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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
90/210

破天荒少女

 あからさまに間違ったことを言い出さない限り、騎士達はミリエルに従うというところで事態は手打ちになった。

 ミリエルは、食料を日持ちがしてすぐ食べられるものは小分けにして、一人一人に配るよう指示を出した。分散して逃げることを考えてのことだ。

 その判断に騎士たちは異を示さなかった。基本的にミリエルの言っていることは、事態に即している。

 もっとも、何をしていいかわからずおろおろと泣きつくのが普通の姫君なので、こうした常識外れっぷりには戸惑うが。

 果たしてどちらがよりましなのだろうと考えてしまう。

 ミリエルは遅くとも見ないよりましと、周辺地図を凝視している。

「分散して逃げる場合と、集団で中央突破、どちらでもいいように指示を出しているけどどちらが現実的かしら」

 ミリエルの問いに騎士達は、それぞれ顔を見合わせる。

「姫君を確実に逃がすならば分散して逃げたほうが得策と存じます」

 ミリエルは無言だ。

「姫君、この場合、最悪の事態は姫君が敵の手に落ちることだと考えてください。たとえ何人が逃げられたとしても姫君が逃げられなかったとしたらそれは我々の敗北なのです」

「つまり、敵を殲滅するより、確実な逃亡こそ今求められていることか」

 殲滅させるつもりがあったんだろうか。ちらりと浮かんだその考えを横に追いやり騎士は続けた。

「ですから、分散して、気の毒ですが、何人かは囮となることになります」

 囮となった者が捕まれば、命の保障はない、それを込みで彼はミリエルに説いた。

「姫君のお姿が、どこにあるかわからないようにと考えれば、そうするしかありません」

「でも、この場合、有効かしら」

 ミリエルが地図の上に指を走らせながら呟く。

「逃亡するとしても、この場所の場合、逃げる方向は決まっているのよ」

 ミリエルは、近くの街へと続く一本の道を指先でなぞる。

「私を確実に捕らえたかったならば、たとえここで行方をくらますことができたとしても、道のどこかで待ち伏せしていれば確実に押さえられるということ」

 たとえ、別荘から放射状に逃げていったんはまいたとしても、いずれ街道に戻らざるをえない。その街道に待ち伏せを受けたら。

 ミリエルの指摘は痛いところを突いた。

 元々その場所に逃げ込むことを前提としての布陣だと、見る者が見ればすぐにわかる。

「ならばどうする?」

「私、捕まるわ」

 その時ミリエルがにっこりと笑って、そういったその瞬間、その場の全員の意思はまったく同じ言葉を脳裏に浮かべていた。

「さっきまで何を聞いていたんだこの娘は」

 ニコニコと笑いながらミリエルは言った。

「たとえ私を捕まえても、私を人質として活用できなければ同じことでしょう?」

 誰もミリエルの言っている意味を理解できなかった。というよりしたくなかった。


 ミリエルとマルガリータは夜の闇に紛れて、別荘を出た。同じように、騎士と、女官たち、そして使用人達が少し筒、周辺の茂みに潜り込んでいく。

「ミリエル、そううまくいくだろうか」

 マルガリータにミリエルは笑って答えた。

「うまくいかせるの、他に方法はないと思うし」

 たとえあってもこの少女は一番過激な方法を迷わず選ぶのではないだろうか。

 遅ればせながら、マルガリータはようやくミリエルの性格を掴み始めていた。

 ミリエルは、騎士の衣装からもう一度下級女官の衣服に着替えさせられたマルガリータに進むよう促す。

 二人は足音を殺しながら歩き始めた。


 ミリエル力技で押し切りました。次はレオナルドたちのほうも出てくるんじゃないかなと思いますが。

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