一か八かの短期決戦
(さぁ、アドバイスです)
臨戦態勢をすると同時にルアのアドバイスが始まった。
当然重要な事なんだろう。
(彼女はエキドル、エキドナをモチーフにしました。
しかし、天使の要素を足して、人間要素を足したのです)
(こ、攻略法とかのアドバイスではないんですね)
(そうですね、ではアドバイスです…あなたは負けます)
(はぁ!?)
それはアドバイスではなく予言とかなのではないのでしょうか!?
しかも女神直々の予言とか! 的中する未来しか見えない!
(な、なら逃げろってのか?)
(逃げれば人類が追い込まれます。戦えば死にます)
(どう足掻いても死ぬんじゃねーかよ!)
(まぁ、正攻法で戦っては勝算が無いと言う事です。
1対1で戦うのは愚策…特にあなたが1対1なのはね)
(どう言うことだよ)
(エキドルは接近戦に対し、圧倒的に強いです。
接近戦を仕掛けると言うことは敗北を意味するほどに。
不意を突かない限り、勝算もない勝負ですよ)
嘘だろ…俺は接近戦しか出来ないのに、そんな奴の相手をしろとか!
(1対1で戦って良い相手では無いのですよ、彼女は)
(危険度で言えば相当上位なのか…)
(危険度で言えばAランクです)
(あれ? 吸血鬼よりも弱い?)
吸血鬼の危険度は確かSだった筈なんだよな。
(えぇ、吸血鬼は素早さと攻撃が圧倒的に高いのです。
なので、パーティーで挑んだ場合、後衛を潰されかねない。
その為、危険度がかなり高いのですよ)
それは最初に戦ったときに分かったことだ。
チーム戦において、あの素早さは驚異的でしかない。
攻撃力も速さも突出していて、再生能力もおぞましいからな。
あんなの、そう簡単に勝てるわけがないだろ。
(因みにケルベロスはBですよ)
(あんなに強かったのにBなのか…)
(知能があまりないので脅威度は下がりますしね)
(なる程…で、あっちは何で脅威度が吸血鬼より下なんだ?)
(彼女は集団で戦えば弱体化するからですよ。
連続攻撃が彼女の弱点ですからね。
後衛からの集中攻撃は彼女には脅威。
移動速度があまり速くないため、後衛壊滅の危険性も下がりますしね)
吸血鬼の脅威度というか、基本モンスターの脅威度は
パーティーで挑んだ場合の物なんだな。
そりゃそうか、普通はモンスターとタイマン張ろうとは思わないし。
(しかし、接近戦においては脅威。あの蛇の攻撃は危険です。
一撃で死ぬわけではありませんが、噛まれた場合、かなり苦しいでしょう。
解毒の方法はありますから、もし噛まれたら私が特別に癒やしてあげます)
(マジすか!?)
(ですが、傷は癒やさないのであしからず)
(そこはケチ臭いのな)
(回復も不要ですか?)
(いえ! ありがとうございます女神様! 文句は一切ございません!)
(分かればよろしい)
流石に毒を食らった状態でって言うのは不味すぎる。
(さ、この情報から攻略法を考えてくださいね)
(攻略法…教えてくれないの?)
(それ位は考えてくださいな、答えを全て言うと面白く無いでしょう?)
こっちは命とか全人類の存続を背負ってるから面白いとかそんな感情はない。
と言うか、生まれる訳がない…この状況でそんな感情が生まれるのは相当だろ。
だが、情報をある程度啓示してくれたのはありがたいな。
「……」
「さぁ、考え事は終わったか?」
こう言う、情報を貰ってる間も待ってくれてるのは嬉しいな。
意外と優しいんじゃね? あのエキドルって。
上手く会話が出来れば平和的解決も…いや、無理か。
もうすでにモンスター達は攻め込んでるんだし
こいつにも立場がある筈。ここで会話をした程度で
大人しく牙を引いてくれるとは思えないからな。
やるしかない…接近戦は不味いなら遠距離での攻撃を仕掛けるしかないのか。
あの複数の蛇が厄介な壁になってるせいで接近戦は難しいと言う事か。
接近すれば、あの蛇による集中攻撃が飛んで来る。
全部を捌ければ対処出来るのかも知れないが…そんな簡単ではないはずだ。
「考え事はもうちょっとしたいんだけど」
「良いのか? 時間が経てば経つほどにお前達は不利になるぞ?」
そうだな…時間が掛れば掛るほど、外の状況が悪化しかねない。
恐らくは突破される問題無いとは思うが…厄介なのが時間だ。
今はまだ明るいけど日が落ち始めてる。夜になっちまった場合…あいつが動く。
あの吸血鬼に動かれると、苦戦を強いられるんじゃないか?
とは言え、ギルドの最高戦力が揃ってるわけだし
そこまで問題は無い様な気はするが。
しかし、Sランク以上の冒険者ってここに滞在してるんだろうか?
それ程の実力があるなら、探索とかして開拓をしてる可能性が高い。
更にだ、襲撃してくるのは恐らく夜間だ。
その間、アンデッド達と戦っていたら疲労も酷くなるだろう。
そうなりゃ…そりゃ、勝算はかなり低くなるはずだ。
「…分かってるよ。仕方ない…早く勝負を決めよう」
「来るが良い」
だが、攻略法は分からない…ルアの話では接近戦は勝算が皆無。
特にタイマンだなんて、愚の骨頂みたいだし
「よし…行くぞ!」
今の俺に出来る事はただ正面から戦う事だけだ。
接近戦しか出来ないんだし、どうしようもないかな。
だが、やるしかないし、必死に抗ってやるよ!
「ふん、愚かな」
蛇たちがこちらに牙を向ける。
俺は一切の迷いも無しに、ただ正面から突っ込むことを選んだ。
接近戦しか出来ないからな、ならば接近戦をするだけだ。
(ルア! 大剣!)
(ほえ? あ、はい、分かりました)
剣を構えたまま走り、飛び上がると同時に剣を大きく振り上げる。
蛇はこちらに牙を向けたままだ。
かなり仰け反っているからか、剣は彼女には見えていないだろう。
その間にルアに頼み、剣と大剣を切り替える。
「くたばれ!」
「な! くぅ!」
剣のサイズが変ったことで不意を突かれたのだろう
彼女は俺の攻撃を迎撃することが出来ず、回避を行なう。
しかし、反応が遅れたんだ。右の蛇たち4匹は叩き落とされる。
「まだまだ! ファイヤー!」
「馬鹿な! うぐぅ!」
大剣を振り下ろし、地面に叩き付けたことにより隙が出来たと思ったのか
彼女はすぐに反撃を仕掛けようとしたが、そこにファイヤーを叩き込む。
これも不意打ち。彼女は自分の蛇を使い、俺のファイヤーを防ぐ。
これにより、彼女の蛇は残り2本になる。
「ルア!」
(了解です)
大剣から手を離し、すぐに彼女に向って飛び込む。
左手にはルアが渡してくれた剣を握り、一気に彼女を斬り付けた。
「っく!」
俺の狙いは蛇。こいつさえ潰せば厄介な連続攻撃を僅かな時間だけ潰せる。
今回は完全な不意打ちによる短期決戦!
「吹っ飛びやがれ!」
「ば! がふぁ!」
剣を片手で振り下ろし、すぐに空いていた右手の拳を叩き込んだ。
この攻撃により、彼女を打ち上げることに成功する。
「くたばれ!」
「いぐ!」
落下してくるエキドルを全力で斬り付けた。
この攻撃はかなり深く入った…剣で突き刺すべきだと思ったが
殺しきれなかった場合が不安だったから、切るという選択を取った。
「か…は…」
「……ふぅ」
念の為、斬り付けたエキドルから距離を取る。
あの蛇が復活したら相当危険だからな。
しかしだ、この一撃は十分過ぎるだろう。
(まさかこの短期間で致命傷を与えるとは驚きです。強いですね、やっぱり)
(馬鹿を言え…完全な不意打ちでの攻撃でしかない。強いわけじゃない)
この小さな身体を利用することにしたのがこの方法だ。
こんな小さな子供がこれほどのスキルを持っているとは想定もしてないだろう。
だからこそ、こんな速攻が叶った。ルアの存在とこの姿が唯一の優位性だったからな。
「こ…こんな馬鹿な事が…」
「格上相手に勝利をするには不意打ちしかないんだ…悪く思うなよ」
「た、短期決戦…か…ふ、かなりの賭けに…出た物だな…だが…見事だ」
「接近戦しか出来ないからな…格上でなおかつ相性最悪とか
騎士道精神を持って勝てるわけがない」
「……け、謙遜…するな…お前は強い……だからこそ…お前はここで潰す…」
「その状態で?」
エキドルがゆっくりと立ち上がる…かなりの出血だというのに。
その目には確かな決心を感じた。
まるで勇者か何かだ…こっちが悪人になった気分だぜ。
だが、悪人になろうと、やらなきゃいけない事があるんだ。
「俺の大事な奴らを、お前らのおもちゃにはさせないぞ」
「良い覚悟だ……だが、手負いの獣程に恐ろしい物は無いぞ!」
彼女から再び翼のような蛇が出てくる。
同時に、その蛇たちは彼女から分離した。
「……そう言う」
「安心しろ……井戸には手は出させない…今の私と…こいつらの狙いは
ただお前の命だけだ…人類を籠絡する為にも、お前と言う脅威は排除させて貰う!」
「ここからが本番と言う事か…」
だが、初戦の状態よりは今の状態の方が勝算はありそうだ。
しかし、わざわざ蛇達を分離させたと言うことは向こうも短期決戦。
長期戦を狙えば…いや、こっちも向こうに合わせよう。
ああは言ってたけど、俺が逃げれば井戸への攻撃をするだろう。
だから、戦うしか無い。




