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妹との約束

「はーい」


何度も何度もノックをされる扉をゆっくりと開けた。

そこには俺と同じ服装だが、耳は高らかに立っていて

目付きがキリッとしている可愛いが、攻撃的な雰囲気がある

そんな女の子が立っていた、だがまぁ、容姿はほぼ同じだ。

下は少し長めのミニスカートで赤と白の可愛いチェック柄だ。


「お姉ちゃん! 何してるの!?」

「うぇ?」

「今日は依頼を受けに行くんだから!」

「依頼? 何だっけそれ」

「もぅ! 忘れたの!? これだからお姉ちゃんは!

 えっとね、このまま村の人達に迷惑を掛けるわけには行かないから

 私達、今度から村のギルドで依頼を受けて仕事をしようって言ったじゃん!」

「…言ったっけ?」


そんな話し、女神からは聞いていなかった。

そもそも、妹が居るという話しすら聞いては居ない。

部屋の至る所にもう1人居る様な跡があったが、妹だったのか。

何か味気ない普通の皿もあったり、普通の歯ブラシがあったから

てっきり、俺ともう1人母親か父親が居るのかと思ったけど

なる程、可愛らしい方は彼女の方で、普通の方は俺の物か。


(晴夜さん、一応説明しておきますと、彼女はあなたの妹、マリス・ドライです。

 妹と言っても、双子の妹で、あなたの方が先に生まれただけです。

 容姿から想像出来ますが、二卵性双生児、一卵性双生児とは違うので

 性格は大分違いますし、容姿も普通の姉妹より似てる程度です

 性格は見ての通り攻撃的であなたよりしっかりしていますよ。

 でも甘えん坊さんで、はっきり言いますとシスコンです。

 後はメンタルが弱い部分もありますね。

 しかしエロRPGで双子キャラなんて仲良く酷い目に遭う図しか想像できませんね)

(わざとだろ、てかなんでそう言うのに詳しいし)

(ほら、私は守護女神ですので、あなたのやってるゲームは大体…)

(まさか、俺のエロゲーを!)

(やってる姿も見てました)


酷い公開処刑だ…もうやだ…こんな女神に監視されていたなんて…精神的にキツい。


「もうお姉ちゃん! 早く!」

「良いじゃんそんなの…もう良いよ…」

「もう! それじゃあ、1人で行くよ!」

「あぁ、行ってらっしゃい」

「もう!」


そう言うと、マリスだったかは扉を閉めて、ドコドコと移動していった。

うぅ、この精神的ダメージは中々回復出来そうに無いな。

……と言うか、あれだな、何か視線を感じる気がする。


「……」


ボーッとしながら、視線を感じる方を見てみると、窓の外に耳が見えた。

あぁ、俺と同じ色の耳だ…これってマリスだったか、あの子じゃね?


「う、うぅ…もぅ! お姉ちゃん!」

「おぉ!」


どうやら窓の鍵は開いていたようで、彼女が窓を強く開け身を乗り出した。


「早く出て来てよ! 私1人で戦えるわけ無いじゃんかぁ!

 お姉ちゃんの方が凄く強いんだから出て来てよぉ!」


そう言えば、俺の特大というスキルはかなり凄いとか女神が言ってたな。

同じ姉妹でも、能力が違うのか、やっぱり家系では無く加護なんだろうか。


「お願い! 何でも言うこと聞くからぁ!」


…何か可愛い、凄くからかいたくなるような妹だ。

いやだって、普段は強気なくせに少しぐずったりすると必死に懇願してくるなんて。

これは凄くからかい甲斐があるな! ふっふっふ、しかも獣耳幼女だぜ。

こりゃあ、俺が素晴らしい紳士じゃ無ければ食べられててもおかしくないな!


(あなたは紳士では無いと思います、むしろクズです)

(俺の心の声を読まないでくださいな)

(だが断ります)


そりゃ無いぜ女神様…とか言う言葉も聞えているのかも知れない。

だとすると、俺はわざわざ会話をする必要も無いのでは。


(あぁ、そうそう、私が読める心は良からぬ心、感情が高ぶったときの心

 後は私に対する悪口を思ったときです、それ以外は読めません。

 例えばちょっとした感想とかは読めませんが、感動を覚えた場合は読めます。

 相手に対する好意などは読めませんが、下心丸出しの思いは読めます。

 そして最後は説明は必要無いでしょうが、私への悪口を思ったときは読めます)


何か性格が悪い感じの女神だな。


(当然、そう言う感想も聞えますのでご注意を、別にそれでどうこうはありませんが

 最悪の場合、借金が増えますよ?)

(そんなご無体な!)

(心も読める一心同体だと言う事を忘れずに、まぁ、酷い目に遭うのは

 あなただけなのですがね)

(それの何処が一心同体だ! 面倒事とか嫌な事押し付けてるだけじゃん!)

(そもそもこんなチャンスを与えてあげてるだけ感謝して欲しいですね。

 本来なら、そのまま人生を棒に振るうだけだったあなたを

 異世界に飛ばして、人生をやり直すチャンスを与えたのですから

 あのままでは堕ちる所まで堕ちて死ぬよりも恐ろしい後悔の中で死ぬところでした。

 きっとですね、やってるソジャゲーがサービス終了って出たときに

 今までの行動が全て走馬燈の如く蘇り、後悔と共に絶望をしてたでしょう。

 そして、やり直すことも出来ない莫大な借金を前にして

 人生を諦めるという選択肢しか残されていないことに気付き。

 それでも何か無いかと必死に探せば探すほど、自らの無力と

 愚かさを痛感し、今まで自分は何をしてきたんだと後悔した後に

 自分で自分を後悔と共に殺した後、地獄で更に後悔する羽目になってたであろう所を

 私がこうやって、別視点で別解釈で自分の行動や可能性に気付けるチャンスを与え

 更には借金までチャラにしてあげようと言うのですから、感謝してください)

(長いよ! 長ったらしく俺を貶さないでくれ! そもそも、俺は後悔などしない。

 ソジャゲーというのはな、自分の夢に投資しているのだ!)

(ッハ! ただのデータに何を言ってるのやら、夢に投資? 

 そんな物、自己満足を買ってるだけでしかありませんとも。

 自己満足というのは所詮一時的な物、幸せになったとしても一瞬!

 どうせ欲しいURを手に入れてヤッハー! とか言ってても

 次の瞬間、別キャラが欲しくなって折角当てたキャラに興味など無くなり!

 ダブればこんな雑魚、もういらねぇよとか言うのがオチでしょうが!)

(がふ!)


た、確かに案外的を得ている…た、確かに最初まで欲しかったURが当っても

しばらくすると、別キャラが欲しくなってまた投資して

折角手に入れたキャラが出てきた時は別に興味なさげにダブりか、とか言ってた気が…


(ッハ、そんな変わりがいくらでもあって何でも良い物が夢とは

 また随分と薄っぺらい物ですねぇ、それじゃ、そこら辺にある紙のほうが

 色々としっかり記録できる分マシでしょう!)

(止めろ! 止めてくれぇ!)

(ですが、身体を張って得た思い出という物は一生残る物ですよ。

 辛い思い出も同じく、一生残る物です。

 何かに行く詰まったとき、出てくるのはソジャゲーのキャラでは無く

 今までの思い出でしょう? 辛い思いをしても、昔辛い思いをしていれば

 その辛い思い出と比べればマシだと感じ、乗り越える事が出来る!

 その思い出にソジャゲーのキャラは居ない! ガチャも存在しませんとも!)

(それは分からないだろ! まだ行き詰まったこと無いんだから!)

(なら今回行き詰まってください、身体を張って、痛い思いをして

 必死に努力して、踏ん張って、怪我をし続けて、そして達成しろ。

 達成までの過程で必ずあなたは行き詰まる、その時に果たしてあなたは

 ソジャゲーのキャラが出てくるか、楽しみですねぇ)


…い、意地を張ってあんな風言ってしまったが、多分出て来ないだろう…

いや! 出てくるかも知れない! これで受入れるのは何か負けた気がする!


「お姉ちゃん? お姉ちゃん! 返事してよぉ! 一緒にギルド行こうよ!

 お願いだから-! 私を助けると思ってぇ! 何でも! 何でもするからぁ!」

「あぁ…何でもするんだよな?」

「うん!」

「ならば! お姉ちゃんにキスしなさい」

「はーい!」


冗談で言ったはずなのに、マリスは躊躇いなく俺にキスをした。


「にゃ!」

「え? 何で驚いてるの? でも何にしても! これでお願いは聞いたから

 私のお願いも聞いてよ!」

「あ、あぁ、わ、分かった…なぁ、その…マリス…」

「なーに?」

「えっと…その…き、キスの意味合いって知ってる?」

「うん、大好きな人にする事でしょ?」

「まぁ、そうなんだけど」


それを知った上で、当たり前の様に俺にキスをしてくれた…だと!

この幼女! 馬鹿な! は! そうか! これが、これが姉キャラの特権!


(いえ、それは違いますけど…あなたとあの子が異常なだけですけど…)


これが姉妹だったのか! いや違う! 姉妹では無く妹だ!

もしそうならば、俺に妹という萌え属性全開の存在が居てさえくれていれば!

俺はあっちの世界では妹にキスをし放題だったというのか!?


(いや、ですから違います、普通はあり得ません。

 後、大体姉妹というのは仲が悪い場合が多く)


く! 俺はなんて不運だったんだ! 何故! 俺は1人っ子だったんだ!

ちぃ! 恨むぞ父さん母さん!


(そんな邪な心しか無い状態で両親を恨まないでください、このクズ)

(く! 今更後悔しても意味は無いが! 何故なら今! 俺の目の前には!

 実際に血は繋がっていないにしても、俺を姉と慕ってくれる妹が居る!

 個人的には兄としたって欲しいが致し方あるまい、百合も尊い物だ!)

(あなたが姉なのですし、百合…になるのでしょうか、普通にノーマルでは?

 あなた個人が感じる感覚などは)

(な!)

(つまり! あなたがどれだけ百合が尊いと言った所で!

 あなたが男であり女である以上、どう足掻いても百合にはならないのですよ!

 それは百合では無く、ただのノーマル! あなたが抱く感情は!

 百合の時に抱く女心では無く! ノーマルの男心!

 そうつまり! 例え外面が女でも中身は男なのだから!

 あなたはどう足掻いても百合を体験することは出来ないのですよ!)

(がは! ば、馬鹿な! 男であり女であるという事にそんなデメリットが!

 く! 中身も外見も男なら、向けられる感情が男への感情なのだから

 それは素直に男として受け止めることが出来る感情かも知れぬが!

 外面が女で中身が男では、向けられる愛情は女の自分への愛情!

 中身の男への俺がその本来女が感じ得る感情を得る事が出来ないと言うことは!

 その間にパラドックスが生じ! 真の愉悦や喜びを感じられないと言う事か!)

「お姉ちゃん! お姉ちゃん! 何と葛藤してるの!? お姉ちゃん!」

「っは!」


しまった、つい感情的になりすぎて、目の前にいる可愛い妹に目が行ってなかった。

俺としたことが一生の不覚だ、内の自分に目が行き、目の前の楽園を見失うなど。

そう、深く考えるまでも無い、彼女が俺へ向けてくれる感情は姉への感情。

それならば、邪なことを要求されても、きっと受入れてくれるはず!

ふふふ、真の喜びや愉悦を得られなかったとしても

俺がその真の感情を知ることは出来ぬのだから、俺の中には最初からその感情は無い。

ならば、今の自分が知り得る事が出来る感情が真の喜びでは無いのか!

難しく考える必要は無い、欲望に忠実に彼女と過ごせば良いのだ!


(結局下心丸出しですね)

(男というのは、本能に忠実なのだ!)

(はぁ、ま、便乗した私が言えるとは思えませんがね)


ふ、これは確かにかなりの楽園だな!

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