プロローグ・克雄の一日
1話を短くしてみました。読みやすいかな?と思います。魔眼で見てください。
~西暦1938年・北海道・空知~
俺の名前は石井克雄。
炭鉱で石炭を掘ってる。今年で24になる。
「あぁー、こわい」
と、ため息を零しながら隣の席に座るのは同じ班の彰だ。
「まぁ、汽車だのなんだのと内地の技術が入ってきてるからな。忙しくなるのは当然だろ」
「まぁな。これで給金が上がればいいんだが、そうもいかないんだよなぁ」
そう言って愚痴る彰。
すると、班長が戻ってきたようだ。
「よぉーし。お前ら上がるぞー」
と言う。
「あい。お疲れ様でしたー」
と言って帰る支度をする。
上着を着て帽子をかぶる。この時期は手が冷たくなるので手袋をはく。
外に出ると一面雪景色。事務所の中は暖かいが、外はとても寒くなる。
「やーしばれる!さっさと銭湯行くか!」
「だな。しんちゃんが待ってるだろうし」
しんちゃんとは慎一という炭鉱仲間で、班は違うがいつもつるんでいるやつだ。
仕事のことを愚痴りながら銭湯に向かう。そうしていると寒さも少しは和らぐというものだ。
~銭湯~
銭湯に着いて、受付のおっちゃんに挨拶をし、中に入る。
そこには炭鉱から戻って来た男共でごった返していた。あまりいい気分にはならないが、まぁしょうがないだろう。
知り合いに「おばんです!」と声をかけながら定位置の籠に向かう。大体、炭鉱夫の定位置は決まっているのだ。
服を脱ぎ風呂に向かう。すると、しんちゃんは既に浴槽に浸かっていた。
「おぅ!お疲れ!」
「よぅ。今日もしんどかった」
「いつもの事だ。金のためには働かなきゃいけないからな」
そうなのだ。金のためには働かなければならない。
そうしてお湯を浴び、風呂に浸かる。
「あぁ〜。極楽極楽」
ありがちな溜息とともに決まり文句を言う。
「だなぁ。しばれた指もすぐに治るな」
「ほんとにな」
「しっかし、お前は本当に結婚しねぇのか?」
と、彰が言ってくる。相手がいないと何回も言ってるだろうに。
「相手がいるんなら苦労しないんだがなぁ」
「何を言ってんだ。お前金もあるし顔もいいんだからめんこちゃんがすぐにでも見つかるだろうが」
「男に顔褒められても嬉しかねぇよ」
顔がいいかどうかは知らんが、金があるのは確かだ。身内がいない関係で金を使う機会が無いと言った方が正しいか。
「んなこたいったって、お前ももう婚期すぎるだろ?早くしないといい子はみんな取られちまうぞー」
そうなのだ。急がないとそろそろやばい。
「まぁ、何とかするさ。気にすんな」
「友人の結婚相手が気になるお年頃なんだよ。さっさと決めちまえ」
「ハイハイ分かったよ」
まぁ、なんとかしよう。
とかなんとかうだうだとして、長風呂して風呂から上がる。そして着替えて家路についた。
「じゃあ、また明日なー」
「おつかれー」
「おう」
適当に返事しつつ帰る。
家に着くと室内はすでに冷え切っていた。ストーブに石炭を突っ込んで火をつける。暑くなりすぎるので火加減をしっかりしなければならない。
ヤカンに水を入れてストーブの上に置く。こうしておくと水がいい感じに熱くなるのだ。
そうしてできたお湯でお茶を淹れる。寝る前のお茶は習慣化している。
夜中にあいつらは酒を飲むらしい。自分自身酒にあまり強くないので夜中はお茶だ。
そして、そのまま布団に入る。独り身だからやることもないのだ。
そして深い眠りにつく⋯⋯
読んでいただきありがとうございます。