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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
59/210

ミリエルの憂鬱2


 マルガリータはミリエルから内通者が殺された話を聞き表情を厳しくした。

 傭兵達の数は少ない。その中に更に内通者がいるとなれば、味方はもっと少ないと考えるべきだ。

 この館に駐在している兵士も数は知れているし、マルガリータの見るところ錬度も足りていない。

 ミリエルも深刻な顔をしている。

「ミリエル、今からでも遅くないかもしれない。今のうちにどこかに逃げろ」

 ミリエルは首を横に振る。

「ミリエル、私に義理立てしている場合じゃない。それに今の状況ではお前までかばえる自信がないんだ」

「自分の身は自分で守ります」

 ミリエルは硬い声で答えた。

 ミリエルはミリエルで悩んでいた。ウォーレスあたりに、仲介してもらって自分も傭兵として登録してもらおうかと。

 しかしミリエルは自分の見た目をよくわかっていた。

 ウォーレスすら傭兵にとても見えない外見だが、ミリエルは更に上をいく。

 ミリエルを見て傭兵だと気付いた人間はいままで誰もいなかった。それがミリエルの強みだと思っていた。

 しかし、今ミリエルは目の前のマルガリータを説得するすべはない。だが今危険でもここを離れるわけには行かない。

 それはレオナルドを待つため。

 決して望んで婚約したわけではない婚約者。会おうと会うまいと何の痛痒も覚えないはず。自分は意地になっているのだろうか。

 一度決めたことだから。一度会ってから戻るかどうか決めると。

 さっさと決めてしまいたいからだろうか、いつまでも宙ぶらりんなのが気に食わなくて。

「マルガリータ様のためだけではありません、ここにいなければならない理由があるのです」

「その理由とは」

「今は言えません。ですが時がきたら必ずお話いたします」

 マルガリータは溜息をついた。

「それなら、私も死ねないな。ぜひともその話を聞きたいから」

 マルガリータがまるで冗談のように語った言葉、しかし、今の状況ではそれが冗談で終わる可能性はきわめて低い。

「姫君のところへ行く時間ですね」

 ミリエルが時計を指差す。

 二人は連れ立って、この館で一番大きな客間に向かう。

 

 コンスタンシアは困惑していた。新たに護衛として傍に仕えることになった女性騎士と、その傍らの少女を前にして。

 あの時、とっさに救いを求めたが、今、目の前に控えている少女は、本当に小さな、おそらくコンスタンシアより年下の少女だ。

 その傍らにいるのは、黒髪と黒い瞳の騎士。背も高く、肩幅もがっしりとしてとても女性とは思えない。

「マルガリータ・ツェレと申します、この隣にいるのは私のメイドです」

 少女はぺこりと頭を下げる。

「ミリエル・モニークと申します」

 コンスタンシアは、思わず立ち上がりそうになった。

「畏れ多くもミリエル姫と同名、私のことはミリーとでも及びください」

 少女がにっこりと笑う。コンスタンシアは、ベールの奥で震えることしかできなかった。



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