表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
92/210

破天荒少女3

 あらかじめ捕まる者と逃げ延びて待ち伏せする者とに分かれての作戦だった。

 待ち伏せ班は、貴市ではなく兵達で組織され、騎士が、一人その指揮を取っていた。

 拘束されたラダスタン大公を掲げて合流してきた仲間に密やかな歓声と、そして呆れの混じった声が交錯した。

 ミリエルは、それらを横目に見ながら、へたり込んでいる女官に、話しかけていた。

「姫、これどうします」

 そう言って騎士の一人がラダスタン大公を指差す。

「そうね、とりあえず、いざという時のためにとっておきましょう、もし役に立たないなら適当な川にでも放り込んで厄介払いすればいいわ」

 面倒くさそうにそう言うと、ミリエルはラダスタン大公をつくづくと見る。

「そうだわ、ズボンを剥ぎ取って適当な布を腰に捲かせなさいよ、だって御不浄を使いたいって言われても、拘束を解くわけには行かないし、それなら最初から穿かせなきゃいいのよ」

「ええと、それはちょっと非道では」

 マルガリータが思いっきりひいた顔でたしなめようとする。

「でも、それじゃ、そのたびにズボンの上げ下ろしをしたいの?」

 そう言って騎士たちの顔を見た。

 全員顔を横に振った。

「じゃ、決まりね」

 ミリエルは朗らかに笑う。

 世にも情けない顔をしているラダスタン大公を見てマルガリータは思わず顔を背けた。

 恨むなら、お姫様という固有名詞だけでミリエルという少女を判断した己の愚かさを恨んでくれと心の中で祈りながら。

 そうこうしているうちにもう一段落あった。

 騎士の一人は、深い森を掻き分けて、レオナルドの待つ首都カラバールへと向かう。

 そこで事情を話し、港町の隠れ家に潜伏するミリエルへ迎えを出す算段をする。

 ミリエルたちはその気氏の後姿を手を振って見送った。

 あの騎士の道行きは、相当厳しいだろうし、ラダスタン大公の私兵達の残党もかわさねばならない。

 その背中を見送って、ミリエルたちも進み始めた。


 レオナルドは首都カラバールへと向かう準備に忙しかった。しかし、早馬の知らせを耳にすると、眉間にしわが寄った。

 今まで動かなかったラダスタン大公が、今所有する土地を離れているというのだ。

 ラキスタン大公がこの十年動いたことはない。常に中立の立場に立っていた。しかし、中立ということはいつどちらに転ぶかわからないということでもある。

 ラキスタン大公が、どちらかの勝者に付こうと考えているならよし、しかし両者共倒れを狙って打って出てくる可能性も否定できない。

 レオナルドは報告書を握りつぶしながら、その可能性を探った。

「まさか、ミリエルを狙ってるってことはないよね」

 脇からパーシヴァルがそんなことを言い出した。

「どうも妙なデマが飛び交っているらしいんだ。ミリエルを得ればサヴォワの王座に近づけるって言う。いくらなんでもそんな筈無いんだけどねえ」

 パーシヴァルは最初その話を聞いたとき、笑ってしまった。

 ミリエル自身はサヴォワ王家の血を一滴も受け継いでいない。

 ミリエルに流れているのは、主にリンツァー王家と、サン・シモン王家が少々。お姫様なら何だっていい訳じゃないのにねと。

 しかし、それなりに根拠があってそんな噂が流れているのだとすれば。

 レオナルドの血の気が引いていった。



 レオナルドは書くたびに可哀相になっていきます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ