4話 すれ違い
受付嬢のリリは先ほどから対応している20歳ぐらいの男について考える。
最初に入ってきたときは身なりが冒険者のそれではないため依頼かと思えば、急にオーパーツらしきものを出してきたり今の西暦を聞いてきたり忙しない人だなぁと思っていたら今度は冒険者登録をしたいと言ってきた。
ギルドでは相手の素性を詮索することは禁止されているけれど目の前の男が冒険者になってやっていけると思わない。
これならまだ孤児院上がりのやる気溢れる少年たちの方が強そうだ。そんな事思ってしまうほど目の前の男からは力強さが感じられない。
ああ、納得したわ。この人はテイマーだったのね。それならば力強さが感じられないのも理解できるわ。
テイマーとは魔物などを使役して戦う職業である。そのため自身のステータスは全く伸びないのだ。そのためテイマーは初めはパーティーにいれてもらい魔物をテイムして初めて一人前である。
けど、見たところこの人は魔物を使役していないみたいだしパーティーに入れてもらうには必須と言える自己PRを書かないんだもんね…
残念ながらこの人はずっと低級の冒険者なんだろう。
そう思ってたことがありました………
俺の呼び掛けに反応して赤いスライムがモンスター牧場から出てきた。
「久しぶりだな!スラぽん!元気だったか?」
俺はそう声を掛けてスラぽんに近づいていく。すると、愛らしいことにスラぽんは俺に飛び付いて来て体の一部を手のように伸ばし俺を抱くようにする。
うぉっ!今までは画面上でしかあったことないから知らなかったけどこんな感触なんだな。
タカシがスラぽんと戯れているとき受付嬢のリリは驚いて声が出なかった…
「あ、あの人の職業は……」
俺は一通りスラぽんと戯れてから受付嬢に話しかける。
「ほら、これで俺がテイマーってことが証明出来たろ?さあ、さっさと冒険者カードを作ってくれよ!」
そう話しかけてみるが、彼女は唖然としている。
ふっふっふっ、それはそうだろう!なぜならスラぽんが赤いスライムだからだろう。
普通、スライムは青色しかいない。だが俺はAFで最強のスライムを作りたいと密かに思っていた。
そんなある時、イベントクエストでAFの全プレイヤー参加型の「邪神降臨」というクエストがあった。その時に俺も参加していたんだが邪神を討伐した直後に邪神の欠片みたいなのをスラぽんが吸収したんだっけな?それを吸収して以来青色だった体が赤色になり短時間なら邪神の力を使えるようになったのさ。
説明が長くなったが恐らく受付嬢は赤いスライムの珍しさに唖然としているのだろう!
「………あっ!すいません。あまりのことに言葉を失ってしまいました…」
そうだろう!そうだろう!スラぽんは珍しいだろう?
「タカシさんはテイマーじゃなくて召還師だったんですね!!」
「へっ?召還師?」
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