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選択肢を考えて

け、痙攣するという経験はこの短期間で何度もした…

大体が尻尾が原因だ。大体というか全てだな。


お風呂場でマリスに尻尾をもてあそばれた時や

ピンクキャットのメンバーと風呂に入ったときに

尻尾を洗って貰うときに痙攣するまで至り。

道中ではイリアさんに散々もてあそばれ。

そして目的地に着いた後に2人にもてあそばれて。


クソ! なんて尻尾だ! 非常に危険な部位では無いのか!?


「ふぅ、スッキリしたわ」

「……」

「お、お姉ちゃん…また痙攣してる」

「だ、誰のしぇいだと…」

「尻尾。本当に弱いのねぇ」

「うぅ……」

「モンスター退治には結構不利そうよね、尻尾があると。

 もし拘束されたら、耳と尻尾まで責められてすぐに堕ちちゃいそう」

「恐いことを言わないでください…」

「でも、実際あり得る話よ? 鍛えた方が良いんじゃ無い?」

「き、鍛える?」


尻尾と耳を鍛える? 何そのやさい人みたいな発想。

え? 鍛えられるの? そんな事出来るの? どうやって?


……想像出来ることはいくらかあるけど。

……そ、想像出来る物は大体ろくな目に遭わない未来しか見えない。


「1番無難なのは毎日触られ続ける事ね。

 そうすれば自然と感覚になれていくわ。

 やり過ぎると、逆に弱くなっちゃいそうだけど」


俗に言う開発という物か…うわ、絶対にいやだ。


「ま、まぁ…ま、負けなければ良いだけの話ですし」

「それが最善なのはそうなんだろうけどね…冒険者をする以上は…ね?」


可能性は確かにある訳だが…た、多分大丈夫だろう。

これでも主人公的な立場だし…負けたら大変だろうからな。


(主人公的立場だから問題無いとか思ってるかも知れませんが

 エロゲーにおける女主人公の補正とか大体エロ方面にぶっちぎってますよ?)

(く…)

(都会とかで、変なのに目を付けられたり。お金持ちに攫われたり。

 妹さんを誘拐されて脅されたり)

(……な、無いだろ? そんなの)

(無いとは思いますが言い切れませんよ?)


く! やっぱりこんな世界に転移させられたのは最悪だ!

まぁ、マリスが居るから帳消し出来るけどね。


「それが嫌なら…別の方法を探してみるとかね。

 冒険者以外にお金を稼げる方法。大金を稼げちゃう方法」

「…そんな都合が良い話は」

「案外あるものよ? 身近にね」


少し意味深な笑みを見せた後、イリアさんは俺達の部屋から出ていった。

何を伝えたいのか。それはまぁ、大体すぐに分かる。


冒険者をする必要も無く。身の安全も確保されていて

お金も十分に稼げる…もしくは貰える環境。

それは…彼女の養子になること。


イリアさんは道中でも何度もその話を持ちかけてきていた。

だから…俺が首を縦に振れば…それだけでマリスも俺もレベッカも養子になれるだろう。

これが選択の1つ…この選択は俺がしないと駄目って事か。


「…お姉ちゃん?」

「……いや、何でも無い」


養子になれれば…お金だってかなりあっさり手に入る様になる。

借金の返済だって目指せる筈だ。

何せ、イリアさんの養子だからな…こんな大商人の養子になれれば

それだけで勝ち組確定だし、お金にも困らない。

返済も現実的になってくるはずだ。

イリアさんのコネを使って商売をすれば儲かるだろうしな。

……だけど、どうだろう。


(イリアさんが言いたいことは分かるでしょう?

 では、どのような選択をするのか。それはあなた次第。


 先ほど伝えたように、あなたの選択は重大要素になります。

 選択肢も出て来ない。完全にゼロから選んで行く必要がある。


 ゲームの様に攻略を見て選択肢を選び。幸せなエンドを目指す。

 なんて事、あなたには出来ません)

(分かってるよ…このゲームに攻略法は無い)

(攻略法はあるのかも知れませんが、道筋はありません。

 ゲームは自力でエンドを目指したとしてもあくまで敷かれたレールの上を走るだけ。

 しかし、このゲームはもはや人生に近いルール。敷かれたレールは無く

 あなたの選択次第でいくらでも分岐する世界です)


ゲームの世界は例えマルチエンドだったとしても

全てにその道に行く確かな分岐と選択肢がある。

この世界の場合はエンドが無数にあって、何処の選択でエンドが変るかが分からない。


幸せな道を選んだとしても、些細な行動でルートが外れかねない。

ゲームで言えば、こんなのはどう考えてもクソゲーだな。

常に緊張してやらなきゃいけないゲームなんて面倒なだけだ。


(私が想定したエンドは所詮可能性の極々一部程度。

 あなたの未来は私の想定を遙かに超えるほどに分岐する。


 なので慎重にどうぞ。あなたが思う最高のエンドを目指して

 慎重に考え、慎重に選んで、大胆に行動してください)

(最後だけ大胆なんだな)

(えぇ、必死に考えて必死に選んだんです。

 行動くらいは大胆にしないとチャンスを掴み損ねます。


 悲観的に考えて、最悪の場合の手を可能な限り考えだし。

 楽観的に考えて、自分の行動、対策に自信を持ちすぐに行動する。

 行動は一瞬です。迷えば失敗する。ならば迷わずに行動する。

 必死に考えた防護策があるのだから確信と自信を持ち行動すれば良いのです)


何処かで似たような言葉を聞いた気がするな。

少し違うけど。きっとそこから取ってきたのだろう。


(選択も同じ事。しっかりと考えた末に出て来た答えなら大丈夫ですよ。

 もし失敗してもあなたには妹も大事な仲間も居ます。

 もしもがあれば仲間が助けてくれる。仲間も当然失敗することもあるでしょう。

 その時はあなたが助けてあげれば良いだけ。仲間なんてそんな物ですよ)


それもそうだな。かといってあいつらに迷惑を掛ける前提では動かないが。

迷惑を掛けられるのは構わないが、迷惑を掛けるのは嫌だ。

そう思う奴は確実に多いだろう。かく言う俺もその1人。

ならばどうする? 答えは簡単。慎重に考えればいいだけの話だ。

その上での失敗ならどうしようも無かったと言う事だろう。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「ん? な、何だ?」

「えっとね、いきなりで少し悪いんだけどさ」

「あ?」

「私、王都を歩いてみたい!」

「…面白そうだな」


馬車の間もマリスはかなり喜んでいたからな。

当然、この王都を歩き回りたいと考えるだろう。

だが、王都を出歩くとすれば必要なことが1つ。


「王都を回りたいねぇ」

「はい!」


それは、イリアさんに許可を貰う事だった。

一応は依頼の最中。屋敷に送り届けることは出来たが

その間の待機時間も仕事の内と言うことなんだろう。

もう一度、ダート村に品物を届けるまでは待機して欲しいとか言われてるし。

なら、その間の行動もちゃんと許可を取らないとな。


「構わないわよ♪ 楽しんできてね」

「ありがとうございます!」

「でも、あなた達に道案内を付けましょう」


その一言の後、イリアさんが手を叩く。

すると部屋の掃除をしていたメイドさんがこちらにやってきた。


茶色の長い髪の毛にメイドさん。髪留めはしていないけど

頭の上には確かブリム…だっけ? うん、ブリムだ。

真っ白のブリムを付けている。


瞳の色は黒く顔立ちは何だか日本人に似ている。

と言うか、今更だがこの世界の大体が日本人っぽい。

理由は何となく想像出来る。この世界はルアが作った世界だからだ。

ルアが親しみやすい姿が日本人だったと言う事だろう。

本人も何となく日本人のような顔立ちだったしな。


で、メイド服は黒く、袖やスカートには白いフリフリが付いている。

前掛けは白くて、黒と白のあまり派手では無い服装。

スカートの丈は少し短くて膝下くらいの長さになっている。


流石はメイドだな。しかし、メイドさんは大きいイメージだけど

彼女はあまり大きくは無い。戦うメイドだからとか、そんな理由?

運動する人は結構小さいと聞くからな。


「彼女はシオ。私のメイド兼護衛よ」

「よろしくお願いします」


なる程、やっぱりメイド兼護衛なのか。だからあまり大きくないんだな。

とか思っても口には出さないでおこう。殺されかねない。


「彼女の実力はかなりの物でね。元がSランク冒険者だから強いわよ?」

「Sランク!?」

「はい、昔は冒険者として色々な所を回っていましたわ」

「死針の実力者でね。確か特大だったかしら」

「はい、まだまだ未熟でした」

「基本遠距離攻撃が多い冒険者の中で接近戦を得意とする冒険者。

 そうね、職業とか、そう言うのがあるとすればアサシンとかかしら。

 注意が逸れた相手に瞬時に近付き急所を的確に刺す暗殺者」

「ふふ」


死針と言うのは良く分からないが、彼女が笑顔で袖から細い物を取り出した。

恐らくあれが死針。名前からしてヤバそうな名前だ。


「死針というのは急所を刺す事に特化した武器でね。

 一撃は本当に弱いんだけど、急所を刺せば馬鹿に出来ない程の攻撃力があるの」

「弱点を発見しなくてはならないというのが非常にネックですがね。

 それもありまして、冒険者から身を引いたというのもありますわ。


 モンスターの急所を探すのは苦労しますし。

 今まで弱点を見抜いてくれていた仲間も冒険者を引退しましたわ。

 なので、私も身を引き、イリア様にお使いしている所存です」

「はぁ…何故止め……いえ、何でもありません」


聞くまでも無い理由だろう。冒険者を止めるほどの状況なんて。


「あ、悪い想像をして居るのかも知れませんが

 その仲間が抜けた理由は夫が出来たからですわ」

「凄く普通な理由ですね!」

「貴重な例ですわ。お陰で私も身を引く決心が出来ましたが。

 聞いた話では、その後の仲間達は襲われ、結局冒険者を止めたそうです」


そんな恐ろしい事をさらっと…止めて欲しい。


「ま、そう言う事だから彼女と一緒に回って貰うわ。

 出来れば私も行きたいんだけど仕事があるしね」

「しかしイリアさん…そんな優秀な護衛を俺達に付けて大丈夫なんですか?

 イリアさんほどの大金持ち…何かある可能性だって」

「護衛は他にも居るから大丈夫よ」

「はぁ…しかしそうなると、ますます一人旅をして居た理由が…」

「旅に出てる間くらい1人でのびのびとしたいのよ」

「山賊とかに狙われますよ?」

「大丈夫だと思ってね。現に大丈夫だったし」


完全にただの結果論だ…本当運が良いな、この人。


「でも、これからはちゃんと護衛は付けるわよ」

「それが良いと思います…」

「何なら、あなた達。私専用の護衛部隊とかにならない?

 お給料ははずむわよ?」

「あはは、ありがたいお話しですけど」

「まだ決められないと。ま、じっくり考えて頂戴ね。

 あ、養子でも構わないわ!」

「そ、それも前向きに検討しますね」

「それは駄目な時の返事に近いんだけど…ま、一応期待して待ってるわ。

 じゃあシオ。この子達のことお願いね? 大丈夫だとは思うけど念の為ね

 一応、道案内とかもしてあげてね? 今日は2人があなたのご主人よ」

「承りました」

「そうだ、お小遣いを上げましょう。とりあえず10万ゴールドで良いかしら」

「お、お気遣い無く! 大丈夫です! お金はあります!」

「あらそう? それじゃあ、使ったお金は言ってくれれば出すから

 気楽に言ってね」

「あ、ありがとうございます…」


い、至れり尽くせりだ…何だか申し訳ない程だ。

でも、お陰で王都で迷わずに住みそうだな。

シオさんが居てくれればすぐに案内してくれそうだしな。

ふふ、マリスが待ちわびてるのが横目でも分かった。

少しソワソワしながら尻尾を左右に振り楽しそうに話を聞いている。

じゃ、急いで行こう。マリスを焦らすのは可哀想だからな!

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