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5th world   作者: リープ
一章 少年たちは変わった世界の中に巻き込まれていく
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6話・母親に起こった事件

ファミレスの一角で俺は昔話を中川と相田に話した。


予想では静まり返ると思っていたがそれに反して騒がしかった。中川が笑い転げていたのだ。

「おいおい、マジかよ!両親のどっちかなら分かるけど両方浮気してたとか面白すぎだろー!てかその氷室ってやつ何もんだよー!」

たまにムカつくこともあるがこいつのこういうところに救われることもあるんだな。


「それは大変だったね」

相田は中川と対照的に本気で心配してくれてるようだ。


「どうせ過去のことだし今の渡辺はこの通りグレてないし心配することなんかねーよ」

「そうだな」

そっちのほうがあり難い。


「で?離れ離れになった母親とはどーしてんだ?」

「たまに会ったりしてるの?」

「あー」


あまりその話はしてほしくなかった。そこが一番思い出したくない部分だったからだ。


だがこういうことはさらっと話したほうがいいだろう。




「母親は四年前に死んだよ」






少しの間静寂が広がった、騒がしい店内すべてが遠い場所のように思える。


「あー、悪いな」

中川が頭を掻きながら誤った。

「別に大丈夫だ。それこそ過去の話だしな。」


それから俺は中川たちにそのことについて話した。ここまで話したらすべて話したほうが余計な気を使われなくて済むだろうと判断したからだ。




両親が離婚した後、俺は月に一度、母親に会っていた。


母親は家を出て行ってすぐに不倫相手と再婚した。

母親の話では再婚相手は誠実で正義感のあふれる男らしい。

俺は不倫しといて誠実だ正義感だとよく言えるなと思った。

それでも父親と一緒に居た時より幸せそうだったのでそれは素直に嬉しいことだった。


そして両親が離婚してから三年後。あの出来事が起きた。

日本各地で飲み物が配られたことだ。


それから世界では『超能力というものはある』ということが常識になった。


それからさらに一年後。その事件は起こった。


ある能力者が民家に強盗に入ったという事件だ。

その事件も警官が能力者を射殺することで解決した。

俺はそのニュースをぼーっと眺めていた。

すると突然心臓を握りつぶされたような衝撃が走った。

その事件では一人の一般人が犠牲になったらしい。


その一般人の名前が母親の再婚相手の苗字、



そして母親の名前だった。



意味が分からなかった。目の前が暗くなった。


テレビから流れてくる音声は事件の詳細を語っていた。

民家の主人が強盗に抵抗し興奮した強盗がなぜかその主人ではなく、妻を殺害したらしい。


そのあとすぐに会社に行っていた父親から電話があった。珍しくあの父親も戸惑っていた。

そして殺されたのは母親であったと分かった。


そのとき、きっと母親を殺したのは犯人であり、再婚相手の無駄な正義感だったのかもしれないと思いその再婚相手を怨んだ。


しかしそんなことを考えても意味がないと思い受け入れることにした。一年かかった。







「とまあ、こんな感じだ」

「・・・」

さすがの中川も騒ぐことはなかった。

「・・・・・・」

相田はなぜか青白くなっていた。人の話でよくここまで思い詰めることができるもんだ。


「言っただろ?もうこれも過去の話だ。あまり気を使うな」

それでも数秒間沈黙があった。


最初に口を開いたのは中川だった。

「そうだな。俺たちがお前に気を使ってても過去は変わらないしな!」

いつものような笑顔に戻った。この短時間でこの能天気さに二度も救われるとはな。

「そうだね」

相田もいつもの穏やかな顔に戻った。そして続けた。


「渡辺君は能力者のことをどう思ってるの?」

「なんでそんなこと聞くんだ?」

「だってそんなことがあったら普通能力者なんて嫌いになるでしょ?」

そう思うのは当たり前だと思った。しかし。


「そりゃその犯人は恨んでる。だけどそれで能力者を嫌いになるわけじゃない。個人は個人だ。それに良い能力者だっているだろ?」

テレビで能力を人助けに使っている人が居るというのをやっていたのを思い出しながら言った。


「そっか」

相田はほっとしたような顔をした。こいつはどうしたんだ?

「大人だねー」

中川がからかうように言ってきた。


「世の中には『能力者は人間ではない!』とか言う危険思想を持ってるやつとかがいるのにな」

「最近じゃ逆に『能力者は神の子供』とか言って能力者を崇める宗教もあるらしいね」

相田が付け加える。

「それじゃ能力者は結局人間じゃねーじゃん!」

何が面白いのか中川が笑った。


それから俺たちはいつものアホみたいな会話を楽しんだ。

そして気づいたらそこそこな時間になったいた。


「そろそろ帰るか」

「そうだね」

俺と相田が立ち上がった。しかし中川だけ座ったままだった。


「どうした?」

「俺、もうちょっとあの店員さん眺めてるわ」

目線の先には中川が可愛いと言っていた店員が居た。改めて見てみると確かに可愛い。とても清楚な感じがする。


俺は呆れながら言った。



「勝手にしてろ」

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