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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
7/210

サン・シモンの大祭 5

いつになったら本題に入るのかじれていらっしゃいますか。もう一つ、ミリエルが小隊長に任命される話が終われば本題です。もうしばらくお待ちください。

 闘技場に、背の高い騎士と、小柄な少女が相対する。

 拡声器を握った解説員が力強く叫んだ。

『王室直属第一騎士団所属・ジェフリー・モーガン!! 対するはサフラン商工会特殊部隊、期待の新人水の天使!!』

 場内からどよめきが走り、物騒な歓声が上がる。

『殺せ!!殺せ!!』

水の天使と言う紹介は、ミリエルが平民だからだ。平民対貴族階級ともなると。いろいろと軋轢が生じかねない。そのため本名を名乗らないのが習慣となっているそして特殊部隊や、機動隊員となったものは、隊名と呼ばれるコードネームを与えられる。ミリエルは水の天使。神殿で水の天使の肖像といえば首なしの竜の胴体を踏みにじり、竜の生首を持ち上げたポーズで描かれるのがほとんどだ。

 かつて川の怪物を天から舞い降りた天子が怪物を八つ裂きにして民衆を救ったと言われる伝説から来ている。

「隊長殿、このカードは隊長殿が独断で決めたと言うのは本当ですか」

 彼は自分を非難する目で見ながらそう言った。

「また奴の横槍ですか。確実に第一回戦を勝てる相手をよこせと、だからといってあんな少女を」

 騎士団員は基本的に、貴族出身だが、第一騎士団は、特に親が要職についているだの、領地が豊かだの、珍しい産物があるだの、娘が王族に嫁いだだの、いろいろと潤っている連中が多い。と言うよりそういう連中だけで構成されていると言ってもいい。

 その中でもジェフリー・モーガンは特に思い上がっているとみなされている。

 騎士団の仲でも彼に不愉快な思いをさせられたものは多い。

 だから彼が小柄な少女と戦うことになったのも、そのさいの汚い手の一環と誰もが思った。

 彼はその勘違いを正してやる。

「頼まれて仕組んだのは本当だ、ただし、あのお嬢ちゃんにな」

 そう言って女子控え室で鼻つまみ騎士が行った痴漢騒動の顛末を話してやる。

「俺は思わず土下座した」

「そうでしょうね」

 空気が思わず鎮痛になる。

「あのお嬢ちゃんは手ずから奴を血祭りに上げてやりたいんだと」

 若い騎士は思わず息を呑んだ。

「何を考えているんですあの少女は、勝てるわけないでしょう」

「そっちこそ聞いてなかったのか、あのお嬢ちゃんは特殊部隊だ。騎士団の誰もが突破したことのない最終関門通過者だ」

 特殊部隊入隊試験はサン・シモン一苛酷だといわれている。

 騎士団の何人かが腕試しに受けたが、合格者は皆無。その苛酷な試験をあの若さで通過したのだ。

「あのお嬢ちゃんはな、大猪を一撃でしとめたこともあるんだ」

「冗談でしょう」

「間違いない、ご馳走してもらったからな」

「何してんですかあんたは」

 その時試合開始の合図がなされた。

 自分に向かってくる相手に無造作にミリエルは鉄球を投げた。

 それは正確に相手の爪先に落ちた。

「$$$%&#~~-」

 どうやって発声するのか不可解な悲鳴を上げてその場に転がる。

「あれは痛いな」

「痛いですね」

 そして少女の軽やかな笑い声が響いた。

「何、これ、弱すぎ」

 ごろごろと闘技場を転げる相手を思いっきり嘲る。

「手加減してあげたのよ。弱そうだったから、なのに一瞬で決まるのね」

 少女は親指を立てて拳を作りそれを下に向けた。

「雑魚があたしの視界を汚すんじゃねえ」

 最後にどすの聞いた叫びに、観客は沸いた。

『水の天子、強い。一瞬です、一瞬ですべてが決まりました』

「情け容赦ないな」

「あいつ、向こう一年は、ちっちゃな女の子に瞬殺されたって後ろ指差されて笑われますね」

 いっそ死んだほうがましな生き恥だと彼らは思った。

 


サン・シモンの大祭偏は次で終わりです。でも、これ伏線になっています。

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