13話・嫌悪&疑問
俺はもう一度写真を見た。
何度見ても武谷の隣にいるのはあの店員だ。
「これは本当に援助交際なのか?ただ並んで歩いてるだけじゃないのか?」
まだ援助交際とは決まったわけじゃない。
「こ、これ」
刈田は二枚目の写真を出してきた。
そこには二人がホテルに入っていく姿が映っていた。
もちろん『ラブ』が付くタイプのホテルだ。
これで確定した。援助交際だ。
そういえば武谷は既婚者で俺たちと同じくらいの子供もいたはずだ。
これに気づいた俺は嫌悪を通り越して憎しみまで覚えた。
これはたぶん俺の小さい頃の記憶が関係しているのだろう。
俺は浮気等が嫌いだった。
いや、嫌いと言う言葉で表しきれないほど、憎んでいた。
「お前なんて顔してるんだよ」
中川が言ってきた。
俺は今どんな顔をしているんだろうか?
相田と刈田は黙っている。
「いやー、驚いた。武谷のことだからそれくらいやってるとは思ってたがまさか相手があの店員だったとはなー」
「やってると思ってたのか」
「まあな、でも昨日ファミレスに残って観察してて良かったぜ。あのまま帰ってたら俺のショックは十割増しだったよ」
それは良かったな。
「てかよ、援助交際してる男ってなんであんなに威張ってるやつばっかりなんだよ?俺はそこが気に食わないね。もっと『私は援助交際してます。すいません。へへへ。』みたいな顔して申し訳なさそうに生きろよ!」
突然話変わったな。
「あと『援助交際』って名前も気に入らない。どこが『援助』でどこが『交際』なんだよ。あんなの風俗と変わんねーだろ。『商業的性行為』とかに変えたほうがいいな」
それは一理ある。
「これはいつぐらいの写真なの?最近?」
相田が刈田に聞いた。
「い、いや。これは一年くらい前。」
ちょうど武谷が刈田に目を付け始めたところか。
「なんで刈田はこれを持ってるんだ?」
俺は疑問に思って聞いてみた。
「この店員をストーカーしてたんじゃねーの?」
中川は笑いながら言った。俺は刈田に聞いたんだが。
「そ、そんなことないよ。」
刈田は明らかに動揺していた。本当にやってたんじゃないだろうか?
「武谷先生はこれがバレて学校辞めたのかな?」
「そしたら逮捕されてるはずだろ」
それはもっともだ。
刈田は言った。
「た、たぶん。バレてる。でも逮捕はされてない。」
「なんで分かるんだ?」
俺が聞いたら刈田は黙っていた。
もしかしてこいつが武谷を脅したんじゃないだろうか?
そのあと、刈田は自分の教室に戻ったが俺たち三人はまだ話をしていた。
「うーん、まだ謎な部分が残ってるね」
「そうだな」
「別にいいんじゃねーの?大体のことは分かったし」
それもそうだな。どっちにしても俺たちが楽になったのには変わりがない。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。




