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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
6/210

サン・シモンの大祭 4

 本祭がとりおこなわれようとしている本部を前に、これから起こる惨劇に、ミリエルは小さな胸を痛めていた。

「お嬢ちゃん、何してるんだ」

 そう声をかけてきたのは見覚えのある騎士だった。特殊部隊入団祝いに、なんとなく混じっていた男だ。

「おじさん、久しぶり」

 その言葉に、思わず近くの木に張り付いて震えていたが、何とか気を取り直したようだった。

「できればお兄さんと呼んでほしいが、何があった」

 ミリエルは、先ほどの女子控え室であったことを自分のわかる限り詳しく説明した。

 男は再び近くの木にかじりついて落ち込んでしまった。木の皮に両手で爪を立てている。

「すまん、たぶん俺の部隊の奴じゃないが、本当にすまん」

 木の皮から身体を離すと、そのまま地面に張り付いて謝った。

「おじさんが、謝ることじゃないよ、おじさんそこにいなかったし」

「できれば、この立場で言うことじゃないが、お兄ちゃんでお願いしたかったんだが、とにかく謝らせてくれ、それと、なんかお願いがあるか?」

「一つだけ教えて。エチエンヌのお兄ちゃん、マルセルって言うんだけど、殺しても事故扱いになる?」

「この場合無理だ。そんなことがあって、その後偶然行きあって死んじゃったで通るなら、この国に司法など存在しない」

「あたしもそんな気がしたの」

 ミリエルは溜息をついた。

 そしてその時妙案を思いつく。ミリエルは地面に張り付いている後頭部に手をかけ強引に顔を上げさせた。

「あのね、順番を操作できる、おじさん」

「順番ね、第一なら可能だ」

「たぶん自分の部隊じゃないって言ったね、そういうことやりそうな人知ってるの?」

「心当たりはある、と言うか、そこまでやる奴と言ったらあいつぐらいだってほとんどの連中が言うだろう」

 なるほど、とミリエルは思う。どうやら仲間の騎士たちの間でも有名な鼻つまみ者らしい。無理もない。あんなのが仲間だったらこの世は闇だ。

「じゃ、耳貸してね」

 そう言ってミリエルは作戦をこっそり囁いた。


 サン・シモン最大の祭典。無差別大武道大会は、華やかに開催された。

 棒術や徒手空拳の試合そしてようやくその中でも目玉と言われる。殺傷可能武器使用試合がとり行われた。

 騎士団は大概剣か槍だが、特殊部隊員は多彩な凶器を繰り出すので、大変見ごたえがあるといわれている。

 第一試合、一番手、先ほどの乱入男、対するは愛用の武器を携えたミリエル。

 ミリエルの愛用の武器、それは、赤ん坊の頭ほどもある鉄球二つが、長い、ミリエルの背丈よりも長い鎖でつながれている。

 本来は、鋭利なとげが一面に植えられているのだが、か弱い乙女が使用するため、つるりと丸い仕上がりになっている。

 鎖が長いのも、か弱い乙女の腕力でも遠心力で十分な殺傷力を得られるように作られているためだ。

 モーニングスター。それがミリエルの愛器の名前だ。



 タイトルの暁の星、これた確か田中芳樹の架空ヨーロッパを舞台にした小説の一説。暁の星という優雅な名を持つ無骨な武器から来ています。

 それがモーニングスターだと言うことに気付いたのは数年後。遅い。

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