防衛戦
俺達に召集が掛るのはほぼ間違いないことだった。
そりゃな、一応兵士に俺達の実績は知られている。
出来れば秘密にして欲しいとは言っていたが
相当やばい状況でそんな事が出来るとも思えない。
「さて…やっぱりアンデッドの群れか」
イリアさんの予想通り、この襲撃はネクロマンサーの物だった。
ここまでアンデッドの群れが揃っているのだし当然と言えば当然か。
しかし、前線はアンデッドではないモンスター。
どうやら、本気で潰しに来ているようだ。
「うぅ…凄い数」
「そうですね」
仲直りはまだ完了していないとは言え、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
この戦場の何処かにあの3人も居るのだろう。
それなりに活躍すれば、見直してくれる可能性もあるかな。
「よし…」
小さく呼吸を整え前を再び見た。
目の前には大量のモンスターの群れ。
こんな異常な数を相手に立ち回る事になるとは思わなかった。
何でのんびりしてただけの毎日からこんな事に…まぁ良い。
少なくとも今は戦う理由はある。
「さぁ、やるか! ルア」
(了解です)
手元に大剣を呼び出して貰い、その大剣を構えた。
「うん!」
「援護は任せてください!」
自分の背丈以上にある巨大な大剣を握り締め
モンスターの群れに向って走り出す。
「ブレイブスマッシュ!」
スキルを発動し、眼前のモンスターを一掃する。
ほんの一撃で目の前のモンスター共が崩れ、視界が開いた。
だが、大きな隙が生じ、俺へ飛びかかってくるモンスターも居る。
「させない!」
「私だってお姉ちゃんを守るの!」
だが、俺に飛びかかってきたモンスター達は背後から飛んで来る
頼りになる仲間達が放った矢により撃退される。
「サンキュー! さて…暴れようか!」
まだまだモンスターは居る! 何とかこの王都を防衛でも何でもしてやるよ!
借金返済のためだ、必死に食い付いてやる!
「負ける訳にはいかないからな…全力で戦うぞ!」
「うん!」
飛びかかってくるモンスター達をなぎ払う。
ある程度暴れたせいか、モンスター達の行動は鈍る。
その代わり、アンデッド達の行動が活発になり始めてきた。
正確にはモンスターの行動が鈍った結果、アンデッドの鈍い動きが
普通の動きに見え始めたという感じかも知れない。
しかし、この巨大な大剣を片手で振り回せるというのは爽快だ。
「吹っ飛べ!」
一撃一撃は非常に広範囲で、ブレイブスマッシュほどに隙が大きくない。
片手で振り回しているからか、隙のカバーも割と出来る。
しかし、両手で振るった方が隙が少なくなるとは思うがな。
だが、やっぱり大剣を片手で振り回すのはロマンだろ!
しかも! こんな幼女がよ! 見た目は幼女だし!
(しかし、体重よりも重たそうな大剣を良く振り回せるよな)
(元々ゲームの世界ですからね。現実世界のルールは関係ありません。
と言うか、私がルールを新しく作ったわけですしね。
やっぱり身長よりも巨大な大剣を振り回すのはロマンです)
(でもさ、やっぱり違和感ない? 幼女が大剣ぶん回すの)
(アニメやゲームでもたまに居るでしょう? そう言うのに文句を言っていたら
作品を楽しめませんよ。現実とは違うんですからね)
ま、そうだよな、アニメやゲームで大剣を振り回す幼女がたまに出るが
やっぱり見てて格好いいとか凄いって思うし。
(そう言うのはね、うわ、幼女強いって感じで見てれば良いんですよ)
(まぁ、見ると言うか、今現在は当事者なんだけどな)
巨大な大剣を振り回してるわけだし、当事者だぜ。
(さぁ、来ましたよ。やってください)
(分かったよ!)
手に持っている大剣を再び握り締める。
「うらぁ!」
飛び上がり大剣を縦に振るい地面に突き刺し、そのまま身体を上に浮上させる。
すぐに大剣を引き抜き、落下と同時に大剣をぶん回し周りを蹴散らす。
だが、派手にやり過ぎて隙が大きくなり、アンデッドが飛びかかってくる。
「お姉ちゃん! 無茶しすぎ!」
「派手に暴れすぎですよ!」
「す、すまん…大剣振るうの楽しくて」
大きな隙が出来たところを、2人がカバーしてくれて事なきを得た。
ちょっと派手にやりすぎた気がする。
ひとまず後方に下がった。
(ルア、剣に)
(派手に暴れすぎて失敗しましたね。反省してくださいね?)
(き、肝に銘じておきます)
あまりど派手に立ち回る訳にはいかなくなったため
大剣と剣を取り替える。レットテールは中々に面白かったけど
やっぱり普通の剣が安定性は高いだろう。
「っら!」
飛びかかってくるアンデッドの群れを捌く。
ゾンビの組み付きも、組み付かれる前に急所を斬る。
動きが鈍い。この程度なら苦戦する要素はない。
だが、数があまりにも多すぎるのもまた事実。
アンデッドには魔力による攻撃以外も通るのか
兵士達の攻撃も無事に通ってはいるが、数が多すぎる。
「んな!」
一瞬油断し、異常な速度で突進してくるアンデッドに驚いた。
だが、身体は無意識にそのアンデッドへの攻撃をしていた。
何だかんだで戦う事が多かったからか、身体が独自に反応したか。
恐らくは吸血鬼との戦闘で鍛えられたのだろう。
あの素早さに考えて反応では遅すぎるからな。
天才体質らしいし、十分あり得るだろう。
「あのゾンビは!?」
(グールですね。走るゾンビです)
(実際は何か色々ありそうだけど)
(死体斬りをすると復活しますのでご注意を)
(そのアドバイスはありがたい)
まぁ、この状況でわざわざトドメを刺そうとはしないかも知れないが
もし余裕が出来て念の為にとトドメを刺そうとしたら復活とか恐いし。
「あの走るゾンビはグール! 倒れた奴を攻撃するなよ!
復活するとか聞いたし!」
「分かりました!」
一応は注意喚起もしておこう。
俺とマリスは一応、モンスターの情報を探った経験があるみたいだから
こう言う知識を持っていても違和感は無いだろうしな。
「はぁ…しかし減らねぇ」
「はい…」
それから何時間もぶっ続けで戦闘を続けたが…流石に辛いな。
だが…その時に俺は何だか違和感を覚えた。
何故こんなに時間が掛っているのだろうかと。
「……」
ネクロマンサーの勝利条件はアンデッドを王都内に侵入させること。
そうすれば、ネクロマンサーが操るモンスターは王都内で暴れ
王都内にいるであろう国民達を殺し、内側から被害を広げられる。
死んだ国民をネクロマンサーは操れるのだから
1人でも殺せればバイオハザード状態に出来るはずだ。
感染というか、操作可能な奴を増やし、被害の拡大を狙う。
内が崩れれば外の防衛は意味なく、容易に突破が可能になる。
ある程度を追い込めば、城主も諦める。
そこに取引を持ち込めば、ネクロマンサーは人類を籠絡出来る。
……なのに、何故こんなに時間が掛る攻め方をする?
これだけの数がいるなら、総攻撃を仕掛ければ…
総攻撃を拒む理由があるのか? ちまちまとアンデッドを送るのは愚手だろうに…
俺がネクロマンサーの立場だった場合…この状況で何を嫌がる?
戦力の低減…いやしかし、侵入させることが出来れば戦力はいくらでも増やせる。
ならばこれじゃない…ならばそうだな…1番の理想型を考えよう。
1番の理想型は配下のアンデッドの数をあまり減らさず
人類を瞬時に制圧することだろう。
それをする方法は…アンデッドを送り込む。
内側からアンデッドを作り出す…後者は無理だから前者しか…
いや待て! 何で俺は後者が不可能だと考えてるんだ!?
可能じゃないか! 城内で…誰かが死ねば!
だが、個人では駄目だ…すぐに兵士に制圧される。
なら…不特定多数を同時に殺す必要がある。
その方法は…
「でも、何だか不思議だよね」
「何がですか?」
「確かアンデッドって夜に動くんだよね。
なら、どうしてよるじゃ無くて明るい今攻めてきてるんだろう」
「ん?」
「だって…夜だったら視界も悪いし…こっちは戦うのが不利になるのにね」
確かにそうだな…夜なら吸血鬼も動けるし、戦術的優位性が向こうにある。
だが、何故それがない明るい時間に攻めてきているのだろう。
明るい時間に攻めることに、何の優位性がある?
「後、死人が出たら操れるんだったっけ…恐いよね」
「そうだな」
「この戦いで冒険者が命を落とした場合は…」
「操られるんだろうな…」
「それと、もし今、お城の中で人が死んだら…どうなるんだろう」
「1人2人なら対処は可能でしょうけど…複数人だと不味いですね」
「そうだな、複数人を殺せる方法があればヤバいな…」
内通者がいるとして、その内通者が住民を殺して内側からバイオハザード
と言うのは出来ないのだろうか…流石に警備が居るから無理かな。
不意打ちで1人殺せても異変を察知した兵士に倒されるだろうし
内側にも冒険者は居るから、その内通者も倒される可能性はある。
だから、力尽くでの撃破は相当リスキー…なら他に方法は…
他に、不特定多数を殺せる方法は…
「……あ! 不味い!」
そうだ! あるじゃないか! この時間に攻めるメリットと!
不特定多数を殺す方法! この時間に攻めるメリットは!
住民達の避難が迅速に行なわれること!
そして! 住民達が活発に活動していると言う事!
「お姉ちゃん! どうしたの!?」
「俺の予想が正しけりゃ…敵の狙いは! 不特定多数の毒殺だ!」
「え!?」
これが、最も効果的な方法!




