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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
82/210

始まりのときから

前話でラストをだいぶ書き換えました。

 ミリエルは廊下を走らないぎりぎりのスピードで歩いていた。

 その時、ミリエルの前を急に塞いだ者がいた。

「悪いなお嬢ちゃん」

 ぶつかる寸前で止まったミリエルはクライストの顔を見上げた。

「あ、クライストさん、何か御用ですか」

「えらくめかしこんでるな、どこで調達したんだ」

言われて、ミリエルは、化粧を落としていなかったことに気付く。

「え、ええと、お姉さんにしてもらったんです」

 適当なでっち上げをほざいてごまかし、その場を離れようとする。

「じゃあ、その指輪は?」

 ミリエルの薬指に嵌まった、婚約指輪をさした。

「悪いな、お姫様、黙って付いてきてくれないか」

 ミリエルの首筋に短剣が突きつけられた。

 ミリエルの頬が引き締まる。

「裏切り?」

「いいや違う、元々お姫様の命が所望でね」

 クライストは刃よりも鋭く笑った。


 ミリエルがつれてこられたのは、屋敷の隅、潅木が茂って人目を避けられる場所だった。

 こっそり賊が潜むにはいい場所だと、ミリエルは人事のように思う。

「まさか女中に化けるとは、たいしたお姫様だな」

 クライストはさも楽しそうに笑う。

「ミリエル姫がやってくるっていうからこの屋敷に潜んでたってのに、やってきたのは偽者、まったくついてないと思ったら、一緒に来たのが本物とは」

 ミリエルはとっさに鞄を後ろでの持つと、自分の身体で隠しながら、中身を取り出す。

 モーニングスターは取り出せなかった。取り出せたのは二つの皮袋。

「もしかして、例の刺し殺されたって言うのは」

「ああ、俺がやった、あんなドジ、生かしておけないだろう、俺まで危うくなるからな」

 ミリエルは少しでも話を引き伸ばそうとした。

「お姫様、もしかして助けを待つために引き伸ばそうとしてないか」

 クライストは剣を構える。

 ミリエルは、右手に二つの皮袋を隠し持ちながら、黒鞄をクライストに向かって叩きつけた。

 その勢いのまま、身体を離す。

 そして、皮袋の中身、ガラス玉を取り出す。

 指弾で打ち出す。鉄でできた玉よりも殺傷力はない、しかし、別の意味でたちが悪い。

 罅の入ったガラスでできているので、当たれば砕ける。

 ガラスの粉が目に入れば、しばらく視力が効かなくなる。

 三発打って当たったのは一発だけ、それも服の上なのでさほどのダメージを負わせられなかった。

「やっぱり、サン・シモンの狂犬上がりか」

 クライストが、忌々しげにうなる。

「それは最初から怪しんでいたぜ、お姫様」

 ミリエルは無言で、もう一つの袋を開ける。

 それは、糸で繋がれたガラス玉に見えた。ミリエルはそれを放った。

 クライストが、とっさにかわした時、すぐ傍の枝が断ち切られた。

 糸は、ただの糸ではなく髪のように細い鋼線。その切れ味は、研ぎ澄まされた剣に勝る。

「サン・シモンの狂犬って言うのは、本当に」

 ミリエルは、糸に付随するガラス玉をたぐって糸を操る。

 ガラス玉もいとも非常に見分けにくく。またミリエルもすばやい身のこなしで剣の射程には決して入らない。

 ついに糸がクライストの首に絡まった。

「これで、俺の首はスポーンと飛ぶわけか」

「それは無理よ、か弱い乙女だから、たぶん骨で止まる」

 クライストはいきなり動いた。その状態でクライストが動くなどミリエルは予想できず、一瞬動きが止まる。

 クライストは鋼線を断ち切った。

 


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