10話・ある事件とある幸運
「起きろ!さもないと課題を増やすぞ!起きろ!さもないと課題を増やすぞ!」
今日も独特のアラームで起こされた。
一階に行くとやはり父は居ない。
それから登校の準備をし朝食を用意しニュースを見ながらそれを食べていた。
いつもと同じだ。
この日のニュースはまた能力者絡みだった。
最近になって二日連続なんて珍しいな。
ニュースの内容はこうだ。
昨日、とある場所で能力者が一般人と思しき人を殺害。そのあとに駆け付けた警官に能力者は射殺された。
また他の場所でも同じような事件があった。
なんと二件も。
つまり昨日だけで一般人が三人殺され、能力者は三人射殺されたということになる。
これは明らかに異常だ。
しかしテレビの中の小太りコメンテーターは『これはたまたまじゃないかな?』とか言っていた。
俺が代わりに出てやるからそこどけ。そっちのほうが明らかに良い。
そしていつもと同じように中川とバスに乗った。
「おい!今朝のニュース見たか!?」
くると思った。
「見たよ。同じような事件が三か所で起きたやつだろ?」
「それだよ!あんなことってあると思うか!?これは何かの陰謀だな!」
今日の中川は明らかに興奮していた。
「陰謀って。誰のだよ?」
「それはしらねーよ」
だったらそんな話題ふるんじゃねーよ。てか二日連続で『そんな話題ふるんじゃねーよ』って思わせんじゃねーよ。
「まあいいや。そういや昨日あれからどのくらいファミレスに居たんだ?」
俺は聞いてみた。
「ん?ああ、そんなに長くいなかったよ」
「なんでだ?あんなに可愛いって言ってただろ?」
あのとき中川は『どうせ見るのはタダなんだから穴が空くまで見てやる』とも言っていたはずだ。
「いや、なんかいろいろ違うなって思ってよ」
「やっと人を凝視するのは迷惑だと気づいたか」
中川みたいな人間でも成長するんだな。
「そうじゃねーよ。なんかあの子清楚なのは見た目だけだなって思ったんだよ」
「別にそれでいいじゃないか」
どうせ見るのはタダなんだから。
「よくねーよ。俺の求める『清楚』は中身も大事なんだよ」
「ハイハイ。で、どういうところがダメだったんだ?」
「例えばしゃべり方とか言葉遣いとかかな。今どきの女子高生って感じだった。」
「今どきの男子高生がなに言ってんだよ」
気づいたらバスは下車する場所に到着していた。
下車するときに中川が
「あーあ、面白いことねーかなー」
と大きな独り言を言っていた。
面白いことは結構すぐに起きた。俺たちにとってはとても面白いことだ。
今日の国語の時間。
なぜか武谷ではなく藤崎がきた。そして言った。
「武谷先生はある事情でこの学校を退職しました。なので今日から私がこのクラスの国語を受け持ちます。」
クラスの全員が心の底から喜んだ瞬間だった。
そして生徒全員が武谷の時より真面目に授業に取り組んだ。
そして昼休みになりこれまたいつもと同じように三人が集まった。
「なんで武谷先生は学校辞めたんだろうね?」
相田が言った。
「別になんでもいいんじゃないか?藤崎になって嬉しくないやついないだろ?」
少なくとも俺は藤崎になって嬉しい。
「それはそうだけど。やっぱり理由が知りたいよ。中川君はなんか知ってる?」
相田が聞いたら中川は俺たちに顔を近づけて
「なんかどころか俺はすべてを知ってるやつを知ってるぞ」
ひそひそ声で言った。
「マジか!?」
「本当に!?」
俺と相田同時に叫んだ。




