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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
74/210

レオナルドが間に合わなかったわけ

何故か昨日投稿できませんでした

 レオナルドは、一度ミリエル姫の部屋を辞去した後、鬱陶しい従兄弟を適当な理由をつけて遠ざけた。

 そして、部下の一人に一度ミリエル姫の様子を見に行かせた。しかしその騎士が、そこにたどり着いたときにはミリエルは、庭園に出た後だった。

 その知らせを受けて、紋章付きの王太子の上着を脱ぎ捨て、それから部下の上着を強制的に借り庭園に出だ。しかし、その時にはすでにすべてが終わっていた。

 ミリエルの危機に間に合わなかったのだ。

 ミリエルは、その時すでに実力で、それらを粉砕していた。

 もし、自分が駆けつけて、ミリエルを救い出せていたら。

 その仮定は、レオナルドのプライドに少々罅を入れた。

 ミリエルは大きく目を見開いて、レオナルドを見ている。

 そして、そんな二人を、硬直状態でマーズ将軍の部下達が凝視していた。

「ミリエル、どうしてここにいた?」

「ええと、ここが王太子に味方する貴族の館だって聞いたから、そのうちこの館を訪れることもあるかなって思って」

 ミリエルがたどたどしく答えた。

「何故名乗らなかった?」

「そんなの、信じてもらえるわけないじゃない。証拠は、この指輪だけなんだし」

 そう言って首に下げていた指輪を取り出す。

「こんなもの、そうそう証拠として採用されないって、どこから盗んできたって疑われて取り上げられるのが関の山だと思ったし」

 そこまで行ってミリエルはそっぽを向く。

「それにすぐ気が付いてくれなかったみたいだし」

 ミリエルが横目でレオナルドを睨んだ。

「すぐに名乗り出なかったのは貴方でしょう」

「だって気付いてくれなかったじゃない」

「気付いたからここにいるんでしょう」

 二人はしばらくにらみ合った。

「それで、戻ってくる気はあるのか」

「あります」

 ミリエルは搾り出すように答えた。

「でもあたしじゃなくてもいいじゃない」

「ミリエル、君は何を言っているのかな」

「あっさり信じたよね、あの偽者に随分とお熱だったじゃない」

 言われてレオナルドは呆れた。どうやらミリエルは、あのミリエル姫に対する対応が気に食わなかったらしい。

「あれは純粋に、単なる牽制ですよ」

「牽制?」

「向こうも私があれを本物だと信じているとは思ってもいないでしょう。あえて本物だという態度を示すことで、尻尾を出すのを待っているんです」

「尻尾って言ったって」

 コンスタンシアはもう限界だろう。尻尾を出すも何も、彼女本人の芝居、というか演技というかそれは、ミリエルの見たところとうに破綻している。

「つまり、あの人をミリエル姫に仕立て上げた誰かをあぶりだしたいの?」

 ミリエルの答えに、レオナルドは満足げに頷く。

「あれを偽者と断じて裁くのは簡単です。しかし、それでは真の黒幕まで辿り着けない。だからしばらく泳がせます」

 ミリエルもすぐに納得した。

 コンスタンシアはただ利用されているだけだ。それを立証しなければならない。

「わかった、それじゃあたし、しばらくあの人のところで女中として詰めてるね」

「ミリエル、私は貴女にそんな密偵のようなことをさせるわけには行かないのですよ」

「急に貴方があたしを引き取るほうが不自然よ、それにね、切り札は隠し持つものよ」

 ミリエルは悪戯っぽく笑う。

「わかりました、危険な真似はしないように。それと、定期報告の必要がありますね、適当な理由をでっち上げなければ」

「それはそっちに任すわ」

 レオナルドは、ミリエルからデニスと、倒れた兵士達を見据えた。

「今聞いた話は、他言無用だ、それと順番だったな」

 デニスは、小さく首を振った。

「聞きたいことは聞いてしまいましたので、ですが、マーズ将軍に報告しないわけにはいきませんが」

「それは私から話しておく」

 レオナルドの言葉に、ミリエルもこくこくと頷いた。

「それでは、ミリエルこれから妻として戻ってきてくださるんですよね」

 そう言ってミリエルを引き寄せた。

 レオナルドは顔を近づけ、唇が触れた。

「これは手付けです」

 ミリエルは脱兎と化して逃げさった。





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