14.邂逅
坂井良太、夏目亜紀の両名と無事に会うことが出来た海斗は、その後学園にて有紗の方から話しかけてくるのを待った。再三にわたる挑発や、無視できないような能力行使によって、彼は有紗の注意を自分に向けることが出来たという自信があった。
(……最後に話してから既に二日経っているが……そろそろ……)
この期間、海斗は目立つ行動は取らずに、事件の事や正体不明のメッセージ主について考え続けた。
(しかしながら、手がかりがほとんど掴めてないからな……。この状況を打破するには有紗から何とか話を聞かなければ駄目だ。……しかも、正体は隠したまま……)
有紗の命が狙われる理由――それが分かりさえすれば、対処の仕方や何をすればよいか自然と分かると彼は結論を出していた。
「……おい、犀崎! もうホームルームは終わったぜ」
目の前に蔵本悠が姿を現し、海斗は思考の海から現実へと引き戻される。
「……ああ、悪い。……じゃ、帰るか」
教室にいる彼のクラスメイト達も各々帰る支度をしていた。
(今日も有紗からの接触はなかったか……。急がなければ、まずいかもしれない……)
若干の焦りを抱きつつも諦めて帰ることにした彼は、荷物を持って悠とともに教室を出た。
「……犀崎……」
前を行っていた悠が、海斗に何か耳打ちするように話しかけた。
「ん? 何――」
海斗はそこまで言いかけて、悠が何に気づいたのかを理解した。
「……ごきげんよう、犀崎君。少しいいかしら?」
海斗の視界の先、廊下の窓際に有紗が待ち受けていた。彼は待ち望んでいた存在を確認し、笑みを零す。
「よう、二階堂。何か用か?」
その不敵な笑みを隠すことなく、海斗は有紗に返事をする。
彼女はその様子に少しばかり目を細めるが、すぐに無表情になり、いつも通りの態度に戻った。
「……実はね。あなたにぜひ見てもらいたいものがあるの」
その言葉を聞いた海斗は心の中で歓喜した。
「……見てもらいたいもの? 一体何?」
彼は必死に喜びを隠し、違和感がないよう注意して言葉を発する。
「さあ? ここでは教えられないわ。とりあえず、今から私の家に来てくれる?」
有紗は感情を込めずにに淡々とそう述べる。
周囲に残っていた生徒たちは、彼女のその言葉に驚いた。
「おいおい、犀崎! マジかよお前!? やったじゃねーか!?」
悠は驚愕の表情を浮かべるとともに、海斗を祝福しているようだった。
「まあな、俺のアタックによって、遂に彼女は心を開いたということさ!」
調子に乗って同調する海斗。彼は、有紗からの強烈な応酬を予想した。
しかし、意外にも有紗は海斗のその挑発に何も反応せず、ただただその様子を観察していた。
(……?)
その対応に違和感を感じる海斗だが、その原因は分からなかった。