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スライム討伐

仕方なく言われたとおりの場所までやってきた。

ここには5体ほどのスライムがいるという話だが

何処にも姿が見えないな…森だし、案外死角にいたりして。


「んー…何処にも居ないね」

「そうだな」


一応、弓矢は支給された、流石にマリスは弓矢が無いと戦えないし。

俺には何も無い、まさか素手で戦うはめになろうとは。

だが、一応塩をいくらか貰ってる、赤スライム対策だな。

しっかし、本当に何処にも居ないな、物音1つしない。

……だが、こう言う静かな場面、こう言う場面が1番恐い。


「……」

「お姉ちゃん、向こうへ行ってみようか」

「そうだな」


こう言う、本来何かが居る場所に何も居ない、しかも場面は森。

この場合でよくある展開だと、スライムが木の上に居るとかそう言うオチ。

確信はしていないが、俺はひとまず頭上を見てみることにした。

そこには大きめの青っぽいスライムが丁度マリスの頭上の木の枝に引っ付いていた。

スライムはすぐにその場から落下をする。


「マリス!」

「へ? あ…」

「うりゃぁ!」


俺は急いでマリスに駆け寄り、落下するスライムがマリスに当るギリギリで跳び

スライムを思いっきりぶん殴った。

スライムには確かな手応えがあり、水が潰れるような音と共に殴った場所がヘコみ

吹き飛んで、別の木に衝突し周囲に四散した。


「あ…あぁ…」


マリスにはかなりの精神的ショックがあったようで

その場に座り込み放心状態になった。

その間にスライムの姿を確認できるようになる。

どうも既に包囲されているようだな、恐らくだが全部木の上に引っ付いてたんだ。

仲間が見付かったことで既にこの手は通用しないと判断して総攻撃か…


(ただの水なのに頭良くないか?)

(スライムは集団で戦う魔物って事にしてました、後、知性があるとも)

(なんで無駄に難易度を上げるんですかねぇ)

(リョナ系エロRPGの敵キャラってそんなパターン多いじゃ無いですか)

(いやまぁ、確かに多いけど!)


うぅ、まさか最初の依頼でいきなりピンチになるとは。


(と言うか、なんでギルドの人は教えてくれてないんだよ…)

(知られてない習性だからですよ、スライムが集団戦をする場合は

 何処かに指揮官が居ます、巨大スライムが居ますよ。

 そのスライムを倒さないと滅茶苦茶湧きます)

(そんな情報も聞かされてない!)

(ボススライムはいきなり湧きますからね、ですがごく稀にです。

 その為、その習性はあまり知られていません)

(よりにもよって、そのごく稀にがこの場面でとは…)


最悪のタイミングだ、あまり戦えない妹を守りながら

そんな群れを相手取れというのか…勘弁して欲しい。


「お、お姉ちゃん…あ、足が動かない…わ、私を置いて…お、お姉ちゃんだけでも…」

「馬鹿言えよ…はぁ…そうしたいのは…その…実を言うと山々なんだけど。

 それでもほら、一応は姉だから…お前の事は…俺が守るよ」

「お、お姉ちゃん…」


凄く恥ずかしい…もう少し長く交流していれば躊躇いなく言えるのかもだけど

俺の感覚的には赤の他人に等しいからな。

でもやっぱり、可愛い女の子を守るヒーローってのも良いだろ。


(もっとはっきり言えば良いのに)

(俺みたいなのがそんな台詞ハッキリ言えるものか!)

(まぁ、交流を始めたばかりですからね、好感度で言えば

 妹の方はあなたへの好感度が8だとしても

 あなたの妹への好感度は3位ですからね)

(ほぼ初めて会ったばかりだしな…それでもやっぱり格好いい方が良いし!

 きっとその方がモテるし!)

(はいはい、寝言は寝ていってください、保身でしょう?

 放置したら自分も捕まるから)

(それはそうだけど、素直に称賛して欲しいです)

(断ります)

(ですよね)


とりあえずやるしかない、大事な大事なカワイ子ちゃんを守るなんて

やっぱり気分的に盛り上がるだろ!


「うら!」


正面の青スライムを殴り飛ばしたが、少し違和感を覚えた。

攻撃力は十分あるようだが、どうも動きが鈍い。

もしかして、格闘(特大)というのは、一撃の攻撃力が高いだけで

格闘技術その物は素人である俺自身の物なのかも知れない。


「うぉ!」


赤スライムが飛びかかってきた、急いで後方に下がりながら

ポケットを探って、塩を赤スライムへ撒き、動きが鈍ったところを殴った。

だけど、やはり動きが…やりたいことが上手く出来ない。

このままだと単純な行動しか出来そうにない…どうしようか。


「お姉ちゃん、後ろ!」

「え? あっぶ!」


ま、マリスの叫び声が聞えなかったら食われてた、何処から湧いた!

この青スライム! と、とにかく急いでその青スライムを蹴り飛ばした。


「あ、ありがとうマリス、ど、何処から出て来たんだ?」

「う、上から降ってきて…」

「そうか…ありがとう、助かったよ」


そうか、上からの襲撃も警戒しないといけないのか。

よし、上部も警戒しながら立ち回らないとな!


「おりゃぁ!」

「ひぅ!」


マリスの声で降ったスライムを倒したから、マリス周辺も分かった。

どうも側面にスライムが寄っていた、俺は急いでそのスライムを殴った。

う、運が良かったとしか言えない、もしもマリスが叫ばなければ

俺はこのスライムがマリスに接近していることに気付けなかっただろう。

うぅ、上部に左右側面、更にはマリスの方にも警戒しないといけないとは。

数がかなり多くなっている…ひ、1人で捌ききれるか?

せめてマリスが動けるようになってくれれば正面突破をするのに。


「うぅ…な、何でこんなに沢山…ご、5体って…」


マリスは涙を溜めて、震えた声で小さく呟いた。

分かるけどね…俺は女神様から事前情報を貰っているから

大体どう言う状況か分かってはいるが、マリスは何も分かっては居ない。

彼女はまだまだ小さいんだ、見た目的にはまだ5,6歳程度だ。

その年齢でこの絶望的な状況、涙ぐんでしまうのも分かる。


「う!」


急いで正面をむき直すと、そこには赤スライムがいた。

反射的に手が動きそうになった時に、赤スライムの特性を思いだした。

だが、この至近距離だ…塩を出して殴る余裕があるのか!?


「お、お姉ちゃん!」

「おぉ!」


後ろから震える声が聞えたと思うと、塩が赤スライムを襲った。

そして、赤スライムは萎縮、急いで蹴り飛ばし赤スライムを吹き飛ばした。


「こ、このままだと…足は動くか?」

「ま、まだ震えて…だ、だから、私の事は…事は…い、いい、か、から…」


そんな震えまくった声で言われても説得力は無い。

恐怖を抱いているのは間違いないのだから。

当然だろう、もし俺が居なくなれば彼女は抵抗できずに食われる。

かといって、このまま姉を自分のせいで縛り付けていても

自分のせいで姉も巻き込んでしまうかも知れないと言う状況。

そんな状況で姉である俺の方を選んでくれるのは嬉しいな。

だがしかし、そんな健気な妹ちゃんを放置するほど薄情では無い。


「さっきも言っただろう、お前は俺が守るって、絶対に守るから信じろ」

「おねえ…ちゃん…」


今度はハッキリと言えた、ハッキリと覚悟できた。

そりゃな、こんな可愛くて健気で幸薄い女の子を守る力があるのに

放置して逃げるなんて、あり得ないっての!


(今度はハッキリと言いましたね)

(覚悟できた、こいつは俺が身体を張るだけの価値がある)

(張ったところで脱出出来なければ無意味ですよ、先ほども伝えましたが

 この状況、スライムはほぼほぼ無限に湧いてくるでしょう。

 このままこの場所で防衛戦をしても、負けるのは目に見えてます。

 かといって、妹さんの足が動くようになるまで防衛も困難でしょう。

 数も多く、攻めてくる方向があまりにも多方向過ぎます。

 このままでは妹さんと仲良くスライムのお腹の中で

 酷い目に遭う未来しかありません)


確かにそうだろう、さっきだってそうだ、何度も危ない場面が多かった。

その全部は運が良かったから辛うじて避けただけで、実力で避けた

と言う訳ではない…このままだと不味いのは間違いないだろう。

だったら…残る方法は後1つしか無い、それはちょっと危ない気がするが

このまま防衛戦を戦い抜くよりは…マシだろう。


「……マリス」

「な、何?」

「お前を抱きかかえてここから逃げる、片手で抱き上げるから

 下手に動かないで周りを警戒して欲しい…お願いできるか?」

「う、うん!」

「じゃあ、少し辛いかも知れないけど…ここで食われるよりはマシだろ?」

「うん、大丈夫、辛くても我慢する!」

「よし!」


俺はすぐにマリスを左腋の下にいれ、お腹を押さえた。

肩に乗せる方法もあるのかも知れないけど、そっちはバランスが恐い。

だから、マリスには辛い体勢かも知れないがこっちを選んだ。

バランス感覚が崩れる危険性もあるのだけど、今はこれしか無い。


「行くぞ! 正面突破だ!」

「うん!」


その体勢のまま、正面に走り出し眼前にいたスライムを殴った。

スライムが木にぶつかり四散する姿を横目に走る。

これは結構危ない賭けではあった、バランスが崩れるかも知れないし

もしかしたら彼女を抱えられないかもと言う可能性があったから。

格闘(特大)が筋力強化なのか攻撃力強化なのかと言う不安もあったが

どうやら筋力を強化しているようで、マリスも軽々と持ち上げられた。


「とにかく森から出て、ギルドにこの事を報告しよう」

「うん!」


この状況は正直俺達2人には荷がおもすぎる。

こう言う場面では大人に任せるというのが無難な選択だろう。


(晴夜さん、確かにその判断は至極真っ当で正しい判断です)

(だろうだろう? こう言う判断は得意なんだ)

(しかしながら、疑問に思わないのですか? 何故今まで報告が無いのかを)

(レアケースだからじゃ無いのか?)

(いえ、実はですね…正面注意です)

(へ?)


女神のその言葉の後位か、目の前に大きなスライムが突如現われた。


「えぇ!?」

「うぉ!」


女神の言葉が無ければ、きっと気付かずにそのスライムの体内に入っていた。

女神がああいったお陰で、俺はギリギリにスライム前で停止が出来た。

だが、スライムの頭頂部と辺りから大きな手が伸びてくる。


「うぅ!」


急いで後ろに下がって、その手を避けたは良いが…これは不味い。


(キングスライムはワープを駆使して獲物を追い込みます。

 更に執念深い性格で、狙った獲物は何処までも追ってきます。

 キングスライムに目を付けられるのは、小さい子供が多く

 それもまた、キングスライムの情報が周知されていない理由でもあります)

(つまり厄介な変態だと言う事かよ!)

(いえ、子供の魔力がキングスライムの大好物だというだけです)

(やっぱり変態じゃ無いか!)

(更に獣人の魔力はキングスライムの大好物と言う設定です)

(ドンピシャじゃ無いか!)


完全に俺達2人を殺す為の魔物だ!


(キングスライムは先ほどの様な手を使っての攻撃が多いです。

 まず狙いは身体に相手を入れるのが目的であるだけです。

 あの手は抵抗すれば脱出が可能なのですよ、手ですし。

 攻撃手段は最初のワープ、相手の足下にワープは出来ない見たいですが

 走ってる相手の前に出て身体の中に自分から入らせる方法。

 ワープし、手で捕まえて体内に入れる方法。

 あの手で相手を殴り、弱ったところを呑み込む方法です)

(そうか、この世界はリョナエロRPGの世界だったな)

(正確にはその世界観をモチーフにした世界です)


同じじゃ無いか…だがしかし、今が危険すぎる状況なのは理解したぞ。

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