表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

午前4時、早朝の勉強

 超ハイテクファッションとは、太陽電池で稼働し有機ELで服の色を変えられる。マイクロエアコンがあるので、四季に影響されない。

 でも、私の家ではお金に限界がある。所詮、庶民だから。


 それに、もうじき期末試験。勉強に集中しなければならない。部活が終わったらすぐに勉強。なぜならカムチャッカ半島送りにされるから。

 そこに行けば8月でも寒い。周囲は森林ばかり。石器時代とおなじ暮らしを2週間もおくる。挫折すればアフリカの奥地へ永住させられる。また、不良とみなされたり、人格に問題があってもアフリカ送り。数世紀も進歩しないところは進歩しない。飢餓、政治の腐敗、弾圧、因習など、多くの不幸の原因がある。逆に多くの志願ボランティアが、その地域の生活を向上させようと頑張ってもテロリストに殺されることが多々ある。


「偏差値70。試験は全部満点を取るつもりで」

 私は軽音部で楽器演奏の練習をした。キーボードの演奏ができる。楽器が使えなければ、作曲もできない。そして、作詞をするには語彙が豊富でなければならない。言葉の表現力が必要。

「ほむら、夕食ができたよ」

「いただきます」

「おねえちゃん、試験の成績が悪いとカムチャッカ半島いきだよ」

「わかっているわ」

「そんな、まだ成長期の中学生を送るなんて。いくら不良撲滅でも、それはひどいよ」

「でも、そうしないと私たちの社会は平和にならない。金銭の奴隷、拝金主義の根源は公立学校の教育から」

「で、ほんとうにお金があれば、私立の学校に送りたいのに」

「それで、お母さん。お願いだけど、この間、関東女学院の補欠試験に落ちたけど」

「でも、寮の生活費におこづかい。それに学費を考えれば」

「私、アイドルになりたいの」

「アイドルは女性では最も高いステータス。でも、補欠試験は学費は入学金免除の特待生ということでしょう」

「そうなの。それが、ばっさり落とされて悔しいの」

「仕方ないわ。他にいろんな方法があるでしょう」

「そうだね」


 私は夜6時の夕食を食べ、午後9時に寝るまで学校の試験問題をした。


 この時代、人間よりもロボットのほうが多い。21世紀中期から世界人口は徐々に減り始めた。先進国でも人間が宇宙に行く必要がないという考えがひろまる。また、ロボットアレルギーのパソコンマニアがロボット研究所やベンチャー企業を襲うことが多かった。


 ロボットが実用化し始めたのが、今から100年前、22世紀の中期から。

 本来ならロボットアレルギーがなければ、ロボット技術は2世紀も進歩した。また、世界の貧困問題がなければ宇宙開発は3世紀も進歩していた。


 世界共産主義革命ですべての人が、限られたパイを分かち合う社会になって、科学が爆発的に進歩して、私たち庶民は目が回る。次から次へと新製品がでる。宇宙エレベーターは世界の先進国を結束を強めた。


 だがいい話には必ず裏がある。


 とても厳しい規則が。午前4時、外は明るくなった頃起き、それから、シャワーを浴び、長い髪を洗う。自分の部屋にもどり、ショートパンツとTシャツを着て、昨日勉強したところをもう一度、復習する。

「今日は朝7時半に中学校に行かないと。それに遅刻は厳禁。でも、私の家は周囲が緑に覆われているのに、家が小さすぎ」

 外は紺色の淡い空が見える。もうじき朝になる。

「間違えても夏休みを、とても寒いカムチャッカ半島やシュベリアで不良たちと一緒に過ごしたくない」

 私を突き動かしているのは、とても厳しい規則。それを破れば、かなり辛い思いをする。





 たいてい悪いことを覚えさせられるのは公立小学校の高学年。親は子供のことを知ってりつもりが全然知らない。思っているよりもワルになっていることを。そんなの子が大人になれば、いろんな人たちを泣かせる。人生を狂わせる。


 有名な格言「ワルになるには二十歳をすぎてから」


 勉強ができれば、国家公務員、地方公務員、政治家、官僚になれる。多くの人の人生に影響を与える仕事に付ける。ある人の人生を台無しにできる。自分中心の生き方をする。永遠の刑罰、無間地獄に落とされると口で宗教家が脅しても、人を苦しめ人生を台無しにすることほど、強烈な快感はない。


 あとは性犯罪である。若い女の人を強姦すれば、脳内に強烈な報酬が得られる。それに、いじめである。集団で弱いものいじめをすれば、自分は世界の勝ち組になれた気持ちになれる。いやスーパーマン、それとも全能の神になった気分になれる。生きたまま『臨死体験』ができ、脳が大量のドーパミンで破壊され、それで、重度の統合失調症になり、躁うつ病になる。


 その意味で、人類の歴史では宗教倫理が支配し続けて、人間の暴走を食い止めた。宗教倫理がなければ人類は既に滅んでいたのは確実である。


 こうして無事23世紀を迎えた。とても厳しい規則のもとで。


 人間が人間を監視する義務がある。それは21世紀中期から常識となった。相互監視、あらゆるところに監視カメラの設置。プライバシーを覗く機器の開発が急激に進歩した。人間の考えを読み取る機械、夢さえもビデオに録画できる。思ったことが立体的に表示できる。そんな機械は既に21世紀末には、ごく普通に使われた。


 『麻薬の原料は悪人の脳から』というので、悪いことしたばかりの人間をころしたら、すぐにその人の頭から脳を取り出せば、良質の麻薬が取れる。

 警察では、人間のストレスを軽減させる薬を作るために犯罪者を殺す権利が拡大された。「射殺したら30分以内に脳を取り出せ」脳を取り出し、多くの幸福物質が取り出せる。屠殺場で殺した家畜、1万頭分の幸福物質がとりだせる。良質なので、とても幸福な気持ちになれる。


 午前5時、朝食を食べる。

「お母さん。おはよう」

「おはよう。ほむら」

「おねえちゃん、おはよう」

「で、なんで私の家はひと里離れているの」

「そうね・・・、家賃が安いから。それに老後のために貯金をしないと」

「お母さん、私、アイドルになるから」

「そうだよね。アイドルとかローラーボールなど、厳しい規則の社会では必要なの。ストレスの軽減になるし、みんな夢を持てるし」

「ぼくも、応援するから」

「で、あの南先生から手紙をもらったのだね」

「うん」

 南先生は、なんらかの理由で、やる気なさそうな子を選んだ。でも、他の音楽学校、アイドル育成スクールのパンフレットやデーターディスクを渡してくれた。

「あの先生は、いつでも相談にのってくれるから」

「優しい先生だね」

「でも、見た目は20代前半だけど」

「いやね・・・、実年齢は倍なの。もう40を超えている」

「そうなの」

 私は驚いた。当然、アンチエイチング技術が確立すれば、これは全世界で大きなビジネスになる。だれだって、いつまでも若くいたい。

「若くってきれいで美人のまま永遠に生きられるのが、人類の女性の共通の夢なの」

「そう思う。でも、みんな美人だと、アイドルの価値が下がるのではないの」

「だから、良い歌を歌ってみんなを元気付けるのがアイドルなの。見た目だけはもう古い」


 午前7時半、早めに教室の中に入る。カードを使って、暗証番号を入力する。声帯認識と指紋認識、そして角膜認識をして、複雑なパスワードが一致すればいつでも中学校に入れる。

 午前7時40分、だれもいない静かな教室で、今日の授業の予習をする。


 床から私が座るイスと机が出てくる。机には画面で操作できるコンピューターがついている。これからオンラインさせ、予習をする。

 1時限目、地理の授業。

「人間の脳は、この惑星、地球のあらゆる生物の中で最も良質な物質が生成できることが近年の脳医学で発見されました。その原理は今でも謎です」

 殺人、性犯罪からタバコを吸うことで、脳内に強烈な幸福物質が生成される。人間ほど幸福物質が生成する生き物は、この地球上にはいない。

「で、アフリカおよび中東において近年、増加する殺人事件の犯人を捕まえ、生きたまま脳を取り出すという事業が始まっています」

 私は、その話を聞いて気持ち悪くなった。

「戸松さん、どうしたのですか。気分が悪いですよ」

「生きたまま人間の脳を取り出すのですか」

「そうです。死んだらすぐに幸福物質の質が落ちますから。生きたまま捕まえて人間の脳を取り出し、そのまま幸福物質をとりだします。なお、タバコは一生やめられないのは、脳内に強烈な幸福感をあたえるからで、タバコをやめたために、ひどいうつ病にかかった人がいるので、禁煙を強いることは人道上問題となりました」

 


 私たちが、とても幸福な生活しているが地球の裏側では悲惨な生活を送っている人たちがいる。何人かの人たちが、その環境を少しでも良くしようとしているが、一向に改善されない。むしろ絶滅するまで悪化する。

「で、政府には65歳以下の人にタバコの販売を禁止しています。タバコは覚せい剤の一つだと解ったからです」

「では、私たちは幸福な生活をして、より生活に余裕がる人たちは太陽系のいたるところに冒険に出るようになりました。それに人類の人口よりも、万能ヒューマノイドロボットやアンドロイドの方が多いです。私たちは単調な仕事から解放され、大部分が警察や警備会社、それに家宅捜査会社、資産監視会社に就職しています。昔の人から見れば極限的な管理社会です」

「あら、住めば都。むかしは自分で自分の命を絶つほど不幸な人もいました。猟奇殺人事件も多発していたし、道徳も退廃していました。で、昔の人よりもはるかに幸福ではありませんか。現代社会のどこがおかしいのですか」

「わかりません。規則が厳しすぎます」

「そうね。アフリカにいってみなさい。とても悲惨な状態だから。今でも人身売買もある。性犯罪も多発している。その性犯罪者の脳を生きたままとりだすことで生計を立てている人もいるのです」

「それでは、その事業が亡くならない限り永久に開発途上国では悲惨な状態が続くのではないでしょうか」



「全人類を統一するのは難しいです。こんな小さい惑星なのに」

「で、話が違うのですが人間は生きたまま『臨死体験』ができるのですか」

「できます。悪いことすれば脳に強い報酬を与えます。人間の脳は、どの動物よりも発達していますから、その分、脳に報酬を与えないと、生きる活力を与えません。今は性犯罪をしなくても、誘拐された人に麻酔なしで頭の皮をはがし、電極を埋め込んでわざと臨死体験をさせます。強い幸福物質が生成されるので、それを吸い取るのです。死ぬまで」

「それは残酷です」

 私は気分が悪くなった。



「ご、ごめんなさい。戸松さん、大丈夫ですか」

「だ、大丈夫です。気分がすぐれないので、保健室で休ませてください」

 私は、アフリカで人間の脳を生きたまま取り出すという話を聞いて、それがトラウマになった。

 それが15分後、まだ授業中だけど、地理の先生が保健室に入ってきた。

「戸松さん、ごめんなさい。さっきの授業のことを忘れるように、薬を持ってきたの。とても高価だけど」

 教師は生徒を傷つけてはいけない規則がある。

「まあ、今回の件で今年のボーナスがなくなってもいいから。ねえ、この薬を飲みなさい」

 水と一緒に、生徒の心が傷ついた時に飲ませる薬、それが、人間の脳から取り出した幸福物質。うまく精製しないと、強烈な依存性がある危険な薬品。他の薬品と一緒に飲む。依存性が強い。強烈な快感、幸福感を感じる。

 私は他の薬も飲む。近くには保険医と薬剤師がいる。

「ごめんね。地理の授業で変なこと言って。戸松さん。他の生徒にも悪影響ないか。緊急検査することになったの」

 私は薬を飲んで、数分後、とてお幸せな気持ちになった。自分の身体から魂が抜けたように感じ、天井に私の魂がいる。ベットで寝ている私が見える。3人の女性の先生たちが見える。

『とても幸せ。これが臨死体験なの。私は死んだの。それとも生きているの。夢とは違う。意識がはっきりしている』

 私の魂を先生たちの近くへと下ろした。足元に感触がない。立った気持ちがしない。『先生、先生』私の魂が先生たちの体をすり抜ける。先生の身体の中に入ることができる。その時、先生の心の中が読める。

『ほんとうに、今日はへんな授業をしてしまった。責任重大。他の子にトラウマを与えていなるかも。どうしよう』

 そのとき私の目の前に先生の子供時代の風景も見える。先生の目線で保健室がダブって見える。

『はじめて・・・。言葉では表現できない。これが臨死体験。でも機嫌がいい。なにもかも許せそう。私、このまま死にたくなった』

 そのとき、急に暗いトンネルを猛スピードで通り抜け、思い出が走馬灯のように巡る。

『お父さん。なんで死んだの。もし、私がそのまま死んだらどうなるの』

 周囲は真っ暗で風がない。猛スピードを感じる。そして徐々に遠くに光が見える。

『なんなの天使様』

 私は天使なのか神様なのか知らないけど、人間の人智を超えた存在を感じた。頭の中で、どこの国の言葉でもない思考のみが入った。

『あなたには人々のために、励ます義務があります』

 その声、いや考えが入ったとき、私は死んだお父さんと会った。

『お父さん。迎えに来たの』

 そのほか祖母、祖父、見知らぬ人々も来ていた。

『お父さん・・・』

 お父さんは笑顔で私をみつめた。身体に重さを感じない。遠くに川が流れている。そこをお父さんたちと渡ったら、私は、あの世に行く。

『みんなを元気つけなさい。純粋な気持ちを忘れるな。じゃあ、しばらく会えないけど、お母さんによろしく』


 気がついたとき、私は病院のベットで寝ていた。

「先生、気がつきました」

 看護師が言う。

「おはよう。どうして、ここで寝ていたの。今朝、亡くなった、お父さんとあった夢を見た」

 看護師と医師は、安堵の表情を浮かべた。


 部屋の時計を見た。2時を指している。

「今は午後2時ですか」

「いや午前2時。昨日のことは何も覚えていないだろう」

「えっ」

「よかった。地理の富士宮先生は、大きなミスを犯した。夏休みカムチャッカ半島に生徒たちと行く予定。責任を感じて」

「なんなの。いつも来ているパジャマじゃない。どうして、ここにいるの」

「なにも覚えてないのね。今は火曜日の午前2時。しばらく休みなさい」

 看護師に言われた。


 それから2時間後、窓から青い光が入った。すがすがしい朝。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ