第一話
同性同士のカップルというのは、もう少し肩身の狭い思いをするものだ、と神埼は思っていた。しかし、パートナーである緒方は、そのことにとんと鈍感で、人前でも堂々と手を繋ぐ。肩を抱く。挙げ句の果てに、歯の浮くような台詞を、流暢に神埼の目の前で披露する。社会に出て、働くまで神埼は神埼なりに緒方との関係に悩み、彼の将来に傷をつけやしないかと、真剣に考えたのだが緒方という男にとっては、あまり問題ではなかったらしい。しかも、同僚という立場になった今となっては、病院でも公認のなかで。しまいには、これ、緒方くんと一緒に食べてね、とウインクをもらうくらいだ。「あ、ありがとうございます。。?これ、なんですか?」土産物の箱の他に、可愛らしいピンクの包み袋がある。「あー、それ。みんなに配ってるの。今日は、22日、にゃんにゃんの日でしょ。神埼くんには絶対配らなきゃね。」うふっという言葉が出てくるような、花もほころぶ笑顔とはこういうものを言うのだろうと。神埼は自分の思考が少し遅れて、放心していることをぼんやりと思った。「え。。?」頑張ってね!にこりと優しい笑顔を見せると、看護婦である清水はカルテを手に病室へと言ってしまった。そのピンクの包み袋は、当然というか、なんというか、。。。アレなわけで。はぁ。。大きなため息をついて、神埼は自分の仕事部屋へと向かう。今日は朝から一つ、カウンセリングの予約が入っている。ナースセンターから自分の仕事部屋まで、長い白い廊下が続いていく。その廊下には大きな窓があり、連なっていた。今日もよい天気で、窓から光が射し込んでいる。神埼の仕事部屋は一番奥の東向きだから、なんだかんだと自然のまま、天気のまま、の部屋になる。今日はよく晴れているから明るい。「今日の患者さんは、不眠症か。。初めての人だな」看護婦から受けた動揺をしばらく心に閉まって、神埼は思考を引き締めた。




