえば彼女の最初の印象は大物感を漂わせていた。

僕の彼女への印象が崩れ落ちたのは今日が初めてだし、その様子で疑わしくなるのも当然だと思う。

けれど、その姿を知らない、本性を知らない人から見れば、彼女への印象が崩れ落ちることはない。彼女は絶対に他人に本性をさらけ出すことはしない。彼女の実力が彼女の本性だと思っている。

もちろん、彼女のモルカナファン活動は秘密裏のことであり、たぶん執事さんと僕しか知らない事だ。

けれど、気を張っているというか、他の人の前で素になれていないのはストレスが貯まるんだろうな。

などと考えていると、執事さんが僕に釘を刺すように告げる。


「なので、エリゴル殿。我が国はハルファス様の御身を第一にしております。

戦況の場合によっては逃げ帰る。

ただし、そうなっても我らを恨まないでください。

我らとて、ハルファス様を失うのはつらい。

ハルファス様のご両親はかつて事故で亡くなりました。今ではハルファス様だけがアフトマット家の血を継ぐ最後のご子息なのです」


「執事さん。分かってるよ。

逃げても恨まない。モルカナ国は恨まない。

これは僕が勝手に行おうとしている事だしね。

あなたたちはハルファスの身を一番に考えてあげてくれ」


執事さんからの発言は当たり前の話だ。

僕だってこの国の管理者や兵士長に全滅するまで戦って酉を殺してほしいなんて一ミリも思っていない。

僕はただ力を貸してほしいだけである。

酉を討伐するための戦力として数や武器が欲しかった。

僕だけが知るループ現象を解除するための、アドニスを楽にするための決戦。

本来なら僕1人で解決するべき事なのだから、僕1人になっても別に構わない。


「ありがとう、執事さん」


なんだか誰かにお礼が言いたくなってしまったので僕は執事さんに感謝の意を伝える。

執事さんは急に感謝されたことに疑問を浮かべていた。

僕はそんな執事さんの表情に笑顔で返すと、振り返りながら手を振って執事さんの前から移動するのであった。




 ルーラーハウスの庭。

兵士たちが馬車を駐車して、出発の時刻を待っている。

決戦の地へと向かい始める時間はあと数分。

僕が前に答え合わせのためにアドニスの家から飛び出した時刻が出発時間だ。

僕は走った時よりも速く馬車の墓場道にたどり着くかもしれないけれど。

まぁ、アドニスの母親はいる頃だろう。


「えっと……どの馬車だっけな~」


僕は鞘に納まった青い短剣を持つという戦闘準備を整えて、ハルファスに言われた馬車を探す。


「エリゴル殿こっちだぞ!!」

「エリゴルさん。ヨッ、あんよ上手!!」


僕を呼ぶ声がする。

その声のする方に視線を向けると、先頭付近の馬車から2人の人間が僕に向かって手を振ってくれていた。

1人はハルファス。まぁ分かる。

僕も知り合いと乗車した方が時間を潰しやすい。

けれどもう1人、その馬車には乗車していた。

このルーラーハウス内で知人なのは執事さんとハルファスだけ。

執事さんは先程別れたばかりなので違うとして……。

あれはいったい誰なのだ……?

次は27日14時です

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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