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暁の星とともに  作者: karon
リンツァー編
37/210

再びの旅立ち

 大仰な馬車を連ねて、ミリエルのお支度が整った。

 ミリエルは、ふかふかの椅子の上で、青いドレス姿で姿勢を正して坐っていた。

 乗る前に見た馬車は、精緻な飾り彫りを施された、それだけで芸術品といってもいい豪華な外観をしていた。

 その馬車の中で、ミリエルは一人だけだ。

 レオナルドは、騎馬で移動すると言っているし。パーシヴァルは自分の部下達と相乗りで移動すると言っている。

 ミリエルつきの女官達も使用人用の馬車で移動するので、ミリエルは結果として豪華な馬車を独占している格好だ。

 しかし、コルセットで固められたドレスや、きっちりと結い上げられた髪は、一人だからと言って姿勢を崩すことを許してくれなかった。

 ミリエルの足元に、馬車の内装や、ミリエルのドレスと不釣合いな、黒い、革鞄が置かれていた。

 絶対に手元から放すなと、馬車に乗る直前にアマンダからくどいほどに念を押された。

 騎士や兵士達が、持とうとするのを拒否して、ミリエルが自分で馬車に運び込んだ。

 一人で、ただ坐っているのは苦痛でしかないが、ベアトリーチェがいないだけましだと自分に言い聞かせた。

 ミリエルの背後に連なる馬車には、ミリエルの侍女たち、そして、ドレスや宝飾品を積んだ馬車。そのことを思うとミリエルの頭痛はいやます。

 この非常時にドレスを満載してやってきて、常識がないのかって怒られたらどうしよう。

 ミリエルは真剣に悩んでいた。


 山道を行くレオナルドに、部下達が声をかける。

「ミリエル様とご一緒でなくともよろしいので」

 そう言われて、レオナルドは顔を曇らせる。

 母親が渡した荷物を抱きしめて、侍女や部下達にも触らせないように、かたくなな態度をとっていた少女を思い出すと、どこか胸がもやもやする。

 それが、あのか弱そうな少女を自分の都合で巻き込んだことによる罪悪感なのか、それとも少女がいつまでも自分に打ち解けない態度をとり続けることによる苛立ちなのか、自分で自分がはっきりしない。

 無論、ミリエルが心細い思いをしているだろうから自分が傍らに立って、その気持ちをほぐすべきだと、思っているのだが、どうしても行動に出せない。

 ミリエルのいる方向を振り返ってみる。しかし、重厚な馬車の中、ミリエルの姿はどうしても見えない。

 

 ミリエルは、いつの間にか転寝をしていたようだ。目をこすりそうになって慌てて思い直す。

 化粧が崩れるのみならず、化粧品が目に入って物凄く痛い思いをしたのだ。

 化粧は身体に悪いのじゃないかと思う。

 そうして身体を身じろがせたときその音がした。

 火薬のはじける音。

 そしてそれにあわせ、馬が暴れだす気配。

 そして、ミリエルは自分の乗っている馬車が、周囲とは別方向に連れて行かれるの感じた。

 ミリエルの前方は、壁だ、御者の姿は見えない。

 ミリエルは慌てて足元に置いた鞄を抱きしめる。いざという時役に立つから、アマンダの言葉、これがいざという時だ。

 ミリエルの中に確かな確信があった。



レオナルド、ミリエルはか弱そうであってか弱いではないよ

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