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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
40/210

出会い

新キャラです。ミリエルと別の意味で規格外な方

 街道の端で少女が行き倒れそうになっていた。木に寄りかかり、疲労の色の濃い顔をうなだれさせていた。

 そんな少女に対してよからぬことを考えるものは、この荒れた国サヴォワでは数多い。

 薄汚れていてもそれなりに端正な顔立ちをしている少女ならなおさらだ。

 五人の男達が少女に近寄って言った。

 茶色い帽子から綺麗な薄い金髪がこぼれる。

 売り飛ばせそうだ。そう考えて舌なめずりをする男達に、気の抜けたような顔で、少女は立ちすくんでいた。

「そこのお嬢さん、その男達は連れか」

 騎馬の人物が、少女に声をかけた。

 男達はとたんに顔をしかめ、騎馬の人物をねめつける。

 長い黒髪を肩でくくったまだ若い二十歳そこそこ、そして体格はあまり恵まれていない。身長はまあ高い程度、肩幅も狭く細いと言うかひょろひょろしている。

 しかし腰には大振りの剣をはいている。

 そして黒尽くめの装束が騎士身分だと主張している

 その人物は、馬から降りると、男達を無視して、少女に駆け寄った。

 やつれた顔に、唇も乾いている。おそらくしばらく飲み食いができなかったのだろう。

「この少女の保護者ではあるまい、保護者が付いていればここまで酷い状態になる前に何とかしている」

 そう決め付けると、少女の手をとった。

「渡すか、俺達の獲物だぞ」

 かどわかしを企んだことを隠す気もない発言に、剣を抜いた。

「目の前で犯罪を見逃すわけにも行かないな」

 武器を持っていても、多勢に無勢で押し切れると踏んだのだろう。一斉に飛び掛ってくる。

 少女を背中にかばうと、騎士は剣をなぎ払う。三人同時に顔から血を吹いた。

「もっと深く切り込んでいれば命はない」

 淡々とそう言ってのけた。無傷だった背後の二人はそのまま後ずさる。

 剣ごときと舐めてかかっていたが、実際に流れる血を見て怖気づいたのだ。

「うせろ」

 脱兎と言う言葉にふさわしく男達は駆けさっていった。

へなへなと地面に蹲る少女を騎士は抱き起こした。

「大丈夫か、名前は?」

「ミリエル」

 掠れた声でそう答えると、ミリエルは何とか立ち上がろうとあがいた。

「無理をするな、お前なら軽いから、これから宿屋に連れて行ってやる」

 そう言って少女をまず馬に乗せてから、自分も馬にまたがった。

「荷物は、これだけか?」

 黒鞄を持たせてやると、ミリエルは安心したように微笑んだ。

「ミリエル、私はマルガリータ・ツェレと言う。宿に着いたら事情を話してくれ」

 振り向くとミリエルは非常に微妙な表情をしていた。

「有難うございます」

 礼を言うその顔も引きつっていたが、深く考えないことにして、マルガリータは馬を進めた。


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