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大事な言葉

「メリー!」

「レベッカ…来ないでよ!」


私がやっと追いついて話し掛けたら、また逃げ出されてしまった。

やっぱり嫌われてるのかな? いや、例えそうだとしても

私はメリーに話をしないと駄目! また、あの時みたいに!


「待って! メリー!」

「追いかけて来ないでよ! 私はあなたの事が嫌いなの!」

「嫌いでも関係ないよ! 私はあなたの事を嫌いにはなれないんだから!」

「な、何でよ! 相手が嫌ってたら、普通は嫌うでしょ?」

「好きな人が自分を好きになってくれるとは限らないでしょ?

 嫌いという感情もそう。嫌いだと思う相手が嫌ってくれるわけじゃない。

 他人ならまだしも、大事な親友が相手だったら特にね」

「わ、私はあなたの事を親友だなんて思って無いんだから!

 あなたの気持ちを私に押し付けないで! この裏切り者!」


裏切り者…そうかも知れない。私は裏切り者だったかもしれない。

あの時、声を掛けてくれたのに私はその誘いを断った。

何度も声を掛けてくれたのに、私は全部断った。


理由はお父さんの母さん…だけど、私が本気で受入れていれば

きっと…説得することも出来ていた筈。でもしなかった…

だから、私は裏切り者だと言われても文句は言えないかも知れない。


「…そう、私は裏切り者…あの時、受入れていれば…私は」

「……た、例え両親が理由だったとしても…私の誘いを断ったんだから」


……でも、本当は…それで良かったのかも知れない。

一緒に来てたら、メリーがどんな事になってたか分からないんだから。

それに…誘いを断られたからって、相手を裏切り者呼ばわりするなんて…

メリーにも理由はあったはずだし、考えもあったはず。

それなのに、断られたからと言う理由だけで裏切り者だと考えた。


大事な友達を…奴隷の様に考えていたのは私の方で

本当は…私が裏切り者だったのかもしれない。

それでも…それを受入れる事は私には出来ない。

認めたくない…私が、メリーを裏切ったなんて。


「……本当は後悔してたんだ、受入れれば良かったって」

「……ふ、ふん、後からならどうとでも言えるわ」

「後悔した…ずっと……だから、私は逃げたのかもしれない。

 私は親友を裏切って、村で幸せに暮らしてる。

 でも、親友は村から出て、苦労して…そんな風に思ってて辛かった。

 だから、私は必死に狩りを覚えようとしたのかもしれない。

 セリスさんとマリナさんに教えて貰ってたのも大きな理由だけど」

「……あなたは目的の為に成長したんでしょ? あの2人を守る為に。

 良いわよね! 大好きな人達の役に立てて! 良いわよね!

 誰にも裏切られなくて! 成長に確かな喜びを感じれて!

 私にはそれは無いの! 強くなろうとする理由だって!

 裏切られたくないから! 成長しても誰も喜んでくれないし

 実感も、達成感も、何も無い! こうするしかないから!

 なりたいと思ってなってるわけじゃ無いから!」


メリーの過去に何があったか、どんな気持ちで過ごしてたのか

それは、私には分からない。勿論、メリーも私の気持ちは分からない。

親友だったとしても、やっぱり他人で…例え家族だったとしても

心の声は聞えないし、経験も口に出せない考えも分からない。

当然だから…でも、共有したい…だったらどうすれば良い? 口に出せば良い!


「辛い思いをしたんだね…でも、私にはその思いは分からない。

 メリーも、私の経験や気持ちも分からない…親友でも、そんな感じなの」

「ふん…あなたの気持ちなんて…分かりたいと思わないわ」

「私は思う…メリーの気持ちを分かりたいって。

 でも、分からない…心の声は聞えないんだから」


心の声が聞えたら、どれだけ楽なんだろう。

相手の気持ちを完全に理解できて、会話をする必要も無く

相手が欲する物を渡すことが出来て、相手が好きなことが出来て。


自由に、好きなだけ仲良くすることが出来るんだから。

でも、私達にそれは出来ないから…口に出すことしか出来ないから。

だから、すれ違いが生まれる…でも、すれ違いを正そうとする努力は出来る。


「だから! 私はこれからもずっとメリーと一緒に過ごして!

 本当の気持ちを知っていきたいと思ってるの!」

「……」

「裏切り者だと思ってても、私はあなたに近付く!

 あなたにどれだけ拒絶されても、またあの時みたいに仲良くしたいから!

 私は…あなたにずっと声を掛け続ける!」

「し、しつこいわ! 私はあなたの事が嫌いだって何度も!」

「例えメリーに嫌われていたとしても、私はメリーを嫌えない!

 メリーが辛い思いをしてるのに、こんな身近にいて何もしないなんていやだ!

 だから…だから! また一緒に頑張ろうよ! 昔みたいに!

 一緒に狩りの練習をして…一緒に強くなっていこうよ!」

「……もう無理よ! 私達はもう! 子供じゃないんだから!

 謝っただけで…また今まで通りに接することが出来るはずがない!」

「今まで通りに接する必要は無いよ…

 今の状態で仲良くして、そして、今まで以上に仲良くなれば良いんだから。

 昔に戻れないとしても…未来を作る事は出来るでしょ?」

「……うる…さい」


メリーは俯いてしまった…でも、その目には涙が流れている。

怒りで涙を流している…と言う訳では無い。

あれは…怒りじゃない。それ位分かる。


「あなたって…昔からそう…私の言う事全然聞いてくれないし

 私が命令しても、全くやってくれない。

 こっちのギルドの連中は、もう私の命令に絶対服従なのに

 仲良くしようって言う奴は、皆私の命令を聞く。

 ……でも、あなたは全く命令を聞いてくれないじゃない」

「うん…命令は聞かないよ、でも」

「えぇ……お願いは良く聞いてくれてたわね…あの時以外は。

 でも、もしかしたらあの時、私はあなたにお願いをしたんじゃ無くて…

 命令をしてたのかもしれない…今は、そう思う…でも、今ならもう一度…

 もう一度…あなたにお願いをする事が出来るかもしれない。

 ……お願い、レベッカ…もう私の事は放っておいて。

 私なんか…あなたが仲良くする価値が無いんだから」

「それを決めるのは私だよ…それにね、私は最初から価値があるかどうかで

 仲良くしようとか思って無い…仲良くしたいから仲良くするの。

 だから、そのお願いは聞けない」

「……」


メリーが歯を食いしばり、吐き出そうとした何かを無理矢理押し殺した。

何を言おうとしたのか、心を読めない私には分からなかった。


「もう…私に……私を! 私なんかを気遣わないでよ!

 あなたを裏切り者だと言った私を! 本当は自分が裏切ったって

 そう思ってるのに、あなたをずっと裏切り者だって言ってた私を!

 大事な親友に! 責任を押し付けるような私を! もう気遣う必要は無いの!

 私みたいなクズと! あなたみたいな優しい子が仲良くする必要は無いの!」

「――この!」

「い!」


ついかっとなってしまって、私はメリーを叩いてしまった。

……無意識だった、でも、この怒りを抑えることが出来なかった。


「じ、自分の事をクズとか言ったら駄目なんだから!

 メリーは優しい! 本当に良い子なの!

 それなのに、自分の事をクズとか言わないで!

 私の親友を! 私の大事な親友を貶さないで!

 あなたは優しいの…クズなんかじゃないんだから。

 心は読めないけど…それだけは自信を持って言える。

 私の…自慢の親友」

「……この…馬鹿ぁ…」

「私は…私はもう、あなたを裏切らない。

 例え自分が命の危機に瀕してたとしても、私はあなたを裏切らない。

 一緒に戦って、駄目だったら一緒に酷い目に遭う。

 私達はあなたの仲間…どんな時でも、一緒に頑張って成長しようよ。

 もうあなたが成長に何も感じない、なんて事は無くなる。

 成長したら、私が喜んであげる。強くなれなくても、私達はあなたを裏切らない。

 あなたは最初から1人じゃなかった…でも、今度からはもっと1人じゃなくなる。

 一緒に頑張ろう? また、あの時みたいに切磋琢磨して、ライバルとして」

「……あ、あなたなんかが私のライバルに…なれるわけ…無いでしょ……」

「そうだね…昔から、私はメリーに勝てた事って無かったもん」

「……で、でも…私の親友には……もう一度…してあげるわ……

 ……いや、違うわね…もう一度…私の親友に…なってくれる?」

「……うん、勿論だよ!」

「……本当…お人好しの…馬鹿なん…だから」


私達は抱き合って、一緒に泣いた。

久し振りの再会、大きな亀裂も出来てた。

何週間か一緒にいても、中々埋まらなかった亀裂…

完全に修復できたとは言えないかも知れないけど…

少なくとも、少し前までよりは……埋まったかな…

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