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悪人の脳は、幸福物質を送る回路が異なる

私は家に帰ってからタブレット端末でゆっくりと、悪人たちの思い出を見ようと思った。超高層ビルのほとんどがクラウドになっていて、膨大の量の情報量が保存している。全世界の人たちの思い出が保存している。


「中東に行った日本人の思い出を。殺人事件の犯人の思い出を」

 音声で入力するとタブレット端末から返事が来た。

「戸松ほむらさん。あなたは、まだ12歳。トラウマになるような情報があります。アクセスはできません」

「では、つい最近、亡くなった殺人犯の臨死体験を」

「わかりました。見ても時間の無駄ですがいいのですか」

「でも、私興味があるの」

「みんな同じような動画です」

「お願い」

「わかりました」


 タブレット端末の画面からはうす暗い霧の映像だけが延々と見える。次第に暗くなる。そして、人が歩いているように、画像が揺れる。


 どこか深い谷を歩いているみたい。岩場だらけ。草木が一本もない。

 見ているだけで気が落ち込みそうになる。

「少し早送りを」

「はい3時間後の映像です。ここで変化が始まります」

 私はタブレット端末から、川が見える。この世とあの世を隔てるものがある。誰も迎に来ない。とても孤独に感じる。

 船に乗り込むところで、映像が途切れた。

「これで終わりです。人間が死ぬ直前の記録です」

「そうなの」

「ほむらさん。あなたは忙しいです。今日は土曜日。午後の授業が終わったあと、ダンススクールに歌唱スクールです。悪人の思い出を見ても意味がありません」

「わかりました。もう満足です。私には早すぎました」

「その通りです。では、ダンススクールの準備してください。ネット接続したレオタードを忘れないよう」

「はい」


 私は買ったばかりのレオタードを手にした。

「はじめまして。あなたがユーザーですか。身体に合うか試着してください。それからスマホ端末でユーザー登録を行います」

 人工知能が搭載しているレオタードから話しかけられた。レオタードは色が変わるだけでなく、映像も表示する。柄も自由に変えられる。

 私はレオタードを試着した。

「ほぼ身体に合っています。それではユーザー登録を」

「氏名、戸松ほむら。中学1年生・・・偏差値70・・・、身長152センチ、今日のスケジュールは・・・、ではユーザー認識は終了しました」 

「ありがとう。これからも、よろしく」

「よろしくお願いします。午後5時30分からダンススクールです。では外出着に着替えてください」

「はい」


 私はミニロボット・タクシーに乗る。ミニロボット・タクシーが既に私の家の前で待機していた。

「これから、ダンススクールに行くのですね。到着時間は15分後になります」

「お願いします」

「で、忘れ物は。ネット接続していないものとICタグで登録されていない古典的なものは認識できません。バックの中を確認お願いします」

 私はロボット・タクシーの言うとおりバックの中を確認した。

「忘れ物はありません」

「それではダンススクールに行きます」

 この時代、すでに自転車は存在しない。自転車を作られていないし、自転車やバイクなどの二輪車は存在しない。主な交通機関はロボットカーとロボットタクシー。

 私のバックが話しかけられた。

「ほむらさん。あなたは忘れ物をしたことない。しっかりものです。では、今日は最初のレッスンですから頑張ってください」

「バックさん。ありがとう」 



 小さい車体のミニロボット・タクシーは一人乗り。どこかに行こうとすれば、事前に家の前にいる。私たちの行動は監視だけでなく予知されている。


 まるで神様に管理されているみたいな社会。それが23世紀の先進国の未来社会。



 日よう日は、とても忙しかった。朝からダンスの訓練。そしてダンススクールで知り合った子たちとお弁当を食べた。午後、学習塾に音楽学校に通い、家に帰ったのが夜7時。

「12時間もアイドルになるための特訓を毎週受けないと」

「ほむら、夕食は」

「友達と一緒に食べた。ファーストフードのお店で、軽いものを食べたの」

「そうなの」

「ちょっと、学校の勉強をするわ。それから明日から、私のクラスに婦警さんが来るの」

「なんだが外地の公立学校みたい。外地では小学生高学年から悪いことを覚えるから教室には、いじめ防止のため警察官が常駐しているの。で、クラスメイトは宗教関係者なんだね」

「そうなの」

「と言うことは、アラビア語学校に行った子」

「そうなの。宗教法人法で決められて。宗教テロをおこさないか警察官がつくけど。でも、あの子、そんなことをする子にはみえない。宗教に対する締めつけは厳しすぎるわ」

「でも、婦警さんたちは優しい人たちだわ。今は警察官が余っているから」

「そうね」

「ねえ、婦警さんたちと仲良くしたら」

「うん。これから私、学校の勉強をしないと。100点をとるつもりで勉強をしないと」

「そうね」


 私は1時間ほど勉強をした。身体が疲れている。集中し、そして、お風呂に入り体を洗う。パジャマを着て寝る。夜8時に寝てしまった。


 早朝4時に起きて、中学校の授業の予習をし、朝食を食べ、そのまま朝7時に誰もいない中学校に入る。


 「網膜検査完了。指紋認識完了。では、カードを通して、パスワードを入れてください」

 中学校の門に入るとき、いちいち個人認識をする。


 遠くからパトカーが来た。

 女性が二人、パトカーから降りる。婦警さんとアラビア語学校に行った子が二人いた。

「おはよう」

「おはよう。ほむら」

 アラビア語学校に通っているので、スカーフをかぶり、この蒸し暑い季節なのに長袖のブレザーにロングスカートを履いている。私はミニスカートの半袖のセーラー服を着ている。全然違う服装。

「ねえ、毎日、婦警さんと一緒に学校に通うの」

「そうなの。宗教法人法で決められているから。私がテロを起こさないか厳しくチェックされるの」

「でも・・・」

「おはよう。私、東京西地区の警察署の桜井です。よろしく」

 そのとき、私のセーラー服に婦警さんのデーターが入力された。わかりやすいように、私のタブレット端末やスマートフォンにも婦警さんの個人データーが入力される。タブレットを見た。

「はじめまして。桜井さん。婦警の仕事は5年目ですね」

「そうなの。大学出ても就職先は警察しかなくて。でも国家公務員だから待遇はいいし、仕事は楽だし」

「そうですか。年収も」

「あら・・・」

 婦警の桜井さんは照れた。

「今月が誕生日ですね」

「そうです。歳をとってもアンチエイチングを使えば、いつまでも若く見られるし」

「私、これから教室で授業の予習をするの」

「えらいわね」

「だって、試験の点数は90点以下は許されないから」

「賢いわ。私、一生懸命、勉強したけど50点くらいで。それで何になろうか迷ったら、そく警視庁へ就職」

「でも、警視庁に就職したくても、できない人も多いじゃないの」

「そうです。だって、警視庁の下部組織とか、または警察の下請け企業に就職する人もいるし」


「あら、もう7時20分、ちょっと教室に入って、掃除して、それから授業の予習を」

「では、今日からよろしくお願いします」

 婦警さんは警察官に思えない。警察官は市民と仲良くならないといけない規則がある。威圧感を与えてはいけない。


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