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5th world   作者: リープ
一章 少年たちは変わった世界の中に巻き込まれていく
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3話・少年のある告白

「「えっ!?」」


俺と相田、同時に声を発していた。


「俺が能力者?何を根拠にそんなこと言ってんだよ。なんとなくとかじゃ証拠不十分で立件できないぞ?」

手をひらひらさせてわざとおどけて見せた。


「ちなみにお前は俺がどんな能力を持っていると思ってるんだ?」

一応聞いてみる。


相田はやはり驚いている顔をしている。俺も少しそれに倣った。


そんな俺たちを見て中川はぷっと噴き出し笑いながら言った。

「何そんなに驚いてるんだよ。冗談に決まってるだろ。」

「へ?」

今度は相田の声だけだった。


「逆にそんなに驚いたことに驚いたよ。」

そういう中川は心底楽しそうだった。


「なんだー、驚かさないでよー」

相田は安心したような顔を見せた。


「わりぃわりぃ、でも能力者じゃないにしてもお前にはある力があると思うよ。」

「なんだ?」

「お前、人の気持ちが分かるだろ?」


「あー」

俺は肯定とも否定ともつかない声を発した。


「なんでそう思ったんだ?」

「いや、ほんとになんとなくなんだ。証拠不十分とか言うなよ。でも、時々お前は気持ちが分かってるんじゃないかって思う時があるんだよ」

「例えば?」

「例えば・・うーん・・・数日前の武谷の時もそうだな。お前が録音を頼んだ時あったろ。あの時武谷の機嫌が良いなんて誰も分からねーよ」

「そうだね、ずっとムスッとしてるしね」

相田が同意した。


「でもお前は機嫌が良いと決めつけてアラームの録音を頼んだ。そんなの気持ちが分かるかギャンブラーかただのアホだろ」

「ただのアホかもしれないだろ」

「まあ確かにアホだが違う。さっきだって俺に『能力者だろ?』って言われた時には驚いていたのに『冗談だ』と言われた時にはそれほど驚いていなかった。」

「あ、確かに」

「鋭いな、ちゃんと『違う人間』成分を吸収してるんじゃないか?」


「それに」

中川が付け足した。


「こんな恰好した俺に近づくなんて俺の気持ちが分かってないと出来ない」

満面の笑みで言った。


「「確かに」」

俺と相田は今度こそ声を揃えて言った。





確かに俺は人の気持ちが分かる。

いや、気持ちと言うよりももっと曖昧なものだ。せいぜい分かるのは喜怒哀楽のどれかってぐらい。

それでもその人が上機嫌か不機嫌かとか。言ってることと気持ちの差で嘘かどうかは分かる。

中川の場合、確かにいきなり『能力者か?』と聞かれたことには驚いたがあの歯切れの悪さに比べて妙にワクワクしている感じがして冗談だと分かった。



それを説明したら中川も相田も心の底から驚いていた。



「まじかよ!思ってたよりしょぼいがお前はやっぱり『違う人間』だったんだな!」

「しょぼいけど凄いねー」

「しょぼいは余計だ」

「じゃ俺と初めて会った時は?」

「あー、あのときか・・・」




初めて中川と会った時を話すと別に俺はあの時気持ちを読んだわけではなかった。

確かに初めて中川の恰好を見たときは少し身構えた。

しかし偏見かもしれないがよく考えてみたらこんな恰好のやつが引っ越しをした時に行儀良く親と一緒に挨拶に来るだろうか?

可能性はゼロではないが限りなく低いはずだ。

きっと彼は諸事情で不本意ながらこんな恰好をしているに違いない。


そして中川の両親からつまらないものを貰った時には

「ああ、この子の恰好は親のセンスが遺伝したのかもしれないな」とさえ思った。


だから近づくことはそんなにハードルの高いことではなかった。





そのことを話すと中川も相田も笑った。


「確かにその通りだ!『違う人間』1号はお前じゃなくて俺の親だったんだな!」

「そんなに中川君の両親って凄いセンスなの?」

「いや、服装はどこにでもいる普通の親って感じだったけど」

俺は挨拶の時やたまに会う中川の両親を思い出しながら言った。


「うちの親は自分たちのセンスはおかしいと気づいてて外に出るときは嫌々ながら世間で言う『普通の恰好』してるんだ。部屋着とか本当に凄いぞ。」

中川はその凄い部屋着の説明をし俺たちはひとしきり笑った後、相田が俺に聞いてきた。


「でもなんで相手の気持ちが分かるなんてこと今まで隠してたの?」

まあその質問は最もだ。


「ただ面倒だったんじゃねーの?」

今日の中川はなかなか鋭いな。


「まあそれもあるけどな。言ったらどうしてそうなったのか絶対聞くだろ?」

「絶対聞くな」

「絶対聞くね」

「その話が長くなるから隠してたんだよ」

俺が言い終わるのと同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。



「その話聞きてーから放課後に近くのファミレスだな」

「そうだね」

「わかった」


とりあえず同意したが気乗りしない。なぜならあまり思い出したくない記憶だからだ。

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