ミリエルの凱旋
首都に近づけば近づくほど、街が荒れているのがわかる。
焼け焦げた建物。へし折れてそのまま放置された街路樹。そして道端で蹲る子供の姿が目立つ。
荒れた国で一番にとばっちりを食うのは子供だ。
親を亡くしたのか、捨てられたのか、虚ろな目をして、ただその場に蹲ったまま動かない。
虚ろな目で蹲っているのは子供だけではない、大人の中にもただ地面にへたり込み、生きているのか死んでいるのかの判断すら付けがたい姿を晒しているものが多々見えた。
異臭がレオナルドの鼻を突く。
この荒れ果てた街が、レオナルドの治めるべき国。
このような状況を改善すべき策はいくつか考えた。しかし。それはすべてが終わってから、首都を、王城を取り戻し戴冠する、その日まで。
誓いを胸に、ただ馬を進める。
虚ろな目をした住民達は、何度目かの行軍をぼんやりと見ていた。
もはや、何かを期待する心もうせていた。
留守番のパーシヴァルはお茶を啜りながら、ことの詳細を聞いていた。
「うん、予想してたけどね」
あっさりと返り討ちにあったラダスタン大公の顛末にパーシヴァルも頭痛を感じていた。
「それにしてもあっさりと捕虜になったんだね誰も助けに来なかったの」
「それに関しましては、大公はミリエル姫様とともに連行されましたので、救助はそちらに行ったものと思われます」
「もし行ったならね」
パーシヴァルは茶碗をテーブルに置く。
あっさりとミリエルの手に落ちたラダスタン大公を再び担ぎ出そうと考える者がいるだろうか。
この世界、以外に箔付けやその他、格好付けの類がはびこっているのだ。それがわずか十五、もうじき十六になる少女にあっさりしてやられたとしたら。
無能とレッテルを貼られたも同然。そして、生かしてつれてくるなら、レオナルドに引き渡すのが目的だろう。
そして、一度そういう行動を起こしたものを生かしておくほどレオナルドも寛大な男ではない。
ミリエルからラダスタン大公の身柄を受け取り次第始末するはずだ。
そうでなければ、サヴォワの王位になどつけない。
王に逆らったものを生かしておくわけには行かないのだ。
「船で移動するなら、ミリエルはそろそろ港に着く頃だろうか」
「おそらく、潮や風しだいですがそれでも一両日中には」
「後は着いてから考えよう」
パーシヴァルには今のところそれしかできることがなかった。
船が港に着く。港周辺の町はまだ活気が残っていた。
ミリエルはするすると梯子を降りると、久しぶりに動かない地面を踏みしめていた。
「ミリエル、あんまりちょろちょろするな」
同じように梯子を降りてきたマルガリータに叱られながらも、久しぶりの大地にミリエルははしゃいでいた。
それに、空と海しか見えなかった風景が、街に変わっただけでも嬉しい。