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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
47/210

食事の合間

マルガリータとミリエル、出るたんびに何か食ってる。

 かぽかぽと蹄が鳴る音がする。ミリエルの前方を行くのは二頭の褐色の馬。そしてミリエル本人は、灰色のロバにまたがっている。

 ロバなら安いからとマルガリータが買ってくれたのだ。いったいこの人の経済観念はどうなっているのだろうとミリエルは真剣に悩んだ。

 お金に関しては、マルガリータは裕福だ。何故なら王太子の寵姫だった姉に仲介してもらおうと、妹であるマルガリータに様々な高級品を献上したものが相当数いたらしい。

 マルガリータ本人は、みそっかすと蔑まれ、館に引きこもって剣や武術の腕を磨くしかすることがなかったので、その高級品は使われないままマルガリータの私室に死蔵されていたと言うわけだ。

 袋に無造作に詰め込まれていた宝石の数々を見てミリエルは絶句した。

 そしてマルガリータに、もう二度とこんなうかつなまねをしてくれるなと説教をする羽目になった。

 しかし、あのマルガリータをもってして、経済観念がないといわれる彼女の姉、マルグリットっていったい。

 ミリエルは背筋に冷たいものが走った。できれば一生その顔は見たくない。

 前方には、マルガリータと併走するクライスト。あっちこっちで傭兵働きをしているらしいが、そもそも傭兵と言う職業が成り立ちにくくなって久しい昨今。どういう素性の人間なのだろうと。ミリエルは観察してみる。

 傭兵と言う職業に偏見はない。ミリエル本人も、兼業とはいえ、自分は傭兵だと思っているし。先祖は傭兵王だし、そしてサフラン商工会も、傭兵部門は完全に削除したわけではなく。近隣諸国がきな臭い状況になれば、そこで一稼ぎをもくろむものもそここそいる。

 クライストの言っていたサン・シモンの狂犬というのは彼らのことだろう。

 とりとめもない思考がだんだん更にまとまりにくくなる。

 原因はロバの鞍に乗せたお尻だ。かぽかぽと蹄がなるたびに鈍痛が走る。

 これは歩いたほうがましだったか。

 ミリエルは街っ子で移動手段は徒歩か乗合馬車。ロバにも馬にもほとんど乗ったことがなかった。王宮にいるとき、貴婦人のたしなみと言われ、横乗りの練習もしたが、それも三十分も乗れば終了だった。

 もう二時間乗りっぱなしだ。

「休憩にしようか」

 マルガリータの言葉が、ミリエルにとっては天からの救いに思えた。

 マルガリータが軽々と馬から降りると、クライストもそれに続く。ミリエルもロバから降りようとして落ちた。

 地面に突っ伏ししばらく動けない。

「ミリエル、辛いのは今だけだ、尻は、案外神経が少ない部位だからじきに麻痺する」

「すいません、まったく救いになりません」

 ミリエルは泣きそうな顔で、よろよろと立ち上がった。

「それじゃ、食事の支度をさせていただきます」

 ミリエルは、そう言って宿屋の調理場であらかじめ作っておいた保存食を取り出す。

 小麦粉に卵と水、塩を混ぜて練り上げ、薄くのし、細く切った麺を油で揚げて水分を飛ばしたものだ。

 サン・シモンではおなじみの保存食だった、東大陸から伝わったらしいという話は聞いていたが、その真偽は確かめたことはない。

 そのまま食べてもいいし、熱々のスープに投入すればそれだけで、ふやけて腹にたまるので、満腹になる。

 マルガリータはミリエルの作業風景を興味深げに、見守っていた。ついでに宿屋のお上も舐めるようにミリエルの作業工程を凝視していた。後で再現して店に出すつもりらしい。

「何とか黒獅子に連絡を取って、うまく売れるかもしれない」

 思わずサフラン商工会幹部の孫娘としての思考にはまりそうになるのを抑える。

「実は楽しみだったんだ、油で上げている時実に美味しそうな匂いがしたから」

 嬉々として、ミリエルが袋から取り出したそれを口に運ぶ。

 ぱりぱりした歯ざわりが楽しい一品をマルガリータは賞味する。

 マルガリータの食べているものを見てクライストは嫌そうに顔をしかめた。

「それ、俺はいらない、サン・シモンの狂犬どもを思い出す」

 狂犬の言葉にミリエルは反射的に攻撃しそうになったが、腰の鈍痛で、つんのめるのみに終わる。 

「いったい何があったんだ」

 保存食の入った袋を大事そうに抱えたマルガリータが尋ねる?

 しかし、クライストは顔を背けるのみだった。



ここに出てくる保存食は、中国の伊麺というものです、たぶん。うろ覚え。

作り方はほぼインスタントラーメンと一緒。食べ方も一緒です。

揚げてないものは卵麺です。

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