ミリエルメイドさんになる 3
ついに五十話です、思ったより速いペースです。それでまだミリエルとレオナルドは再会してません。どこまで続くんでしょうね・
女中頭は主に命じられた仕事をしていた。新しく入ったと言う少女の私物を探ることだ。
少女の持ち物は黒い鞄が一つ、そして外套が一つ。
鞄の中に入っていたのは、袋に詰め分けられた保存食と思われるもの。そして、同じく袋の中に詰められたガラス玉。丸いものと楕円形のものが一つずつ。
替えの下着類が二枚。それを探っているうちに違和感に気付いた。
一枚は何の変哲もない飾り気のない普通の下着、だがもう一枚は、明らかに貴族階級の人間御用達の高級品だ。多少よれている気がするが、胸元に施された精緻な刺繍は、それが天井知らずの値段が付くことを何よりも雄弁に語っている。
すそに縫いこまれた繊細なレースの手触りは間違いなく絹。先ほど開けた袋の装身具かと思ったガラス玉と合わせて考えると、違和感はいや増す。
他には鞘に入ったナイフが二振り、しかし、それだけで怪しいと言い切れない。
以前にもナイフを持っていた娘がいたが、野外行動をとるなら当然の準備だと言い切られてしまった。
とにかく報告を、探ったものは綺麗に片付けて彼女はその部屋を後にした。
ミリエルは、拭き掃除を続けながら居心地の悪さを感じていた。はいつくばって拭き掃除をしていると、スカートの下に隠したモーニングスターがごろごろ転がりそうになるのだ。
明日からはモーニングスターは部屋の、ベッドの下あたりに隠しておこう。ミリエルはそう決心した。
その時、部屋を女中頭が漁っていたなどと、夢にも思っていないミリエルだった。
掃除が終われば食事を取る。食堂に行って、二人分の朝食をもらってマルガリータの部屋に向かう。
マルガリータの部屋は、ミリエルの部屋二つ分くらいの広さだった。
ミリエルにあてがわれた部屋が狭すぎるので、比較にはならないが、あまり優遇された扱いではないと思った。
マルガリータはすでに着替えており、ベッドの脇に、椅子と腰掛と小さなテーブルが置いてある。その上に料理を載せて、マルガリータは椅子に、ミリエルは腰掛に坐る。そして食膳の祈りを呟いたあと、スプーンを手に取った。
ブイヨンでみじん切りにした野菜と米を煮た料理だった朝食としては軽くていい。ミリエルは朝食前の重労働で消費した分を取り戻そうと、旺盛な食欲を見せた。
「マルガリータ様、これからの予定は何ですか?」
「とりあえず、鍛錬だな、他にも傭兵希望者がいるらしい。その連中とやり合って腕を証明しろと言われた」
マルガリータもスプーンを動かす合間に、答えるとあとは無言で食事に没頭する。
ミリエルが先に食べ終えると、寝乱れたベッドに向かい早速ベッドメイキングを始めた。
手際よくシーツを整えるミリエルの手元を物珍しそうに見ていたマルガリータは、我に返った。
「明日からそれは自分でやる」
「よろしいのですか?」
「見ていて、大体覚えた」
やると見るのは違うんだけどとミリエルは思ったがそれは口に出さないことにした。
「そうですか、がんばってください」
ただそう励ますだけだ。やってみなければ最初から始まらないから。
「それはそうと、さっきクライスとが来たんだが、なんでも明日、ミリエル姫が、とある貴族に保護されていたのをここに連れて来るらしいぞ」
言われたミリエルが、思わず掴んでいたシーツごと崩れ落ちた。
別小説も掲載しました、ナギというタイトルです。古代を舞台にした歴史ものですので、少々硬いかもしれません。