連続依頼
はぁ、ギックリ腰が治った…うぅ、酷い目に遭ったぜ。
まさかのギックリ腰だからなぁ、その結果
あんな話を聞けたわけだから、悪くは無いんだけどね。
俺の両親にどんな過去があったか、それが余計に気になったが
自分の判断で今は聞かないと決めたわけだし、深入りはしない方が良いだろう。
「治ってよかったわ」
「ありがとうございます、お世話になりました」
「いや、あれはギルドとして当然というか、こっちの落ち度が大きいから。
はぁ、モンスターが活発になり始めたせいで、イレギュラーが多くて嫌になる」
「そうなんですか?」
「えぇ、まぁ正直、私の所は何の問題も無いしストレスも無いんだけどね。
依頼をしている相手があなた達だけって言うのが大きいのだけど。
都会の方は、冒険者から文句を言われて止めたギルドの子が多いの。
私は幸せ者よ、でも、自責の念がドンドン積もっていくけど…」
「き、気にしないでくださいよ、何とかなってるんですから」
「でも不安が大きいのよ…本当…あぁ、私の愚痴を聞かせちゃってごめんね。
今報酬を渡すわ、えっと、今回の報酬額は2万ゴールド。
それと、ベアードブースの長を撃退したから、追加で3万ゴールド」
「おぉ!」
「で、商人の護衛で5万ゴールド、直接話しに来たからね。
あの人からのお礼だそうよ、命を助けて貰ったわけだしね」
あ、あの依頼だけで10万ゴールド! これは目がお金になりますわ!
「露骨に喜んでるわね、意外と野心家?」
「ほら、購買のスキルがあるんで、お金があればあるほど成長出来るんです!」
「あぁ、そう言えば…便利ね、そうだ、商人からのお礼の言葉もあったわ。
確か、商人の名前はイリア、首都の方で商売をしてる人でね。
此度は命を助けてくれて、本当にありがとうございました。
あなた達のお陰で商品を届けることが出来、ダート村の方々も喜んでくれていました。
もし、何かをご購入される際には是非お声を、あなた達に永遠の感謝を。
だそうよ、どうもあなた達が大分気に入ったようなのよ。
有名所に気に入られるってのは凄い事よ、運が良かったわね」
「有名なんですか?」
「えぇ、その筋では有名なの、あ、別に裏商人って訳じゃ無いわよ?
まぁ、品物があまりにも安すぎて、慈善商人って事で有名なの。
お礼に5万ゴールドを渡した所から考えても、相当お金はあるみたいね。
何で商人をしてるのか、正直よく分からない人よ。
ただ首都ではかなり評価されてるの」
「はぁ、と言うか、さっきっから気になってたんですが…首都って?」
「えっと、王都・モニアドール、長いし言いにくいから大体が首都呼び。
もしくは王都と呼んでるわ、村ばかりのこの地域において
唯一王都と呼べるほどに発展している1大国家。
現状、私が知る限りでは人間達の都市はここしか無いわ」
人類の活動区域は、全世界の10%、結構大きいとは思うが
モンスターの襲撃も多いみたいだし、都市と言えるほどに発展した場所は
その1箇所しか無いと言う事か…なる程な。
「ま、だから首都で名前が通るのよ、1つしか無いからね」
「増えたらモニアドールになりますね」
「どうかしら、と言うか、今この状況から都市が増える
なんて難しそうだけどね、殆ど未開の地だし。
現状、モンスターも活発に動き始めている。
それにね、都市とかそう言う、力ある場所は1つで十分なのよ。
偉い奴が偉そうにただ1つの玉座にふんぞり返ってる。
それが一番大事なの、複数の偉い奴が複数の玉座にふんぞり返るってのは
争いの種しか生まない、それなら、1つだけの方が良いわ。
偉そうな奴がただただ無能だったらどうしようも無く問題だけど
モニアドール様は名君、この状態が続けば少なくとも争いは起こらない。
モニアドール様はまだ若いのだけどね」
「若いのにその人が選ばれた理由は?」
「実績があったからよ、国を発展させた実績が姫の段階であったから。
そもそも、あの方1人しか王族に子供は居なかったんだけどね。
最初からラング姫が玉座に君臨することは間違いなかった。
その状態が早まったの、王は自らよりもラング姫が玉座に君臨する方が
国の為だと判断し、その身を引き、実績も信頼も評判も得たシシリー姫が君臨した。
これがもし、王が不意の死でラング姫が玉座に君臨したとすれば
最悪の事態は起こってたかもしれないけど、彼女の君臨は周囲全てが受入れた。
お陰で争いは起こらず、しばらくはこの状況が続くと思われるわ」
あくまでしばらくと言う事は変らないのだろうがな。
しかしだ、首都となる場所が1箇所だと言う事は、非常に危うい気がする。
モンスター達にも指導者が居る、モンスターを率いているという誰か。
そのモンスター達全体の狙いは恐らく人類、魔力を得る行為だ。
人類を籠絡出来ればモンスター達の生活は安定する。
ネクロマンサーなどの特殊なモンスターがいると言うことは
人類側に潜伏できるようなモンスターが居ても不思議では無い。
その場合、ネクロマンサーなどの武力を持ち、国を襲い。
その力に怯えた王家に取り入り、人類を籠絡という手順も踏めるはず。
所詮は憶測でしか無いのだが、少なくともネクロマンサーは早く潰すべきだろう。
ある程度の兵力が揃えば、ネクロマンサーは人類側を襲うだろう。
それだけの大軍勢を止める戦力がありそうなのは王都ぐらいだ。
その王都ですら止められないほどの軍勢になった場合
俺の嫌な妄想が実現しかねない…モンスターが活発になっているのも
もしかしたら、モンスター側がその人類籠絡作戦を開始してるからかもしれないしな。
妄想だけで何かを言うことは出来ないが…何だか恐いな。
(アドバイスです、ネクロマンサーを速急に排除するべきですよ)
(お? 俺の妄想聞えてた?)
(いえ、純粋なアドバイスです、しかしなる程、そこまで想像していたと?)
(想像というか妄想だけどな、確信が無い想像は妄想だと思ってる)
(はぁ、意外と聡いですね、馬鹿なのに)
(それは酷いと思う…せめて一言くらいは褒めてくれませんかねぇ)
(いやです)
(ですよねー)
さて、女神様直々のアドバイスだ、確信に近いだろう。
恐らく人類籠絡計画が存在している可能性がある。
ならやっぱり方法はネクロマンサーの武力で脅迫し
そのすきに籠絡という所か、戦力が増えすぎるのも問題だし
早急の対処は実際重要になってくるだろう。
(章で言えば、第3章ですね、第3章、モンスターの襲撃、でしょうか)
(そのままだなぁ、しかし第3章なんだ)
(えぇ、第1章はキンスラで初めての討伐。
第2章はピンクキャット襲撃から今まで
第3章はこれからって所でしょう。
まぁ、別に章分けをしている分けではありませんが)
(第3章から最終決戦間近なレベルじゃん)
(第3章で王都が落ちます)
(ネタバレすぎるわ!)
(ここも私の想像でしかありませんが、王都が落ちますよ。
そこから人類側は圧迫され、追い込まれていきます。
そこで主人公達が決起し、抵抗する物の戦力差は歴然。
必死の抵抗をするが、疲弊したところでラスボス降臨。
抵抗しますが敗北、主人公一行はラスボスに気に入られてラスボスに攫われます。
で、調教されてジ・エンド、はい、こうなります)
(おいこら、そこの主人公ってのは誰だ、主人公一行って誰と誰だよ)
(言うまでもありません、あなた達ですとも)
(ふざけるなぁ! そんなの認めねぇ! 俺は調教される側では無く!
どうせなら、調教する側に回る!)
(魔王か何かですか…)
(俺としては相思相愛ラブラブハッピーエンドが好きなんだ!
ハーレム作って全員に持ち上げられたりイチャイチャして
幸せーとか、そんな感じを味わいたいの! バットエンドに興味は無い!
ハッピーエンドだ! ハッピーハーレムエンドが我が至高! 大団円をよこせ!)
(いえ、この世界の主人公はあなたなので、それはあなたがつかみ取ってくださいよ。
私はあなたにエンドは渡しません、エンドはあなたが掴む物です。
私があなたに渡すのは知識とスキルと道具、経験は与えませんし
物語も渡しません、結末も、幸せも、不幸も渡しません。
全てあなたが掴み、あなたが作ってくださいな、それが主人公です。
一応、主人公補正はありますけど、補正があってもバットエンドには行き着くので
選択や行動が大事です、定められた選択のみではハッピーエンドには行き着けません。
ましてやハーレムエンドなど…無理です、行動してください)
(よっし! やってやろうじゃないか! まずはネクロマンサーぶっ殺す!)
(ハッキリ言いますが、1人でやれる規模では無いので気を付けてくださいね)
ネクロマンサーを放置して居るというのは非常に不味いと言う事がよく分かった。
ならどうするか、ネクロマンサーをぶっ潰すしか無いだろう。
だって、何か響きが恐いし、ゾンビとかアンデッドとか嫌すぎる。
死体の群れが歩いてくるとか、何か嫌だ、核兵器が無いから余計に不味い。
そしてだ、確かネクロマンサーは死体を操るそうじゃ無いか。
ならば当然、人が多い王都にネクロマンサーを侵入させるわけには行かない。
俺がネクロマンサーならば、包囲作戦を実行するはず。
何処でも良いから死体人形を王都の中に投入できれば
後は内側から壊せるのだから、相手の防衛を薄くするのが最も効果的だろう。
防衛側の最善の手は住民を可能な限り城に押し込み、兵士で防衛するだが。
城の規模はよく分からんが、全人類を保護できるほどには大きくないだろう。
「おほん、と言う事で長くなったけど良い事を教えてあげるわ」
「え?」
「その王都に向って欲しいのよ、あなた達には」
「え!? そんないきなり!?」
「実は話の合間合間に伏線は入れたつもりだったのだけどね。
商人が王都の有名所だって所とか、モンスターが活発になり始めたとか
あなた達がその商人に気に入られたとかね、と言うか王都の話をした地点で
結構な伏線というか、ヒントだったんだけど」
「えっと…もしかして」
「はい、その商人さんの護衛をお願いしたいのよ、安全だと思っていた街道で
モンスターに襲われて命の危機に瀕したけど、あなた達のお陰で助かった。
これから帰らないといけないわけだけど、距離もあるし護衛無しは不安になった。
今までは襲われなかったからと油断してたけど、今回からは改めるそうよ。
そこで、最初の護衛は命の恩人であるあなた達にお願いしたいそうよ。
で、再びこっちに商品を運ぶまでは王都に居て欲しいとも言ってたわ。
その間の生活費などはこっちで面倒を見るってさ、報酬額は往復分で50万ゴールド」
「はぁぁああ!!??」
ご、50万…だと!? 馬鹿な! そんなの円に換算すると5000万だぞ!?
ば、馬鹿な! とんでもなく恐ろしい額! それをさらっと投下するのか!?
この世界の金銭感覚はどうなってる!?
(ソジャゲに何百万も投下するよりはマシかなと思いますね)
(いやでも!? 護衛だけに5000万って!?)
(この世界、案外お金稼げるんですよ、インフレしては居ませんが)
(いやでも! それでもこれは!)
(貧困層はお金がありませんが、裕福層はかなり持ってるんですよ。
村々にはあまり富豪は居ませんが、首都には沢山居ますよ。
それに、かなりの時間あなた達を拘束するわけですしね)
(で、でも、5000万って…年収1000万の人の5年分のお金じゃ…)
(あなたの借金、100億ですよ? 例え5000万を稼いだところで
100分の1すら返せてませんよ? その程度で驚かないでください)
(で、でも!)
さ、流石に驚く…いきなりこんな高額の依頼が来るなんて…
「私もまだ紹介は早いとは思うんだけど。
やっぱり指名の依頼を受けては断れないのよね。
かなり名の通ってる人の依頼だし、その人を長い間
この田舎に拘束というのも、王都の経営に若干影響ありそうだし」
「そんなにですか?」
「えぇ、有名だからね、あの人。だから出来るだけ早く王都に戻って貰わないと。
だから、仕方なくあなたにこの依頼を紹介することになったのよ。
しばらく村には帰ってこれないでしょうから、覚悟してね」
「は、はい…で、でも、流石にその依頼は全員と相談して…」
「そうね、後日相談しましょう」
「はい」
そして後日、俺は全員をギルドに呼び、今回の依頼を話した。
レベッカは王都に向かえると喜び、歓喜していたが
マリスは報酬額を目の当たりにして卒倒した。
目を覚ました後、お姉ちゃんが行くならと言い受入れてくれた。
うーん、これは初めての長丁場になりそうだ。




