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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
9/210

首都グランデの作戦

 新章突入です。ミリエルも少し成長しました。

 あまり出なかったおじいちゃんとお母さんも出てきます。

 枯葉散る秋、ミリエルは竪琴の前で、物思いに沈んでいた。

 それは最近、この界隈が物騒になったと皆が嘆いていること。

 サン・シモンの首都、グランデ、ここは有数の商業都市だ。西大陸すべてに商業ルートが張り巡らされ、旅人も多い。

 そのため、本部のあるグランデの治安は最も安全であるべきとサフラン商工会はそのための努力を惜しまなかった。

 不審者はサフラン商工会が全力で撃破。不埒者は殲滅。その強硬姿勢はけしてゆるがせないと誰もが思い続けていた。

 しかし、最近富裕層を狙った強盗団が出没しているのだ。

 狙われるのは大きな商売をしている大店の家。それも大きな取引を成功させたその後に決まって襲われている。

 サフラン商工会としてもこんな不始末は許されないと、全商店街が、殺気だっている。

 ミリエルの家は、細々とした雑貨屋なので、そんなことは人事と言えば人事なのだが、そうも言ってられない事情がある。

 何故なら、ミリエルの祖父は、特殊部隊総司令官だからだ。それどころか、母のアマンダは、機動隊分隊長だ。つまり、サフラン商工会の治安を任されていると言ってもいい。ミリエルのように平の特殊部隊員とはわけが違うのだ。

 特殊部隊の一員となってから一年が過ぎ、祖父と母の重責をひしひしと感じるようになっていた。

「ミリエル、もうすぐ鎮魂祭ですよ、何をよそ見しているんです」

 女神官様が怖い顔をしてミリエルを睨む。

 慌ててミリエルは楽譜を広げた。

 そう、もうすぐ鎮魂慰霊祭だ。かつて戦乱の時代、犠牲となったものたちの鎮魂のため音楽を捧げる。その昔は、建国の時代の犠牲者だったらしいが、新しいものに切り替わったらしい。

 様々な階級のサン・シモンのうら若き独身男女が、それぞれに楽曲を演奏し、合唱する。

 そのための練習の時間に、よそごとを考えるのは非礼と女神官の叱責がとんだのだ。

 ミリエルは、竪琴の前に坐ると、最初の一音をかき鳴らした。


 元々ミリエルの弾けるのはリュートだった。しかし、リュートは弾ける少女が多いので、やむなく竪琴に変更させられた。

 初歩の初歩から練習させられているので、ミリエルは居残りも珍しくなかった。

 もちろん練習は嫌いではないのだが、座りっ放しで弦をはじくだけというのは体力が有り余っているミリエルには少々辛い

 そのためついほかの事を考えてしまうのだ。

 作曲家の先生も、かなり厳しいので、気の弱い子など萎縮して泣き出してしまうことも多い。

 何故ならば、楽曲のでき次第で、その作曲家の実力が問われるからだ。勢い指導も厳しくなる。

 ミリエルの習っている先生はその辺のぎらぎらしたところが少ないのでまだいいが、ミリエルにとって耐え難い悪癖があった。

 彼は幽霊が見えると主張する人だったのだ。

 休憩時間の合間に、自分が体験した様々な怪奇現象の話を嬉々として語るので、その手の話が大っ嫌いなミリエルにとって、もはや練習時間は拷問としか言いようがない。

 それがますます他の考え事に走る要因となっている。

 その上、今回彼が提供したオリジナル曲というのが、かつて彼が目撃した幽霊譚を下敷きにしたものだと聴かされて、ますますやる気が萎える。

 それでも責任感だけで、ミリエルは練習に励んでいた。

 それでも手元がおろそかになり、叱られそうになったときとっさに窓の外に誰かいると叫んでしまった。

 自分でもしまったと思ったが、一度口にしたことは変えられない。

 女神官が窓を見ると。本当に若い男が窓の向こうにいた。

 くるくるした巻き毛のやや細身の男だった。

 言ったミリエルが驚いた。何故ならここは二階の部屋だ。

 変態が出たと大騒ぎになった。



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