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5.恋をしました

3000文字打ち込むのにどんだけ時間掛かるんだか…しかも、ワイヤレスキーボードで打ち込んだら画面切り替えで消える、て!どんだけ⁉︎

ううう、しかしハム後一回頑張って更新します。

5.



『当座の生活に必要な物を揃えて来るから、部屋でゆっくりしているといい』


 そんな風に告げられて、ゲストルームに一人にされた。舞子はぱふ、とベッドの上に転がり、溜息を吐く。


「くそお、脈ナシかー」

 耳障りの良い言葉はくれるのに、そこに執着さえ感じ取れるのに、此方のアピールはあっさりとスルー。

 何だ、アレは。魔性か⁉︎魔性の男なのか?


 な・ま・ご・ろ・し。


 それともアレか。中身三十路の『恋愛は目が合う処から<肉欲』を感じ取られた?

 甘酸っぺえやり取りなんか、もう物凄く面倒クサイんだよう〜!きゃっきゃうふふなんてバードスキン全開ッ!もういっそ、ズバッと袈裟懸けに斬ってえ!

 フラれたら、即、次へ‼︎の私が、あの人前にするとまるで乙女だよ。いや、今、外見だけなら立派な乙女なんどけどネ…。


 ゴロンゴロンともんどり打つ。

 どのくらいしただろうか、ドアの開閉の音がしてレイクが戻ったのが分かる。

 何故か慌てて舞子は寝たフリをかました。


「…マイコ?」

 遠慮した声。躊躇いがちにノックされ、そうして漸くドアが開いた。

「眠ってしまったのか…」

 頬におずおずと伸ばされた指。まるで、確かめないと姿が消えてしまうのではないか、と。

 柔らかさと体温を指先で触れて、そっと彼女の手首にジャケットの内側から取り出した白く細い腕輪ブレスをつけた。

 彼女の腕に測った様にピタリと嵌まるソレは所有の証なのか?


「マイコ…俺の─────俺だけの」


 真剣な眼差しに切なげな光が混じる。


「俺だけのヒュータイプ」




 そうして彼が居なくなった後に、明かりを消された部屋の中で、舞子が拳を握って「うぐぐ」と唸り、やがて脱力した。






  ☆


 レイクを教師に日々の細々した事を習い始めた舞子はクルクルと良く働いた。

 だがそれは舞子の手を煩わせない為に様々な事を先回りする彼との戦いの日々でもあった。


 彼の申し出た『自分の事は自分で』というものは非常に限られていたらしく…と、いうか、所謂『食卓まで着替えて一人で来る』とか、『家の中で一人で留守番をする』とか、『お風呂に入るのに下着は持参する』だとか、『自分で洗う』というモノで。

 ─────そんなモンは普通、自分でするだろう!


「自分で出来るのか……」

 カルチャーショックを受けているらしい彼に、幾度肩を落とした事か。

「料理を教えて下さいよ、じゃないと想像で作りますよ?」

 何しろ調味料がよく分からない。調理器具も微妙な物がある。包丁代わりらしいスライサーに手を出そうとすると、直ぐレイクに取り上げられる。

「あんたはそんな事をしないでいい。それより、食べられない物や嫌いな物は今迄出した食事の中に…あったか?」

 阿る様に尋ねられるが、舞子は黒髪を横に振って否定する。

「そんなモン、お世話になってる分際であるワケ無いでしょう?何でも食べます」

 スライサーもどきを取り返そうとする手をやんわりと戻される。

「いいんだぞ?あんたに不自由を強いているのはこっちなんだから。もっと色々不満を言っても」

「もー、外出先から買ってくる出来合いも美味しいとこから買って来たんでしょう?いいんですよ、そんなに居候に気を遣わないでも。

 あ、でも昨日出たのは特に美味しかったですよ?レイクの手作りの。ソースが凄くまろやかで〜だーかーら、あたしにも作らせろォ」


 揉み合う内に押し倒す形になって、あたし達は床に縺れ込んだ。

 暫く、二人して固まる。


 ど、どどどどどうしよう。これはチャンスかハタマタ罠か⁉︎


 あたしの顔を凝視したまま、ぴくりとも動かない彼の頬にサラダのドレッシングが一滴、跳んでいた。

 あたしは意を決してそれを「あ、跳んでるぅ」とか言いながら、顔を近付け、ペロっと舐めてみた。

 レイクはびっくりも極めたという顔をして、やがて不機嫌そうに表情を歪めてゆく。


 し、失敗したかっ⁉︎



「──────マイコ、俺が男だって分かっているのか?」



 ぐるっ、と引っ繰り返されて体位が入れ替わる。頭の下にあったかい大きな掌の感触。

 レイクの掌だ。直ぐ目の前には彼のサファイアの様な濃いブルーの瞳が瞬いていた。


「そしてあんたは綺麗な女だ。こういう場合、健常な男が取る行動は一つ」


 身体を支えていた彼の手があたしの頬を包む。そうした結果、レイクはあたしに体重を掛けぬよう、気を遣いながらもしなやかな肢体で覆い被さった。

 頬に接吻キスを受けながら、耳朶を柔らかく噛まれて扱かれる。


「───────こういう事になるんだぞ?」


 あたしはその言葉に躊躇いなく、広い背中に手を回した。

 彼がぴくり、と身体を震わせるのを合図にシャツの内側に指を滑らせ、ぐい、と自分の方に引き寄せた。同時に脚を絡ませ、搦め捕ろうとすると───────



「やめろ、やめてくれッ‼︎」



 慌てて身体を引き離す彼に、あたしはキョトンとして小首を傾げる。

「ええーっ!やめちゃうのー?どうしてぇ?」

 据え膳食わせろや、コラ!散々煽っといて、寸前でお預けって、どういう事だ‼︎あ?


 どうやら『無防備なあたし』に対するお仕置きと教訓の意味で、ちょっと齧ってビビらせようとしただけらしい。顔が赤い。


「……そうか、あんたは見たままの年齢じゃ無かったんだったな」

 少し悔しそうな感が漂っている。


 むう…恥じらいながらも反応するというパターンの方が愛らしかったか⁉︎理性も飛んだ?

 つか、溜息吐いてるっ。また失敗したの‼︎


「誰にでもこう、なのか?」

「は?」

 ぽつり、と漏らされた彼の言葉は、脳の理解範囲を越えた。


「俺だけという訳じゃないんだろう…?」


 そう呟いたレイクはあたしを見て、ぎょっとした様だ。

 何故ならあたしは泣いていたから。

 ぽろぽろ涙を流していたから。


「な!──────マイコ、どうした?」


 慌てる彼を邪険に振り払うと、泣きながら歩き出した。

 その先は地上への出口。

 レイクは血相を変えて駆け寄るとあたしを抱き止めた。


「行くな‼︎…ここを出て何処に行く気だ⁉︎」


 その背中を力無い拳で精一杯殴り付ける。

「淫乱、みたいな言い方されて!ヒクッ、どうして一緒に居られると思うのッ⁉︎」


 馬鹿じゃないの?そんなに安く無いわよ、バカバカ放せっ!はなせぇ‼︎


 くぐもった叫びに自分の言葉の選び方が間違っていた事を青年は悟った。

 狼狽えて、それでもこの宝石に自分が傷を付けたのだとまだ信じられなくて。それでも、この『奇跡』を手放す事など到底出来る筈も無く。


「違うッ!あんただったら、どんな男も足下に平伏すだろう……だから、俺で無くても」


 その言葉に更なる拒絶と受け取った舞子が、再び力を入れて鍛えた腕から逃れようとする。


「もお、いいッ‼︎離して、出てくっ!」

「マイコッ」

「あたしは……好きな人しか、誘ったりしないッ‼︎」


 舞子はそう思いっきり叫んだ。


 その時、劇的にレイクの雰囲気が変わった。

 何かに打ちのめされ、そうして同時に彼は身震いする様な歓喜にその身を貫かれていた。

 かろうじて舞子を捕まえていた彼は、身を包むその感覚を逃さぬ様に目を瞑ると深く息を吐く。


 そうして、舞子を覗き込みながら包む様に抱き締めると、企みを秘めて囁いた。


「すまなかった」


 その魅惑的な響きに舞子の腰が抜ける。

 意識していたらしく、レイクは外見少女の身体にすっ、と手を回した。

 羞恥で真っ赤になりながら、彼女は身を捩る。


「だ、駄目なんだからッ、あたし、怒ってるんだからっ‼︎」

「ああ。そうだな、俺は…悪い男だ」


 囁く欲望に掠れた声に舞子は更に赤くなりながら俯く。力を失った拳にそっと、鋼の美しさを湛えた青年が接吻する。




「マイコ、俺が欲しいのか?」




 その手を抱いたまま跪き、下から視線を合わせたレイクは誘う様に尋ねた。乞う様な問いだった。

 恥ずかしさに思うに答えられず、舞子は彼に唇を合わせる事で気持ちを伝える。

 柔らかい接吻は直ぐにリードを奪われ、覆い被さっている彼女の方が奪われていた。

 砂漠で水を得たかの如く、絡められたそれを夢中で貪る。


.




8/19修正。

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