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第2章 プロローグ
無力な僕はこのまま風流楓が化物から蹂躙され、殺されていく様を見続けなければならないのだろうか。
ピクリとも動かない──動けない風流楓は、嫌だ死にたくないと瞳から雫を零し、死に対して争う。
そんな彼女を見捨てこの場から逃げることなんて出来るのだろうか。いや出来ない。僕は彼女が死にゆく様を見たくない。見たくなかった。
だが、僕は何も出来ない。
出来ることと言えば、
「楓……」
彼女の名前を呼ぶことしか出来なかった。
普段はこっぱずかしく呼ぶことのなかった彼女の名前を無意識の内に口走っていた。
目の前で人が殺されるかもしれない──そんな光景を目の当たりにした僕は、過呼吸気味になりながらも彼女に手を伸ばす──が届かない。
僕は己の無力さを呪い、またこの世界へ僕を導き、風流楓という一人の少女と出会わせた──神様を恨んだ。
そして、傍で僕と同じように怯えているブロンドの髪の少女を憎んだ。