18 ①・拘束+予言書
「賊をここに連れてこい!!」
ルーラーハウスにやって来た僕を出迎えてくれたのは、歓迎のパーティーではなく拘束であった。
「なんでだなんでだなんでだ?」
のんきに鼻唄でも歌いながらルーラーハウスを訪れて、そのまま門番の兵士たちに拘束された。
そして、ループ内では何度もパーティー会場のように食事が並んでいた大広間が今では無数の睨み付ける目で埋まっている。
床に顔を押し付けられた僕の目の前にはこの国の管理者であるハルファスと執事さん。
彼女たちは僕を危険視するような目付きで僕を見てくる。
この状況にまったく見に覚えがない僕は混乱しそうになりながらも彼女たちに問う。
「何をするんですか? ハルファスさん。
やめてくださいよ。こんなことをして酷いじゃないですか」
「私の名前を知っているとはやはり怪しい奴ですね……」
ますます疑われてしまった。ハルファスとの出会いは僕としては数回目になるが、彼女からしたら初対面だという事をすっかり忘れてしまってた。
「いや、その…………。僕はモルカナ国からの使者です。ハルファスさんにお願いがあってやって来たのです」
「モルカナ国の使者?
確かに本日面会の予定はあるが、なぜお前だけなのです。マルバス殿は何処に?」
確かに、国を任せられる者同士の会談だと思うのも当然である。こちらもつい昨日まではそういう事になっていた。
不思議そうに頭を捻るハルファスに僕は今日の出来事を説明する。もちろんフレンドちゃんの事は除いて……。
僕がキユリーとの今朝の会話をハルファスに話すと、ハルファスは少し考えたような顔をして僕に尋ねてくる。
「つまり、君は本当にマルバス殿の使いだということなんですね?」
「そうですそうです。僕はモルカナ国の使者なんですよ……」
「それは大変失礼しました。みんな、そのお方を離してあげてくれ」
ハルファスがそう言うと、兵士たちは僕の拘束を急いで解いてくれた。お陰で無事に解放である。
僕は疑いの晴れた事を素直に喜び、無理やり押さえつけられて痛かった場所を擦っていると……。
ハルファスの隣にいた執事のお爺さんが謝罪を行ってくれた。
「すみません。エリゴル殿。これには訳がございまして……」
「訳……?」
ループ内での初めての展開である。
「今朝の早朝でございます。予言書が届きましてな」
「それがこれさ」
執事の後に続けてハルファスが僕に封筒を差し出してくる。
その封筒にはこんな文章が書かれていた。
『哀れな力なき仔よ。商業の大国に身を固めし者よ。この国の客よ。貴様らは食材だ。時の食材。闇はいずれ墓場を飛び立つ定め。いずれ墓場で会おうぞ』
どこかで聞いたことのある文章に似ているのだが、さっぱり思い出せない。
しかも最後の一文も最近どこかで聞いたような覚えがあるのだが、さっぱり記憶にない。
ただし、そこに書かれていた内容は理解できる。
闇という存在がいずれ墓場を飛び出してこの国民を食材にするみたいな感じ……?
「ふむむ、墓場ねぇ~」
「そうなのだ。確かにうちの国にも墓場というか、馬車の墓場道という場所はあるけれど。
その場所は忌み嫌われた場所なので、そこから何かが来ると考えている。まぁ、元々悪い噂ばかりの場所だからな」
馬車の墓場道から来る物。それってたぶんあれじゃないか。十二死の酉ではないのか。
でも、なんで十二死の酉を知っている?
まさか、今のループ現象の事もその差出人なら理解しているのだろうか。
今のところ、謎の差出人の正体は検討もつかなかったが、僕にはそいつの目的は理解できた。
「ハルファスさん、執事さん。1ついいですか?」
なんだかよく分からない状況に置いていかれそうにはなるが、これはチャンスなのかもしれない。この予言書を利用させてもらおう。
「なんだ?」
「エリゴル殿、どうなされたのでございましょうか?」
「僕は今回、あなた方に魔王国打倒への同盟を組んでもらいに来ました。
ですが、それよりも一番先にお願いがございます」
こんなお願い、マルバスの前なら絶対にできなかった。僕が1人の状態でしか出来なかった。
偶然にしては出来すぎている。
けれど、この最後のループで終わらせるためにはこうするしかない。
「馬車の墓場道。その忌み嫌われた場所を僕と一緒に浄化しませんか?
あの場所に出る化物を討伐し、忌み嫌われる事もない普通の道にしませんか?」
僕と謎の差出人の目的は偶然にも重なっていた。それは確実に十二死の酉を撃退する事なのである。
次は27日11時




