14話・休日にあの子と電話
今日はあの武谷の声じゃなくスマホの着信音で起きた。
なぜなら今日は土曜日だからだ。
武谷が学校を辞めた日から二日経っていた。
「もしもし。」
声がガラガラだった。
相手は中川だ。
『おいおい、寝起きか?もう十二時だぞ?』
「別にいいだろ。休みなんだから」
休みの日に休んでなにが悪いんだ。ついでに言うと休みの日くらいお前からも解放されたい。
『何言ってんだ。俺たちに休みなんかねーよ。そんなことより明日の八時暇か?』
「八時?午前のか?」
その時間は寝ている予定だ。
『ちげーよ。午後のだよ』
「別に何も予定はないがどうした?」
『学校に忍び込むぞ』
またこいつはしょうもないことを言ってきた。
「なんでそんなことするんだ?校舎の窓ガラスでも割っていくのか?」
『そんな突然死したミュージシャンみてーなことしねーよ』
「お前はしそうだ」
『興味はあるけどな』
笑いながら言った。
『武谷が学校に荷物を取りにくるらしいんだ』
そんなことを言った。
「どこ情報だそれは?」
『刈田だよ』
また刈田か。
『昨日刈田にお前がアラームの録音を頼んだ時のことを話したんだよ。』
「あの時か」
『その時の驚いた顔が面白かったっていう話をしたら刈田も見たいとか言い出してよ。でももう会えないだろって言ったら今度の日曜の八時に荷物を取りにくるって教えてくれたんだよ。で、こっそり忍びこんで武谷を驚かしてその写真を撮ろうってわけ』
「勝手にやってろ。でもなんであいつはそんなこと知ってるんだ?」
純粋に疑問だった。
『さあ?盗聴でもしたんじゃないか?あいつの趣味だし』
「は?」
初めて聞いた。
『あれ?刈田はお前に言ってなかったか?』
「聞いたことねーよ。そんな危ない趣味」
あまりにも意外すぎた。
『別に危なくねーよ。ただ聞いてるだけ。それを誰かに漏らしたり、ましてや犯罪に活かそうなんて考えてないだろ』
「そういう問題じゃない」
無断で設置してるだけで犯罪だ。それに現に武谷が荷物を取りに行くことを漏らしてるだろ。
『お前だって刈田がどんなやつか知ってるだろ?安心していいって』
「そうか・・・」
まあ確かに刈田なら危ないことには利用しないだろう。よくわからないやつではあるが。
『お前そんなに勉強して何になりたいんだ?』
以前刈田と俺たち三人が一緒に国語の課題をしているときに中川が刈田に聞いた。
「べ、別に。」
なぜか申し訳なさそうに答えた。
「別にまだなりたいものはないんだ。で、でもそのうちなりたいものが見つかるかもしれない。だ、だからそのなりたいものの可能性を狭めないために勉強してるんだ。」
「なるほど」
俺たち三人は感心した。
確かにこの歳でなりたいものを明確に持ってるやつはそんなに多くはない。しかし刈田が思うような理由を原動力にして勉強できるものはもっと少ない。
その話を聞いてから俺らと刈田は打ち解けていった。
『と言うことで明日の午後7時にお前の家に行くからな。でそのあとに学校で刈田と相田と合流だ』
「分かった」
どうせ断ってもしつこく誘ってくるんだろうから早々に諦めるとすることにした。
そして日曜日になった。




