貝原と会話だ
俺たちがひとしきり笑いあった後。
貝原は不思議そうな顔をして。
「一体何があったんだ?」
ずれた眼鏡を直しながらメイド女に聞いた。
「実はあの男の子が・・・」
そのメイド女は今さっき起きた出来事を貝原に話した。
「そうか・・・」
貝原は落ち着きを取り戻した様だった。
そして中川をじっと見つめた。
そして
「・・・・・・。君、一緒に奥に来てくれないか?」
中川に言った。
「こいつらも一緒でいいんならいいぜ」
中川は俺たちを指さした。
「いいだろう。こっちだ。」
俺たちは貝原についていった。
なぜか立花もついてきた。
俺たちは壇上の隣の扉を抜けた。
すると
「今日の集会はどうしましょう?」
スーツを着た痩せ型の神経質そうな男が貝原に聞いた。
「適当な理由をつけて帰ってもらえ。
それとあの男は取り押さえておけ。警察にはまだ言うな。」
「分かりました」
そして男は会場に入っていった。
俺たちは応接間のような部屋に通された。
とても立派で俺のような庶民には落ち着かない空間だ。
「座ってくれ」
俺たちは貝原の言葉に素直に従った。
「あのナイフの男はなんだったんだ?」
中川は聞いた。
「その前に私の質問にいくつか答えてくれ。
お前たちは門のところに居たな?本当は何者なんだ?」
「う・・・」
俺たちはどもった。
ここは正直に言ったほうがいいのだろうか?
貝原は信用できる人間なのだろうか?
俺は貝原の顔を見る。
驚いたことに感情は一つも読み取れない。
まあこういうこともあるのだろう。
判断材料はこいつの今までの行動のみだった。
そして俺はナイフ男を倒した後に入ってきた貝原を思い出した。
そのときの貝原はひどく焦っていた。
おそらく人質を救おうと必死だったのだろう。
少なくとも悪いやつではない気がした。あくまで勘だが。
「正直に言おう」
俺は皆に言った。
「そうだね。僕もそれが一番いいと思う。」
相田が賛成してくれた。
「そうだな。佐山、手紙を出してくれ。」
「はい」
佐山さんはテーブルの上に手紙を出した。
「私たち、この手紙で呼ばれてここに来たんです。」
「なんだこれは?」
貝原はその手紙を手に取り観察し、テーブルに戻した。
不思議そうにしてることからこの手紙は貝原が出したものじゃないようだ。
「君たち、これに正直に従ってここに来たというのか?」
「はい」
本当は少しいろいろあったが。
「そうか。この手紙はどこからきた?ロンギヌスのメンバーからじゃないだろうな?」
「ロンギヌス?」
なんだそれは?
たしかそんな槍があったとかなかったとか聞いたことはあるが。
「私たちと敵対する組織だ。危険思想を持ったやつらで構成されている。」
「もしかして『能力者は人じゃない』とか言ってるやつらか!?」
中川は興奮した。
たしか前に中川がそんな奴らがいるとか言っていたな。
「そうだ。最近動きが活発になってきたらしくてな。」
「てことはまさかさっきのナイフ男はそのメンバーなのか!?」
「その可能性が高いだろうな。まさかここまでしてくるとは」
物騒な話をしているな。
「貝原さんは僕たちがその組織のメンバーだとは疑わないんですか?」
相田が聞いた。
「ああ。」
「なんでですか?」
「そこの君は能力者なんだろ?だったらその心配はないと思ってな。」
貝原は中川を指さした。
確かにあの状況ならそう思うのも無理はない。




