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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
80/210

化けの皮はがし3


 気まずい沈黙が辺りを包んだ。

 ミリエルは、すでにこの館の女中の顔をすべて覚えてしまっている。だから、この雀斑の少女が、レオナルドに随行してきた使用人の一人だということはわかっていた。

 その少女が、ミリエルを偽者だという。

 このような展開は予想していなかったのかパーシヴァルもしばらく呆けていた。

「とりあえず、この娘を外に」

 そう言って外にいたマーズ将軍の部下とマルガリータを呼ぶ。

 入ってきたマルガリータは、先ほど、忘れ物を届けたいといって中に強引に入った少女が、ミリエルを指差して、わめき散らしている。

「信じてください、この人はお姫様なんかじゃないんです」

 そう言って少女はただ泣き崩れている。

 マルガリータは、無言で少女の腕を掴んだ。

「とにかく、後で話を聞く、今はそういうときじゃないだろう」

 そう言って少女を宥めようとする。

 しかし、背後で更に不穏な言動を取り始めるものがいた。

「ちょっと待て、もしかしてこの娘、お前がメイドだといって連れ込んだ娘じゃないか」

 領主が、マルガリータを不穏な目で睨んでいた。

 マルガリータの背筋に冷たい汗が伝った。

 これはまずい、こちらまで飛び火した。

 そう悟ったマルガリータはミリエルを見たが、両手を組んでフルフルと首を振っている。

 可愛らしい仕種だが、それに和んでいる暇はない。

 王太子を見ると、額を覆って頭を抱えている。そのまま何事か考え込んでいるようだが、いまだ行動を起こさないところを見ると妙案はまだ浮かんではいないようだ。

 その時、思いも寄らないところから事態が動いた。

 いつの間にか、椅子に坐って微動だにしなかった。今の今まで忘れられていた女が立ち上がった。

 そしてゆるゆるとミリエルのいる場所まで歩いていく。

 そしてミリエルの前に跪いた。

「この方が、本物のミリエル姫だと思います」

 静かな声だった。

「父から、ミリエル姫に成りすませと命じられたとき、私は窓から飛び降りて自害すべきでした。それを命惜しさに成り行きに任せ、このような事態を引起した罪は償いようのないこと。これより神妙に裁きを受けます」

 そう言って両手を組んでうなだれる。

「何を言っている、コンスタンシア、どんな根拠があって、メイドをしていた女が本物だと」

 余りのことに、自分の娘の本名を言ってしまったことにも気付いていない。

 コンスタンシアは、途切れ途切れにミリエルに訴える。

「貴女は私がリンツァーの血を受けていないと告白したとき、そんなことは知っていると答えられました。それを確信できるのは誰か、それは本物のミリエル姫だからではないかとようやく今思い当たりました」

 ミリエルとしても次の出方がわからない。まさかコンスタンシアがこんな思い切った行動に出るとは完全に予想外だった。

 出方がわからず困惑しているのはミリエルだけではなかった。

 王太子レオナルドも、パーシヴァルもサザウィー男爵も次の打つ手が思いつかない状態だ。

「とりあえず、関係者の証言が出たので、サザウィー男爵を拘束しましょう」

 結局動いたのは、廊下で様子を伺っていたマーズ将軍の副官、デニスだった。

 騎士達がさくさくサザウィー男爵を拘束していくその光景を一同毒気の抜けた顔で見守っていた。


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