表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

華シリーズ

散った 華

作者: 華✾華


 不快な内容があります。ご不快な方は、お戻りください。


 日向(ひゅうが) (ゆかり)は、母1人 子1人の母子家庭に育った。

母は、朝から晩まで 紫との生活の為に 懸命に働いてくれる。

必然として 紫は、家事を全般をこなし 母が、家で安らげるように心がけた。

中には、母が夜の仕事をしていることで 馬鹿にしてくる 人達もいる。

けれど 紫にとっては、母の全ての行動が 自分の為だと知っていたからこそ そんな中傷にも耐えてきた。



「本当に………紫ちゃんは、いい子よね?葵ちゃんも、すっごく 頑張っているし」紫の母 葵の友人であるエリカさんは、酎ハイを飲みながら 呟く。

「おい………お前は、もう 酔っているのか?ホテルまで戻らないといけないんだから………しっかりしろよ」エリカさんの旦那さんである ホリさんは、困ったように 言う。


そんな2人に もうすぐ 定年だというチョウさんが、微笑ましげに見つめている。

彼らは、紫が生まれる前からの知り合いらしい。


「お前らなぁ?どこにいるんだよ。2次会で飲み明かす 新郎と新婦が」


チョウさんの言葉に エリカさんとホリさんは、顔を見合わせている。


「それは、やっぱり お母さんの歌を生で聞きたかったからなんじゃないんですか?だって お母さんってば 披露宴では、プロの人達の方がいいから って 申し出を断っちゃったから」紫は、オレンジジュースを飲みながら 言う。

「確かに 葵ちゃんによる 歌の演出っていうのは、話に出ていたけど ホリさんの両親が、親戚の声楽家が出るとかで 圧力をかけられちゃったんだもんなぁ」

「ちょっと 薫君………そんなハッキリ 言っちゃダメよ」


エリカさんの弟の薫さんの言葉に 奥さんのミチルさんが、心配そうな顔をしている。


「ふん………別に 今に知ったことじゃないもの。武文の家が、格式があるってことぐらい。だから 少しぐらい 葵ちゃんで癒されたって いいでしょう?これからは、お姑さんや小姑と同居することになるんだから」


エリカさんは、そう言って 紫の母 葵に抱き着いている。

そんな彼女の様子に 葵は、苦笑しながら マイクを手にしていた。

謡いだしたのは、新しい門出を祝する オリジナルの歌。これから先の未来を示唆する 明るい道行を暗示するようなものだ。


「綺麗な歌………素敵だわ」ミチルさんは、うっとりするように 言う。


その呟きを聞いて 隣に並ぶ 薫さんは、膨れっ面になっているようだ。

まさか 歌相手に嫉妬してしまうなんて。紫は、その光景を見つめて 苦笑する。


「おいおい………薫?歌相手に 嫉妬するんじゃねぇよ」チョウさんが、呆れたように 言う。

「ほれ………紫にも、笑われてるぞ?」


チョウさんに指摘されて 紫は、顔を真っ赤にさせる。


「ところで 薫?あの青年実業家を夢見る 坊ちゃん2人は、どうしている?最近 話を聞かなくなったが」チョウさんは、思い出したように 薫さんに聞く。

「ああ………相棒が、失恋して まだ 立ち直っていないみたいだ」

「失恋………ですか?」紫は、不思議そうに 呟いた。

「そう………失恋。実は、両想いだったらしいんだけど 相手は、家の借金をかたに 結婚したらしいんだ。自分の気持ちを直接 言わずに 相手の子は、差出人不明のラブレターを送ってきたんだけどな?(とおる)は、それに気が付かず 捨てて」

「女の子の気持ちを捨てるなんて 最低ね?いくら 差出人の名前が書いてなかったからって」


話を聞いていた ミチルさんは、呆れたように 溜息をついている。

そんな彼女の様子に 薫さんは、慌てたように 弁解しているようだ。



 その後 2次会は、お開きとなって みんなは、帰っていく。

紫は、1人 風に当たりながら 自宅 アパートへの道を歩いていた。

母は、店の後片付けがある為 遅くなるらしい。

チョウさんが、家まで送ってくれると申し出てくれたけど 紫は、それを断る。

少し 1人でいたかったから。


「結婚かぁ………綺麗だったなぁ エリカさん。あたしも、好きな人と一緒になりたい」紫は、顔を赤らめながら 呟く。


見上げた 空は、綺麗な満月。

紫は、夜空を見つめながら 笑みを浮かべる。


すると 次の瞬間 後ろから バチっという 音が聞こえた。

そして 背中に衝撃を感じて 紫は、意識を失ってしまう。

しばらくして 目が覚めると 紫の前に広がる光景は、異様なものだった。

なぜなら 自分は、手足を拘束された状態で 何も身に着けていなかったから。

そして 目の前には、カメラを手にした男が………。


「いやぁぁ―――――「黙れッ!」


紫が、悲鳴を上げようとすると 頬を殴られる。

それもグーで。紫は、恐怖で 顔を引き攣らせた。

そんな様子を見て フラッシュを向ける。

紫は、何もできないまま 涙を流す。


「フフフ………君のことは、色々と調べたんだよ。君のお母さんは、未婚の母だろう?どうせ………不倫でもしたんだろうね?ボクみたいな血筋の人間が、君の相手をするのって 名誉なことなんだ。さぁ 泣きなよ。僕は、君みたいな子がなく姿を見ると 興奮するんだ」


男は、そう言って 紫に覆いかぶさってくる。紫は、声にならない 悲鳴を上げ続ける。

手足をばたつかせるが 手首や足首に 拘束具が食い込むだけで それ以上の抵抗はできない。

男は、そんな紫を見下ろして 恍惚としていた。


何日が経ったのか 紫は、時間の感覚がわからない。

閉じ込められている場所は、光の入らない場所なのだから。

紫は、日に日に 弱っていった。

そんな彼女の様子に 男は、心配せず ただ 行為だけを続ける。

紫の目には、もう 絶望しか浮かんでいない。ただ 虚ろなガラス球のようだ。


「何だ………もう 壊れたのか?まぁ 前の子よりは、続いたかな?やっぱり 母親がそういうモノなら………その娘も同じってわけか」


男は、そう言って カメラで あられもない姿の紫を写真に撮る。


「さて 今日の映像も、アップするかな」


男がカメラを手に パソコンの前に座った。

開いたサイトには、今まで、自分が写真に写してきた 映像が載せられているのだ。



その後 男は、逮捕された。

パソコンからアップされた 写真が元で。

紫は、すぐに保護されるが 酷く錯乱しており 心の傷は深かった。

誰とも面会することを望まず 泣き続けていたのだから。

そして 何より 彼女の心を更に抉ったのは、男が載せていた 映像の内容だ。

警察が見つけ出した サイトだけでなく 他サイトまでも利用していたことがわかったのだから。

しかも 男の事件は、お金で決着させられてしまう。

紫の家の経済状況を見られてしまったのだから。

けれど マスコミの口は、閉じられない。

紫のことが、どこからか漏れてしまい 酷く書きたてられることになってしまった。


「紫さぁ~ん………いるんでしょう?お話を聞かせてもらえませんかぁ?」


殺到する 取材陣の声に 紫は、自分の部屋に閉じこもるようになってしまう。

母も、心配してくれたが どうしても 顔を合わせることができない。

母が仕事に向かう時 支障をきたしてしまうことはわかっている。

けれど それを謝ることもできなかった。


「ごめんなさい お母さん」


その数日後 紫は、1枚の置手紙を残して 姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ