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飛行機事故


「ほら、優佳、窓の外、綺麗だよ」


 僕は恐る恐る声をかける。


 「あら、ほんと、人間が蟻のようだわ」


 冷たく答える優佳。



 僕の名前は佐藤由美。女の子みたいな名前であるが男である。33歳独身、趣味はアニメ鑑賞。職業はアルバイト及び蛙流忍術の師範代である。


 隣に座っている黒髪ポニーテール美少女は、従姉妹の佐藤優佳14歳、絶賛中学生及び蛙流忍術の唯一の門下生である。




 あ~気まずい。というか死にたい。


 昨日まで優佳は僕に懐いていた。「お兄ちゃん大好き」が口癖だった。昨日、僕が優佳に告白するまでは・・・


 だってしょうがないじゃないか、生まれてから33年、彼女がいないどころか、ほとんど女子と話したこともなかったんだ。そこに、君みたいな可愛い女の子が懐いてくれたんだ、勘違いもするさ。



 もう、僕は一生立ち直れないだろう。


 幸いだったのは、告白したのが優佳の神戸での忍術修行最終日だったことだ。


 夏休みに僕の家で忍術修行した優佳は、北海道の実家に帰るのだ。


 今まさに、神戸空港を出発し、北海道に送り届ける途中なのだ。



 出発してしばらくして、優佳がいきなり僕の手を握ってきた。


 「お兄ちゃん、何かおかしいよ・・窓から陸地が見えないし、この飛行機さっきから旋回ばかりしているよ。スッチーさんの顔色も・・・」


 

 僕は、優佳の手を握り返す。


 「柔らかくて可愛い手だね~ぐへへへ~」

 

 「変態!こんな時に!」


 赤面する優佳。怒り6照れ4の表情、最高です。


 

 「その表情いただきました!大丈夫だよ、何があっても優佳は僕が守るから」


  

 その刹那、飛行機が急降下。機内は阿鼻叫喚。何人かは宙に舞っている。


 一旦飛行機は安定したが、右旋回を続けている。完全にアンコントロールだ。窓から海が見える。高度が低い。


 

 「優佳、落ち着いて聞いてくれ、龍神を口寄せする」



 「そんな!お兄ちゃんの、そもそも人間の神気で口寄せできるのは蛙神が精一杯、龍神なんか口寄せしたら即死しちゃうよ」


 

 「どうせこのままではみんな死んでしまう。最後くらいは好きな女の子を守って死にたいんだ。19歳も年下の中学生に告白する変態兄貴でごめんな」



 僕は、シートベルトを外し、口寄陣の書いてある巻物を広げ、親指を咬み唱える。


 「いでよ龍神!」


 口寄陣が光り辺り一面がホワイトアウトする。



 「人間の小僧よ、そなたの神気では5分と命が保つまいよ」


 龍神の声だけが聞こえる。


 

 「かまわない、僕の命をささげる。この飛行機を安全な所へ降ろしてくれ」



 「しかたあるまい、小僧、そなたの神気を全ていただくぞ」


 

 その瞬間、飛行機が垂直落下を始めた。


 

「急げ龍神!」


 

 龍神は光を放ち飛行機に絡みついた。


 飛行機は急降下を止め、ゆっくり降りてゆく。


 どうやら陸地に降りたみたいだ。



 僕の意識は薄れていく。


  

 優佳が僕を抱きしめ叫んでいる。


 「お兄ちゃん死なないで!本当は嬉しかったの、驚いただけだったの。大好きなの!死なないで!」


 僕は薄れゆく意識の中、優佳の胸に手を当て、ちょっとだけ揉んだ。好きな女の子の胸を揉みながら逝けるのだ。幸せな人生だった。



 最後に優佳の愛情10、悲しみ10の表情が見れた。


 「その表情いただきました」


 これが僕の最後の言葉となった。


  



 


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