26話・天国とフルチン背負い
俺は今までこんなに天国と地獄がはっきりしたジャンケンをしたことがなかった。
そしてこんなにも勝ちたいと思ったジャンケンはなかった。
俺と中川が藤崎と相田のどっちを背負うのかのジャンケンだった。
「「ジャン・ケン・ポン!!!」」
俺はグー。中川がチョキ。
俺の勝ちだった。
俺は歓喜した。
相手がさっきまで俺たちを殺そうとしていた相手だろうがそんな理由は俺たち男子高校生にとっては意味がなかった。男子高校生はときに哀しい生き物なのだ。
そんな俺たちを女の子は悲しい目で見ていた。
そして俺は藤崎を背負った。
藤崎は女性にしては背が高くヒールを履くと俺とさほど変わらなかった。が、思っていたよりとても軽く体はとても柔らかかった。背中に二つのふくらみを感じる。
これはちょっとやばいな。
背中が血だらけになってもおつりがくるぐらいだ。
それとは対照的に中川は死んだような目で相田を背負っていた。
保健室に向かう間に女の子は自己紹介をしてくれた。
「あの、私、佐山香奈っていいます。一年生です。」
それじゃちょっと前に高校生になったばかりか。
「君はなんで夜の学校に来たんだ?」
「えっと、手紙で呼ばれたんです。『日曜の午後八時、学校に行け』って」
そういえば俺たちに『私を呼んだ人たちか』と聞いていたな。
それにしてもそれに従って女の子一人で夜の学校に来るのは危なすぎないか?
そんな話をしてる間に保健室に着いた。俺はあと三往復くらいしたかった。
藤崎とフルチンをベットに寝かせた後に俺と中川は職員室に向かった。あとついでにフルチンの服を取りに行った。
職員室には刈田と武谷が倒れていた。
俺は刈田。中川は武谷を起こしに行った。
「刈田、大丈夫か?」
顔のペチペチ叩きながら聞いた。
「う、うん。起きてる・・・」
良かった。そこまでひどくはないようだ。
「こっちも生きてるぞ。起きてはないけど」
中川が報告してきた。
そして俺は外を見たらちょうど相田が呼んだ救急車が到着した。なぜかランプが点いていないしサイレンもなってなかった。
そして救急隊員が刈田と武谷を救急車に乗せた。
「あの、状況の説明とかしなくていいんですか?」
俺は救急隊員に聞いた。
「なんか別にいいみたいですよ。ちょっとよく分かりませんけど」
軽薄そうな隊員が言った。
どういうことだ?
「まあそう言ってんだから別にいいだろ」
中川が言った。
「そういえばなんでお前は俺が能力者だってわかってたんだ?」
保健室に戻るときに中川に聞いた。俺は能力について言ってなかったはずだ。
「あ、やっぱりそうだったんだな」
中川は何でもない風に言った。相田の時はあんなに驚いてたのに。
「別にこれもなんとなくだよ。職員室から逃げるときに刈田の手からクラッカーの音が鳴って、なぜか刈田が持ってたスタンガンをお前が持ってたからよ」
気づいていたのか。やっぱり鋭いやつだ。
「しかしそんなはっきりしてないのにあの時藤崎に突っ込んでったのか?」
「まあな」
こいつはギャンブラーかただのアホだな。
俺たちはフルチンの服と俺たちのカバンを持って保健室に戻った。
「あ・・・」
保健室に入ったら藤崎とフルチンはすでに起きていた。




