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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
91/210

破天荒少女2

 兵士は物陰に蹲り、小刻みに震えている少女と、それに立つよう小声で叱咤している大柄な女の二人連れを見つけた。

 着ているものは二人とも粗末だが、少女の年齢は、件の姫君と一致する。

 背後にいた仲間に合図を出し、二人の身柄を押さえさせた。

 大柄な女が短剣を持ち出し、抵抗の様子を見せたが、軽くはたき倒した。

 二人の女を連行して、自分達の主のところに連れて行く。

 すでに何人かの女が、主のところに連れられていた。その傍に縛られた騎士らしいものも蹲っている。

 ほとんどが怯え、すすり泣いている。

 主は大柄な女はさっさと無視した。歳も合わず、さして美しくなかったからだ。

 そして、少女の顔を見たとたん歓喜にのぼせ上がった。

「この少女だ、間違いない、ミリエルだ」

 おさげに余れた髪は淡い金色。翡翠のように美しい緑の瞳。整った目鼻立ち。

 それをつぶさに観察し、嬉々とし手少女の腕を掴む。

「ついに手に入れたぞ、切り札を」

 その瞬間まで、彼は自分の勝利を疑いはしなかっただろう。

「私を捕らえた貴方のお名前を聞いてよろしくて」

 少女が、不意に口を開いた。

 やや甲高い、しかし不快ではない声。

 壮年の、やや恰幅のいい男は、年齢のわりにふさふさとした黒髪を気取ったしぐさで書き上げた。

「私は、ラダスタン大公だ。そしてそなたを娶り、この国の王になる」

 はたして、この男の言い分をリンツァー国王は認めるだろうかとミリエルは思った。

 そもそもレオナルドに肩入れしたのだってレオナルドが、リンツァー国王と血のつながりがあるからだ。血のつながりがあっても、リンツァーで育ったわけではないミリエルとの縁組が、リンツァー国王にどの程度影響力があるか。

 しかし、考えるのはここまで、ミリエルは、男に抱き寄せられるままその胸に飛び込み。そしてするりと抜け出した。

 脇から背後に回ったミリエルはその太い首に手を回し、一気に締め上げた。

 頚動脈を狙えば、ものの数秒で落とすことが可能だ。

 一人を除いて、何が起こったか理解できないでいた。

 その一人は、スカートの下から自分の愛用の剣を抜くと、ミリエルの腕の中でくずおれた男の首に突きつける。

「全員、動くな」

 マルガリータの声があたりに響いた。

 ミリエルが一人の女を睨むと、その女は慌てて騎士の拘束を解き始めた。

 ミリエルがポケットから針金を取り出すと、男、ラキスタン大公の両の親指を後ろ手に束ねて拘束する。

 そして腰の剣を奪うと、拘束を解かれた騎士の一人に投げてやった。

 剣を取った男は、適当なところにいる兵士をなぎ倒して武器を奪う。

 それを仲間に渡し、その場にいた騎士はすべて武装した。

「では、脱出しましょうか」

 ミリエルの手から、ラダスタン大公の身柄を受け取った騎士に、ミリエルは笑って語りかけた。

「御意」

 ミリエルに一礼すると、騎士は、ミリエルと、女官達をまとめて、周囲を仲間の騎士で囲んだ。

「動けば、ラダスタン大公の命はない」

 その言葉に、周囲の兵達は金縛りにあったように動かない。

 主を死なせれば責任問題だ。そのため誰もその大一歩を進めることができないでいた。

 矢を射掛けようにも、大公の大柄な身体を盾にして、死ぬ時は道連れにする気満々だ。

 なすすべもなく、進んでいくその姿を見送るしかできなかった。




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